介護保障

【報告/案内】 障害者の介護保障を考える会の取り組み

【報告/案内】 障害者の介護保障を考える会の取り組み

星屋和彦(障害者の介護保障を考える会・事務局)

 

■前回の例会報告

12月24日(土)に行われた「障害者の介護保障を考える会」第10回・例会の報告です。4名の弁護士の方々も交え、総勢19名での例会となりました。

 

●相談事案

相談ケース1

障害サービスをずっと使ってきたにも関わらず、65歳の介護保険適用年齢になったとたん、介護保険サービスの利用を義務付けられ、そのことにより介護時間が減ったりサービスを打ち切られたり、自己負担金が増えたりと65歳以前の生活状況から後退した状態になって困っている、ということが全国的に問題になっています。

今回、以前から障害サービスの重度訪問介護で600時間近くの介護を利用しているが、介護保険年齢になりどうするか決断が必要になった、という方のご家族から報告と相談がありました。

介護保険を利用すると、今まで築いてきた生活に変更を迫られることや利用者負担金が急激に増える問題も含めて、介護保険申請をせず重度訪問介護のままの生活を続けたいという要望書を居住市である西宮市に提出。西宮市はこの要望を受け、1年間重度訪問介護の支給決定を延ばすという決定をしてきた。西宮市においては初めてのケースと言われた。重度訪問介護のままでいくことに、市としては何か財政的なことも含めて、不都合はあるのか、という一般的な話を市に聞いてみると、市町村に下りる国庫負担基準が65歳を過ぎた障害者にはぐっと下がる、という現実があることがわかった。

例会の中でこのことについて意見交換も行われ、市町村から国に、こういった国庫負担基準の切り下げの改定を要望してもらわないといけないのでは?あるいは、国庫負担基準は、その市町村に住んでいる障害サービスを利用する障害者の人数で決まるので、親と暮らしているがちょっとだけ障害サービスを利用したいというニーズの掘り起こしを、例えば市町村と共にしていくことも財政問題(市町村の支給決定の出し渋り)のひとつの解決策では?という提案もでました。

 

相談ケース2

重度障害者で、神戸市で一人暮らし。24時間介助時間が必要で、医師の診断書も提出し、細かい介護内容も書いたのに588時間しか支給決定されない。区の担当者とは全然話が通じないので、市にも相談にいった。鬱病もあり精神科に行き診断書も書いてもらった。という前回も相談のあった方から、その後の経過報告がありました。

区との話し合いを続けて、11月から来年の4月まで、1日あたり20時間に増えた。医師の意見書がしっかり必要性を書いてくれていたのでそれも大きかったと思う。それに、介護の必要性を役所に理解してもらうために、役所の人間に、実際に家まで来てもらい長時間一緒に過ごし、生活を見てもらったりもした。

深夜帯も介護時間数が出たが、そこはまだ区も介護の必要性を完全には納得していないようで、介護ノートを付けて提出してほしいと言われた。

弁護士からは「ぜひ介護ノートをつけて、介護の必要性を証明した方がいい」とアドバイス。細かく書いた方がよく、実際に介護に至らなくても、介護者が何か声かけをしたり、様子見や見守りをしたことも書いていく。1年も2年も書き続けるわけではないので、提出までの1~2ヶ月きっちり細かく書くことが必要。ということでした。

 

相談ケース3

前回に引き続き、深夜時間帯に介護が必要なのに「1時間×3回」でしか支給決定されておらず困っているという神戸市在住の方からのご相談。

役所の判断で、通常の1年間の支給決定ではなく、3ヶ月ごとの支給決定をされている。4~6月の支給決定については、時間数の不満はもちろんあるが、この時間数に支給決定した理由を口頭ではなく文書でしっかり説明してほしいという審査請求をした。それについて県の審査結果がかえってきたが、「理由説明は口頭だけでなくわかりやすくする必要はある」とは書いてあったものの、420時間という支給決定そのものについては不当であるという判断はできない、という内容だった。

7~9月の支給決定分についてはすでに審査請求済みで、区から弁明書、それに対するこちらの反論書のやり取りが始まっている。10~12月の支給決定分についても審査請求するつもり。1~3月の支給決定はまだ来ていない。

