市・町の制度 教育 お知らせ

【報告/教育/集会案内】 インクルネットが西宮市教委に要望書を提出/各地の課題

栗山和久(障問連事務局)

昨年3月に「インクルーシブ教育をすすめるネットワークIN西宮」(インクルネット西宮)が設立され、セミナーの開催や毎月の例会での就学就園等の相談を重ね、少しずつ保護者に広がっています。別紙のように11月末に様々な課題をまとめ西宮市教委に要望書が提出されました。近々、話し合いが行われる予定、結果も含め報告を待ちたいと思います。

■広がりを見せながらも、直面する壁

昨年度、人工呼吸器を利用するMちゃんが地域の小学校に入学しましたが、それに励まされ来年度に宝塚市で医療的ケアを必要とする児童が地域の小学校に入学予定と聞きます。

西宮市でも今年度通常学級に入学したKちゃんに続き、地域の学校に行かせたいと、何人もの保護者が市教委と何度も話し合いながら頑張っているとインクルネットの例会でも報告されています。誰かが壁に穴を開ければ、続く人がいるのだと改めて感じます。

しかし一方で、壁が開かない事例もあります。1月24日NHK朝のニュース番組で「医療的ケア児 学校に行きたい 直面する壁」が特集報道されていました。気管切開し痰の吸引を必要とする横浜市の前田結大君(6歳)はランドセルを買ってもらい兄弟と一緒に通学することを楽しみにしながらも、「(痰の吸引が)いつ必要になるか分からない状況なので,常に吸引できる方が必要」と看護師配置を2年前から横浜市教委求めても、今なお回答は示されていません。

■全国的な通常学校での看護師の配置の状況 / 兵庫県の課題

同番組では、なぜ進まないのか解説され、全国67の全都道府県・政令市のうち・・・

・看護師の配置ゼロ・・・・・26自治体

・看護師の配置が1~10人・・32自治体

・看護師の配置が11人以上・・・9自治体

・・・中でも大阪府は108人と突出しています。番組では大阪府箕面市の実践が紹介されていました。障問連の昨年オールラウンド交渉で、神戸市教委が訪問看護ステーションを活用した通常学校での看護師配置の制度を開始、しかし「週1日」が原則、私たちはその撤廃を強く求めましたが、神戸市教委は予算確保が困難と同時に、「看護師確保の困難さ」も理由として回答しました。しかしNHK報道では、大阪市教育委員会担当課のコメントとして「夜勤や厳しい勤務のある病院と違い、学校での看護師業務は日中に限られ、子育て世代等の看護師さんも働きやすい環境」とされ、資格はあるが働きにくい潜在的な看護師も活用できるのではとのことでした。

NHKニュース報道では、兵庫県は看護師が11人以上とされ、全国的には進んでいると思われます。しかし兵庫県内のK市在住の医療的ケアが必要な児童の保護者から連絡があり、障問連として1月に訪問し相談、急きょ市教委にも一緒に要望に行きました。しかし市教委は「養護学校でも看護師は不足し、通常の学校まで配置する事は困難。予算要求したが理解が得られなかった」と回答。入学する4月まであと数カ月。壁はなかなか開かない現実に直面しています。引き続き、障問連として支援していきたいと思います。

 

西宮市長 今村岳司様                           2016年11月21日

西宮市教育委員会 様

要 望 書

インクルーシブ教育をすすめるネットワークin西宮

 

西宮市におかれましては、障害のある人が地域社会で共に暮らし続けるため、本人を中心とした地域生活支援施策が積極的に展開されています。日本政府による2014年国連障害者権利条約への批准、2016年4月施行の障害者差別解消法も踏まえ、障害のある人が当たり前に他の者との平等が実現されるよう、地域社会で共に生きる権利が保障されることが、より一層求められるところです。

しかし、官民が協働する西宮市の障害福祉施策は兵庫県内でも先進的とされていますが、一方、西宮市の障害のある児童の教育において、特に障害者基本法でも定められる「可能な限り障害のある児童もない児童も共に学ぶ」については、様々な課題があると、私たちは認識しています。就学したが希望する配慮が拒否され児童が不登校になった、保護者が付き添わなければ通学できない、配慮を求めても「できません」と言われ希望する学校に就学できなかった、このような事例が少なからずあるのではないでしょうか。

