介護保障

【報告】 5/5 障害者の介護保障を考える会1周年記念 学習会

障害者の介護保障を考える会昨年2月シンポジウムを機に設立された「考える会」。1年を経過した記念イベントとして、会の活動報告や役員体制の承認なども含め、学習会が開催されました。約50人が参加して活発に議論されました。講師として障大連(障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議)の細井清和さん。テーマは「総合支援法の見直し内容」でした。

 

■私たちの基本~実践作りと説得力ある行政要求

細井さんの講演内容は、今回の総合支援法3年後の見直しに関する内容でしたが、私たちが押さえておくべき前提として、障害者運動として、障害者が必要とする支援、例えば自立生活や入院時支援など、制度が無くても粘り強く取り組み、仲間を作り、その実践を要求として行政に上げ認めさせてきた歴史があり、その私たちの基本は今も変わらないこと、行政に対して要求する際には、なぜ必要なのか、実践や実態を伴った説得力が必要、4月から始まった差別解消法も同じ発想で、ある事例でうまく解決できなかったとしても、その事例を集積していき、法律に委ねるのでなく、当事者が自己主張し、それができるように支援者が支援していくこと、国による今後ますます進められる社会保障全般の抑制、自治体も財政難を理由としてサービスの抑制が強まって行く現在、私たち運動を進める側にも要求する根拠がますます求められていく事を指摘されました。

大阪府下にも様々な市町があり、障大連では300~400人が集まって協議している。例えば介護支給量についても、①市にお金が無い ②みんなこの基準でやっているから・・・等を理由にして窓口で必要とする支給量が認められない市町もあるが、「非定型審査会」が何回開催されているのか? 窓口で却下するのでなく、きちんと審査会を開催すること、様々な事例を示し、ガイドラインの改定の必要があること、そのためには当事者も参画したワーキングチームを作らせること・・・いかに行政を説得して進めていけるのかが重要、そのためには様々な市町の情報もみんなで共有して進めていく必要があると指摘されました。

 

■総合支援法の見直し~焦点となる2018年

また総合支援法改正案が今国会で成立しましたが、その多くが具体的に実施されるのは2018年度。この年は「障害者計画の見直し」、そして3年ごとの報酬見直しの時期になり、運動を進める側、また各支援事業者としては、2018年問題が重要だと指摘されました。報酬見直しについては、すでに財政制度等審議会でも障害福祉サービスへの切り込みの方針が出されており、また「介護保険制度」の再編の議論が2017年度から始められ、「要支援」の高齢者は介護保険本体から切り離し自治体に丸投げされ、また利用者全員に2割負担、家事援助は全額自費へと、主に軽度者をターゲットに切り捨てられていこうとしており、今回の総合支援法見直しの中でも、障害支援区分1~2の軽度者の家事援助利用に対して抑制しようと、本当に必要なのか、必要なら計画相談できちんと明記しなさい等、介護保険制度の動きと連動している事態がすでに始まっていると説明されました。また「移動支援」など、自治体が主体的に行う「地域生活支援事業」は±ゼロになったが、移動支援は年々自然に増加していき、国からの補助金が増えなければ、自治体が身を切らなければ実施できなくなり、「自治体で何とかしなさい」、これが今後の福祉の在り方になり、この点も介護保険の財政構造の再編と軌を一にしていると話されました。

このような全体状況の話しの他、今回の見直し内容の説明と課題を丁寧に講演していただきました。

次回例会は6月11日(土)、13:30~、神戸市東部在宅センター(JR灘駅すぐ)で行います。

 

◎以下、京都府内で弁護団と自治体とが交渉の末、24時間介護保障を勝ち取った難病の方の報道がありましたので、転載します。兵庫県でも、こうした例に続くべく、「考える会」の活動を行っていければと思います。

 

■悲願の「公的」24時間介護で自立生活 京都の難病男性

朝日新聞 2016年5月20日10時06分

http://www.asahi.com/articles/ASJ5N369TJ5NUBQU008.html

 

体に重い障害を抱えながら一人暮らしを続ける京都府内の男性(37)が3月、地元自治体との交渉の末、1週間を通して24時間の介護サービスを受けられることになった。障害者や難病患者が自立した生活を送るには、十分かつ長時間にわたる介護サービスが不可欠だ。京都でも弁護士らが行政との交渉を支援する取り組みが始まり、20日には下京区で活動報告会がある。

重い障害がある人は障害者総合支援法に基づき、公費による介護サービスが受けられる。そのひとつ、「重度訪問介護」は長時間介護が必要な人のもとにヘルパーを派遣し、生活を支援する。派遣する時間数は自治体の裁量に委ねられている。

男性は5歳で脳の難病「ダンディー・ウォーカー症候群」と診断された。重い身体障害で自力歩行ができず、はって移動する。骨格異常や視覚障害があり、食事やはいせつ、入浴、衣服の着脱など日常生活のほぼ全般で介助が必要だ。知的障害もある。

男性は2年前の夏に実家からアパートに移った。5歳離れた弟も重度の身体障害があり、2人同時に介護する両親の負担を軽くするため、一人暮らしを決めた。当初、男性が自治体に認められた介護サービスは月297時間。週末は実家に戻って両親に介護してもらう。平日はアパートの自室で17時間の「重度訪問介護」を受け、デイサービスも含めると24時間の介護が受けられていた。

ところが半年ほどたって、自治体が「夜間は生命にかかわるような危険性がない」と夜間の介護を減らす方針を示した。

男性は「介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット京都弁護団」に相談し、弁護団が自治体と交渉を開始した。弁護団は介護記録に基づき、夜間の頻尿や不安になると嘔吐(おうと)など体調不良が生じる実情と、「医療的に24時間介護が必要」という医師の意見書を示した。両親の介護疲れも考慮して介護サービスを増やすよう訴えたところ、週末の24時間介護も受け入れられ、月583時間の介護が認められた。

男性の母親(60)は「子どもと死ぬまで一緒にいたい。でも私や夫が今後動けなくなったらどうしようと不安が募っていた。元気なうちに自立して暮らす道筋をつけたかった」と話す。

京都弁護団によると、全国では介護サービスの支給時間を不服として裁判で争われるケースも多いという。浅井亮弁護士は「支給時間の決定は自治体に任され、十分な公的サービスを受けられない人も多い。その場合は弁護士にぜひ相談してほしい」と呼びかけている。

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