【書籍紹介】 『差別されてる自覚はあるか――横田弘と青い芝の会「行動綱領」』
野崎泰伸
ようやく、現代の社会運動が心ある研究者たちによって考察される対象となってきました。社会運動はいま、ここで抱える問題に対処しなければなりませんから、自分たちのことを振り返ったり記述したりましてや分析する時間などありません。その意味で、時間のある人、例えば研究者などが声や文章を拾い集めるのはしごく当然だと言ってよいと思います。
著者の荒井さんは、マイノリティ文学の研究者で、「詩人・横田弘」を解剖しようとしておられます。必然的に、青い芝の会や、横田さんが草案されたといわれる行動綱領に関する分析、というか荒井さんなりの解釈を行っていきます。荒井さんによれば、横塚晃一さんが全障連等とのつながりを広げるタイプなのに対し、横田さんはとにかく足元の人たちにこだわった、とくに脳性マヒ者に対し「自分たちは差別される存在なのだ」と、ひたすら絶望感を味わわせたのだといいます。そして、自分が障害者であり、差別される存在であることに絶望することにも絶望したときに放たれるエネルギーこそが、自己解放という「希望」なのだと横田さんは考えていたようです。
青い芝の会は「伝説の障害者運動」などと評されます。たしかに、「常識的」な目には、「過激」に映るかもしれません。しかし、障害者とくに全身に障害があり、言語障害もある脳性マヒ者にとっては、世間の「常識」こそが自分たちの生存をすら脅かすのです。そして、「常識」側に居直ることのできる「健全者」は、そのようなことを知らずに一生を終えていきがちです。そうした「常識」を問うものとして、この著書を読むことができるのです。
(荒井裕樹著 2017 『差別されてる自覚はあるか』、現代書館、2200円+税)
4月 5, 2017