「インクルーシブ教育をすすめるネットワークin西宮」(以下略:インクルネット西宮)は2016年3月に、障害のある児童の保護者、福祉・教育に関わる支援者らにより、障害のある児童が障害のない児童と共に学び、暮らせるインクルーシブ社会の実現に寄与するため設立されました。毎月の例会を通じた障害のある児童の保護者、関係者から寄せられる就学就園等の相談、インクルーシブ教育の実践や理念に関する啓発のためのセミナー等の開催に取り組んでおります。

今回、インクルネット西宮が設立されたご挨拶と共に、私たちの基本的な要望をさせていただきます。ぜひ協議の場を持っていただき、下記の要望項目に沿って、現時点での西宮市の見解ならびに施策に関する状況について回答していただき、また来春小学校に就学予定でインクルネット西宮に寄せられる個別の相談について、別途の意見交換をお願いします。

また、今後どのように西宮市において共生社会に向けたインクルーシブ教育を推進していくのか、課題ごとに、今後とも継続的な協議の場を持っていただくよう要望いたします。

 

(1)  インクルネット西宮との定期的な協議・意見交換の場を設けて下さい。

保護者が希望する場合の個別の就学に関わる課題やインクルーシブ教育推進に必要な施策に関する課題等について、私たちと西宮市教育委員会特別支援教育課の皆さん

を中心とした定期的な協議・意見交換の場を設けて下さい。緊急を要する場合は随時、協議の場を設け、基本、学期に1回の開催を要望します。

 

(2)  インクルーシブ教育を基本とする就学のあり方について

すでに学校教育施行令が改正され、従来の就学指導でなく、本人保護者の希望を最大限に尊重し関係者が協議調整して就学先を決定する仕組みに制度として変更されています。前述の障害者基本法や国連障害者権利条約の理念に則った方向性が求められています。それを踏まえ、以下、要望いたします。

①  【インクルーシブ教育の理念】

西宮市教育委員会として、就学の在り方について、見直すべき点は見直し、それぞれの児童の障害の状況や課題について、保護者や就学前の関係機関等とも十分協議しつつ、可能な限り障害のない児童と同じ場で共に学ぶ方向性を市内学校関係者にも周知し、積極的にインクルーシブ教育を推進して下さい。

②  【就学相談における判定】

これまでの「適正就学指導委員会」が「就学支援委員会」に名称が変更されたとお聞きします。名称だけでなく、その運用がどのように変更されたのでしょうか。また、就学相談でのいわゆる「判定」の根拠について疑問の声が寄せられています。また、その判定結果が就学後にも児童や保護者に不利益な影響を与えている事例も聞きします。就学支援委員会の構成員を教えていただくとともに、以上の点について、ご説明をお願いします。

 

(3)就学前のインクルーシブな場の確保

就学までの期間もインクルーシブなあり方が求められます。児童福祉法の改正も踏まえ、国の方向性としても、子ども子育て支援制度と障害児支援の関係として「子ども子育て支援(児童施策)が中心」とされ、そこには障害児である前に、すべての児童は「子ども・児童である」という考えを基本に、「子ども」としての支援を受けた上で、障害固有の支援が必要な場合は障害児施策で上乗せ(後方支援)していくことが既に示されています。それを踏まえ、以下、ご質問ならびに要望させていただきます。

①  西宮市において、上記の国が示す方向性を、どのように推進されるのか回答していただくと共に、就学前の幼稚園、保育所等においても障害のある児童が障害のない児童と共に過ごすインクルーシブな施策を要望します。

②  公立幼稚園への就園に関して、障害のない児童は入園を申し入れ抽選になりますが、障害のある児童については、公立幼稚園への入園の適否が判定されます。否と判定された場合には専門機関が勧められます。しかし教育機関である幼稚園と福祉的支援の場である専門機関とは本質的に役割が異なります。否と判定された場合でも、保護者が公立幼稚園を希望する場合には、どのような支援や配慮が必要なのかを積極的に検討し、抽選する機会が与えられ入園できる道が閉ざされないよう要望します。

 