弁護士は、理由のあるなしくらいでは支給決定を却下しない、という県の判断に関して、法律がわかっていない判断ではないかと疑問を呈した。支給決定の中身が間違っていないと県が判断するにしても、本人にとって不利益処分ならそれに対して決定の理由説明がないことがすでに行政手続法に関して違法なので、本来は支給決定の取り消しになるはず。今回の県の審査結果は、区の対応が行政手続法に違反なのかそうでないのかが書いていないのが問題ではないか。

県にも「行政手続法違反である」とはっきり言わせたほうがいいので、今後、どんな進め方でいくか。10~12月支給決定分の審査請求で、「理由をきっちり説明できていないことを認めるなら、本当は処分の取り消しをしないと行政手続法上おかしい」ということを県に問いかける形か。1~3月の支給決定に対しての審査請求において、生活状況のさらに詳しい資料などを提出して、時間数そのものを争点にする。

 

相談ケース4

以前に相談をされ、その後は例会には参加されていたが特に進展がなかったため報告なかった方から、改めての交渉と展開があったと報告ありました。主に深夜時間帯の見守り介護に関し、相談支援事業者に深夜の見守りも含めたサービス等利用計画を作成してもらい必要性を訴えてきたが、神戸市は深夜帯全ての必要性を認めず、深夜帯3時間抜きの支給決定のまま交渉は行き詰っていた。

今回、支援区分が5から6に変わったこと、支給決定されていない時間帯を自費とボランティアで自ら介助付けしてきたがついに貯金がなくなり生活保護申請を行ったこと、もともと難病もあるが具体的な外的要因もなく突然の脳内出血があったこと、など改めて深夜帯の必要性を訴えた。

区は、前回の非定型審査会で決定された支給時間の1.2倍の時間数までは、改めて非定型審査会にかけることなく区の判断で支給決定できることから、前回の交渉で提出した資料の「排尿タイミングの頻度が高い時間帯」に配慮し、深夜帯30分×2回を加えた支給決定をひとまずおこないたい(つまり深夜帯抜きが2時間に減る)。深夜帯連続介護の必要性については今後もじっくり話し合いを続けていきたい、という回答を区から得た。深夜帯の必要性については、深夜帯の介護内容をさらに詳しく聞き取り、医師の意見書の再提出なども行いながら、改めて話し合いの場をもつことになっている。

今回の例会の場では、「難病であることからくる介護の必要性などをもっと前面に打ち出していってもいいのではないか」「医師の意見書には、具体的に介護の必要性を書いてもらいたい。ただお医者さんもどんなふうに書いたらいいかわからないので、質問形式にしてそれに回答してもらう書式にするとか工夫が必要」「この相談ケースでは、ご本人と障害者地域生活支援センターの担当者が良い関係で、親身になってくれているのも大きい」などの話がでました。

 

相談ケース5

深夜帯の時間数交渉をしてきて、深夜4.5時間抜きの支給しか認められない、ということでおととしの秋から弁護団と一緒に神戸市・区と交渉されている方の経過報告。

一年間交渉を続け、いろいろ考えた結果、年内(例会が行われた昨年末)に県への審査請求を行うという判断に至った。弁護団交渉の際に作り提出していた意見書を作りなおして、審査請求の書類を作成し、また医師の意見書も添えて提出する予定。

 

●考える会としての活動計画

毎年おこなわれている、「介護保障を考える弁護士と障害者の会 全国ネット」(この例会に参加していただいている弁護士の方々も所属されている)のシンポジウムが、来年は関西で開催予定。そのシンポジウムを、この「障害者の介護保障を考える会」と共同開催にして、神戸でおこなってはどうかという提案を、例会に参加されている弁護士からいただきました。

会として、前向きに検討し、共同開催の方向で決定しました。

日時や場所は調整中ですが、2017年10月開催の予定です。内容は、例年通りでいくと、介護保障を求めて交渉を行っている当事者の基調講演、その後、弁護団方式でヘルパー時間数の交渉を行っている全国の方たちの事例報告・意見交換を行う予定です。

日時・場所・内容など、詳しく決まり次第、「障害者の介護保障を考える会」のブログ(http://kaigohosho.hatenablog.com/)や、障問連ニュースでお伝えしていきます。

 

●次回介護保障を考える会・例会のご案内

 

日時:2月26日(日) 13時半から16時半

場所:神戸市立心身障害福祉センター 大会議室

 

 

興味がある方、介護のことで困っておられる方はぜひご参加ください!

初参加の方、大歓迎です(事前に連絡いただけますと助かります)。

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