女性障害者/障害女性

【報告】 障害女性たちがジュネーブに飛んだ 草の根の声よ 国連に響け

野橋順子(障問連事務局次長)

5月7日(土)、関西女性障害者ネットワーク主催で、DPI女性障害者ネットワーク(以下、女性ネットと略す)メンバーによるジュネーブ活動報告が行われた。

■女性差別撤廃条約(以下、条約と略す)と女性差別撤廃委員会(以下、委員会と略す)

CEDAW(セドウ)とは条約及び委員会の頭文字をとった略称である。委員会は1979年に作られた条約に基づく国連の機関であり、女性の人権に関わる問題について審議している。委員は批准国の中のさまざまな国や立場の人で構成されており、現在委員長は日本人の林陽子氏が務めている。条約を批准した国は委員会に対して報告を行い、4年ごとに建設的対話と呼ばれる審査が行われる。

日本は1985年にこの条約を批准していて、今回が第7回、第8回目の審査となる。

 

■委員会 傍聴&ロビーイング活動報告/今後に向けての取り組み 活動アピール

報告者=藤原久美子氏、加納恵子氏

 

日本は1987年に報告書を提出して審査を受けた。前回2009年の審査による勧告では、例えば選択的夫婦別性や婚外子問題について早急に対応すべきフォローアップ項目として挙がっており、早く差別を是正させるために動くようにと言われた。

審査の流れとしては、まず事前作業部会というのが行われ、本審査で委員会から政府に、どういう質問をするかを考える。この質問項目に入るかどうかが、とても重要になる。その後政府回答をもらう。政府はいいことを報告するが、内実は大変だということをNGOがレポートにする。次の審査で施策が進んだかどうか報告しないといけないが、特にフォローアップ項目にあげられたものは2年後にそのことについて回答しなさい、ということになる。NGOは政府の回答に目をむけ、回答を見ている。

そのような活動を経て、戦後の民法がやっと変えられた。たとえば、婚外子に関する民法の規定改正などがそれにあたる。

2015年7月にジュネーブに、事前作業部会にロビーイングしに行った。今までは障害女性よりもマイノリティー女性だったが、今回は障害女性に焦点が当てられよかった。

2016年2月に再びジュネーブに行った。すべてのバスが低床バスであり、自分でスロープも出すことができ、バリアフリーだった。日本政府報告審査はパレデナシオンで行なわれた。今回はJNNCで国連パスを取得し、国連に入れた。JNNCとは、条約を日本政府に反映させることを目的に活動している約40団体からなるネットワークである。

 

国連でのスケジュール

2月15日、16日に、日本政府報告審査の話しを聞いたり、さまざまな活動をしたりした。国連との間を取り持ってくれるNGOがあり、委員に関するいろいろな情報をもらった。この委員は障害者のことをよく知っている、などである。委員はほとんどボランティアでやっている。

その後、4つのテーマに分かれ動いた

1. 障害女性の参画

2. 雇用とか教育の統計

雇用の分野は男女の差が大きいと思う。そのことを訴えてきた。雇用は健常男性を100としたら、障害女性は22が現状であり、大幅な改善が必要である。

3. 性暴力

35パーセントの障害女性は、性被害を受けている。逃げたくても逃れられない状態がある。電話相談が主流のため、聴覚障害者が電話できない問題、またシェルターも車椅子で生活しにくい状態にある。

4. 障害女性がアクセスできる医療機関を

例えば、障害女性が妊娠した場合おめでとうと言ってもらえないため、安心して医療機関に通えない状態がある。また、簡単に子宮取りましょうかと言われる。医療機関が障害女性を差別している現状がある。

 

過去に強制的に子どもを産めないようにすることがあり、そのことを女性差別撤廃委員会にも言った。ただ、ジカ熱のこともあり、重度な障害者は産まないようにしなさいという声が委員会からあった。世界にはいろいろな委員がおり、女性が中絶をする権利とぶつかることがある。重度な障害者をヘルプするのは、ずっと女性だから、障害児が生まれてきたら、女性が大変になると言われたのである。国によってはレイプされても中絶したらダメだという国もあり、色々な国があるから、なかなか噛み合わないことが多かった。

デザイナー・ベイビー(夫婦やカップルが「望んだ」子どもを、人工的な操作によって授精させるなどして作る技術から生まれる子ども)のこともあるし、食い止める必要があると思う。