(4)学校、幼稚園での障害のある児童に必要な支援・配慮について

障害のある児童が必要な配慮や支援を受けられなければ学校生活は送れません。また、障害者差別解消法が施行され、学校現場での合理的配慮の提供は義務付けられています。それを踏まえ、以下、質問ならびに要望させていただきます。

①  【合理的配慮について】西宮市の障害児童の就学、就園にあたって、合理的配慮の提供にあたって、総論的な西宮市教育委員会としての考え方(例えば「過重な負担」についての考え方)、またどのような課題があるのかについて、ご説明ください。

②  「学校協力員」制度の内容について、改めて要綱など資料を提供していただき、ご説明をお願いします。

③  「学校協力員」制度は、聞くところによると「1日4時間まで」と聞いていますが、個々の児童の状況により、必要となる支援量は当然異なります。一律に制限することなく、それぞれの児童に応じた支援が受けられるようにして下さい。

④  「学校協力員」は本来、西宮市教育委員会の責任において実施されるものであり、確保も含め、その責任を保護者に委ねることは本来おかしいと考えます。西宮市教育委員会の責任において積極的に協力員を募集し、協力員登録制度を導入する等、必要とする学校に円滑に効率的に配置できるようにして下さい。

 

(5)学校、幼稚園での医療的ケアについて

今年の4月、甲東小学校に医療的ケアが必要な児童が入学し、西宮市教育委員会、学校も様々な配慮を実施され、元気に学校生活を送っていると聞きます。しかし一方、西宮養護学校では入学後、通学日数の制限、保護者の付き添いが継続する等、合理的配慮とは真反対とも思われる状況があると聞きます。国からも医療的ケアが必要な児童を受け入れるため福祉、教育において看護師の確保等の施策を講じるよう各自治体にも方向性が示されています。それを踏まえ、以下要望いたします。

①  今後、医療的ケアを必要とする児童が就学した学校や幼稚園で、看護師による支援等、医療的ケアが受けられる体制整備を障害者差別解消法における基礎的環境整備として位置づけられ、積極的な施策を行って下さい。

②  現在、甲東小学校での看護師による支援についても、勤務条件等により不十分な状態にあると聞きます。来年度に向け、どのように改善していくのか、協議をお願いします。

③  私立幼稚園にも多くの障害のある児童が学んでいます。来春、私立幼稚園に医療的ケアが必要な児童が入園予定です。しかし当該の幼稚園として看護師の確保については困難だと言われ、結果として保護者の付き添いが必要になります。国や兵庫県からの加配員の補助は低額であり、西宮市として何らかの支援策を要望します。

 

(6)来春、小学校に入学の障害のある児童の就学に関する意見交換

インクルネット西宮に、来春小学校に就学予定の複数人の保護者から相談があり、当該の学校や教育委員会との相談に中で、保護者が大変不安な気持ちを持たれ、教育委員会との相談に、インクルネット西宮として立ち会って欲しいとの声も寄せられています。何よりそれぞれの児童が元気に学校生活を送れるよう、就学先決定ならびにどのような支援や配慮が必要であり、どのように確保していくのか、個別の就学に関わる相談についての協議をお願いします。協議の方法は別途相談したいと思います。

 

以上

 

インクルネット西宮 集会案内

学校での合理的配慮を考える 「学校協力員のあるべきかたち 支援の工夫」

・日時    2017年2月26日(日) 14:00~16:30

・場所    西宮市総合福祉センター別館 多目的ルーム

・助言者    守本明範さん

芦屋市特別支援教育センター合理的配慮コーディネーター

長年芦屋市で小学校教員、退職後同職

・資料代    300円  申し込み必要

・主催    インクルーシブ教育をすすめるネットワークin西宮(インクルネット西宮)

・問い合わせ       TEL: 090-6980-5426  栗山

E-mail: shichikuri1961@ezweb.ne.jp

・申込方法

【メール】 メール本文に、名前(ふりがな)、所属、電話番号、学校協力員・特別支援教育

支援員・保護者・教員・その他の区別を明記し、以下アドレスまで

inclunet.nishinomiya@gmail.com

【電話】 090-6980-5426 栗山まで

 

☆ 私たち「インクルネット西宮」は2016年3月に発足したばかりの会ですが、インクルーシブな社会の実現を目指し、就学・学校生活等に関する相談や、毎月の例会、セミナーの開催などに取り組んでいます。

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