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【報告】 阪神間の自治体で移動支援の見直し ~ 様々な動向

障問連事務局

■尼崎市、宝塚市で移動支援ガイドラインの見直

さかのぼれば、障害者権利条約の批准に向けた制度改革の中で、自立支援法に代わる新法(現在の総合支援法)制定に向けた検討の中でも、障害者の社会参加にとって極めて重要な移動支援のあり方について、地域生活支援事業でなく国制度としての個別給付化や通勤通学での利用など提言されていました。しかし、総合支援法制定時には間に合わず、3年後見直しの今年度も移動支援については国会附帯決議で「引き続き検討する」と見送られました。さらにさかのぼれば、元々移動支援は、2003年支援費制度では「外出介護」として国制度として実施されていたにもかかわらず、利用が急増し支出抑制のため、2006年自立支援法施行時に、国制度から市町が実施主体となる地域生活支援事業に移し替えられたのです。国が財政負担を市町に転嫁した事が、まず背景にあります。

その上で、阪神間の尼崎市、宝塚市で今回、移動支援ガイドラインの見直しが行われましたので、その内容を報告するとともに、今後の課題を考えていきたいと思います。

○「ドアーTOドアー原則」の撤廃

従来、移動支援は発着点を自宅に限定していました。目的地から次の目的地に行く場合、障害のない人はわざわざ一旦自宅に戻りません。しかし移動支援では「自宅始まり」でなければならないとされ、非常に不便を強いられてきました。障問連の県オールラウンド交渉でも、障害のない人に比べ不利益を被るのはおかしい、障害のない人と同様にスムーズに移動が図られるべきと緩和すべきと確認していましたが、今回、尼崎市、宝塚市でも、そのように改訂されました。

○事業者への指導 ~目的地の記入~

移動支援の実績記録表への目的地等を必ず記入するように指導が行われました。特に尼崎市では行政が「具体的にどこに行ったのか?」「何をしたのか?」等を細かくチェックし、「そのサービスは不要ではないか」と事業所に強く指導され、昨年7月尼崎市内関係障害者団体と行政との話し合いでも大きな課題になり、プライバシーの侵害ではないかと異議が上げられました。

宝塚市では、この4月から実績記録表がリニューアルされ、その中に目的地(経由地)の記入が必要になります。4月以降どのように宝塚市が運用するか分かりませんが、現時点では尼崎市のような強い指導はありませんが注視する必要があります。目的地記入については、阪神間でも、伊丹市では支援費制度の時代から記入が求められていますが、西宮市・芦屋市では記入は求められていません。

○支給時間について

両市とも標準支給量が示されました。(以下は18歳以上)

・尼崎市・・・50時間

・宝塚市・・・60時間

尼崎市では窓口対応で50時間が上限であるかのような対応もあり、それは撤回され個別に相談に乗ると対応されたと加盟団体から報告がありました。宝塚市は「標準支給量と乖離がある場合には非定型審査会の意見を聞いた上で支給決定する」とされ、主に介護に当たる家族等が入院等の急変がある場合、2カ月を越えない範囲で特例が設けられ、利用前に相談支援事業者が障害福祉課に連絡が必要とされています。

○宝塚市で新たに「グループ型支援」

阪神間では伊丹市ではすでに実施されていましたが、宝塚市でも1対1の個別支援以外のグループ型支援が4月から始まります。1人のヘルパーが4人までの障害者を支援する。報酬は「1:2」で70% 「1:3」で60%とされています。

○報酬単価について

・宝塚市では、今回、報酬の見直しは見送られました。しかし事業所説明会では「今回は報酬単価の見直しは見送るが、尼崎市も下げた事もあり宝塚市も財政状況を見れば下げるべき状況にある。しかし、まずガイドラインの見直しにより給付の適正化を図った上で、今後、報酬単価を見直していく事になる」と説明されました。

・尼崎市は、他市との比較等の様々なデータが配布され、尼崎市がいから他市より支出が多いのかが説明されました。詳細は省きますが、従来の「身体介護あり」の報酬が減額、「身体介護なし」の報酬を微増というものです。「身体介護あり」の利用者が多い事業所にとっては、かなりの減収を余儀なくされる事態になります。

○その他

西宮市では自立支援協議会のくらし部会で移動支援に関する実態調査や何が課題なのかが検討され、2月には協議会として「移動支援を使いやすく」とオープン部会が開催されます。ガイドラインの見直しには至っていませんが、今後、尼崎市や宝塚市のガイドライン見直しの動向が影響が出て来ないとは言えません。県下各地の動向を注視し、障問連としても本人の暮らしや権利が守られ、制度としても後退させないよう取り組んで行きたいと思います。

 

■介護福祉士 志願者が半減

1月28日に介護福祉士の国家試験が実施されましたが、受験申込者が前年度の約半分まで減少したと報じられています。「昨年度=約16万人」→「今年度=7万9千人」。

理由としては、今回の試験から「介護実務者研修」を受講しないと国家試験が受けれなくなったことが大きな要因。同研修はヘルパー2級所持者で320時間、無資格者は450時間の受講が必要となり、働きながらの受講は難しく、受講料も負担しなければいけません。

介護報酬を増額するには、より専門性を上げる必要があると資格取得のハードルを上げながら、一方では超高齢化社会を見据えてより多くの人材確保が必要という事態に、とても長期的な視野に立った施策とは思えません。

 

■発達障害支援で 総務省が勧告

『福祉新聞』によると、1月20日、総務省は発達障害者支援に関する行政評価・監視結果に基づき、厚労省と文科省に対し、発達障害の早期発見や支援に有効な措置を講じるよう勧告した、と報じられています。「幼児期の広汎性発達障害の有病率は1.6%と推計されているのに、ある市町では1歳6カ月健診で0.2%」と早期に発見されていない事、そして就学前~学校の期間に支援や指導計画が作成されていない、引き継がれていない事との結果により改めるよう勧告されています。平成30年には文科省が「個別カルテ」導入を予定する等、国の管理システムが強化され、現場で、より一層分離が進む事に強い懸念を感じます。

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