また今回、委員に知的障害者にきちんと性教育を行っているかどうか質問したかったが、質問項目に入ってなかったから言えなかった。一人25秒で、それぞれの思いを発言もした。DPI女性ネットには、聴覚障害や言語障害の人もいたが、当事者の声を届けるのが大事だと思った。

今回は3月4日までが審査期間だった。審査を終え、出された勧告にはマイノリティー女性、障害女性のことも含まれていた。強制不妊手術を行った機関は謝罪しなさいというように、犯罪性を認めるぐらいに強い勧告が出てよかった。

 

障害女性の問題は、障害者差別と女性差別とが複合的に絡み合ってなされる差別であるが、こうした考えかたにはいろいろな形がある。例えば在日で障害があるとか、いろいろな場面において当てはまると思う。

 

ジュネーブに行くにあたり、すべてカンパで行けた。クラウドファンディングを使わせてもらった。この媒体を使いいろいろな人に呼びかけて、一般の人にも活動を知ってもらうことができてよかった。また、新聞にも載り、活動を広めることができた。

行くまでも大変だった。飛行機が電動車椅子では乗れないということもあったり、ホテルもバリアフリーの部屋がダブルベッドだったりして使えなかったりもした。また、当地では家族介護が当たり前になっており、そのあたりも考えていく必要があるように思う。

 

■優生手術という人権侵害

報告者=利光恵子氏

 

委員会が、強制不妊手術を行った機関に謝罪を求めるよう、勧告を出した。被害者から訴えがあれば、厚生労働省が聞くこととなった。優生手術は合法であるとずっと厚生労働省は言ってきたが、この度被害者と弁護士と支援者を中心に厚生労働省に行き、話しを聞いてくれた。

しかし、彼女が強制不妊手術をされたという書類がなかった。

県は、書類はないと言っていたから、国に調べてくださいと言っている。いまもそうかもしれないが、障害があれば、本人の意思がなくても強制不妊手術ができるとなっていた。

施設の障害者もケアが大変だということで、強制不妊手術を受けさせられている人がいる。これは、現在の出生前診断とつながっていると思う。だから勧告はすごくよかったと思う。

強制不妊手術の被害者は1万6500人くらいいるが、いま解決しないといけないと思う。みんなにも関心を持って欲しい。

 

質疑応答

Q. 日本以外の問題に関しては?

A. ほかの国への勧告まで見れていないのでわからないが、ほかの国でも同じような実情はあるのではないか?ただ日本みたいに障害当事者が来ている国が少なかった。私が昨年中央アジアに行ったとき、帝王切開した時に子宮を取られたと言っていた女性もいた。

Q. 帝王切開した時に子宮を取られた事例はどこの話しですか?

A. ウズベキスタンの話し。

障害がある女性の友達の話し。出産は無事出来たが、その時に本人に知らされないまま子宮を勝手に取られていたらしい。

Q. 障害者権利条約ができて、言いたいことは?

A. DPI女性ネットからは色々意見は出した。

日本政府報告で、パブコメで変更点が補強された。例えば、障害があり女性であることの配慮という言葉が追加された。

中長期的な支援が必要な人は、婦人保護施設に入っている人の4割は、障害や疾患のある女性が使っていると政府は言っているが、健常女性がシングルマザーになったり、精神疾患になったりという結果だけで、障害女性にとってけっして入り口が広いわけではない。

性別や年齢で書かれ、障害のことを聞かれないことが多いという問題もある。また、すべての領域においてジェンダーの視点が大事だと思う。障害者が自立してのしんどさとかも言っていった方がよい。障害者権利条約についても、そのようなことを言っていきたい。

男性も一緒に言っていけたらいいと思う。一番しんどい思いをしている人に焦点を当てていきたい。女性は守らないといけないと思っている人もいると思うので、一緒に考えて欲しい。

さらに、医学モデルではなく、社会モデルを推進していこうということをどんどん言って欲しいとジュネーブでも言われた。その意味においても、権利条約の視点は大事である。

Q. 女性障害者の運動に感銘と敬意を感じる。女性障害者の運動に男性の障害者が関心をもたないのは、自分ごとだと感じないからだと思う。女性障害者はジェンダーの事をきちんと考えているのに男性障害者が考えないのが問題だと思う。

A. 特に女性障害者の問題は、子宮摘出とか言いにくいものがあると思う。でも声をあげて行くことが大事ではないか。男性もまた社会から抑圧されていることが多いと思う。みんなで声をあげていこう!

 

(本報告は集会報告者の藤原さんにも加筆修正していただきました)

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