市・町の制度

【報告】 神戸市障がい者保健福祉計画2020へのパブリックコメントについて

野崎泰伸(障問連事務局)

 

先日、「神戸市障がい者保健福祉計画2020」について、神戸市からパブリックコメントの募集がありました(募集は終了しました)。障問連としても、神戸市を中心とする加盟団体のみなさんに送っていただきたく、以下のようなパブコメを書くためのポイントを列挙しました。少しでも、みなさんがお送りになったパブコメが反映されればと思います。

なお、神戸市によると、パブコメ総数は29通、質問・要望件数は150件だったようです。

 

パブリックコメントを書く際のポイント

Ⅰ 計画の策定

1.計画の策定にあたって

障害の定義に関しては、障害者基本法より、障害者権利条約を基本とすべき。社会モデルの視点が希薄である。

★障害の医学モデルと社会モデルとの有意な違いは、障害による生きづらさの原因を個人に求めるか社会に求めるかの違いにあるのではない、と考えます。それらの違いは、障害によって生じてしまう生きづらさを解消する責任が、個人にあるか社会にあるかの違いにあると考えられます。

2.基本目標

活躍というが、活躍しなくてもよいのではないか。活躍する自由、しない自由が個人に実質的に保障される社会が望ましいのではないか。そもそも、誰がどうやってどのような判断基準で活躍を決めるのか。「能力や適性に応じて活躍」しなければならないのか。

基本目標に「障害者が、障害があることにより差別されない」という視点が希薄である。

「障害」のひらがな表記に関しては、ポリティカル・コレクトの問題としてひらがなで表記するよりも、この社会こそが障害者に「害」を与えるという社会モデルの視点から、漢字表記のままでよいのではないか。

 

Ⅱ 実現に向けた施策

1.在宅サービス

「家族による介助を前提にしないで」という文言を明記すべきかと思います。

65歳を過ぎても、介護保険に移行するかどうかは当事者の意向によって決定されるべきかと考えます。

 

2.保健・医療

「障がいの原因となる疾病の予防や障害の早期発見」という文言は削除すべきかと考えます。それは、障害や障害者への嫌悪感を再生産し、差別を助長しかねないと考えられるからです。

3.安全な居住環境

「福祉避難所」が障害者の隔離につながらないよう、たとえば同じ教室、同じ場所において障害者が避難できるような設備の充実を図るというような文言を付け加えるべきかと考えます。

日常時に差別のない社会こそが、有事の際にも誰もが排除されないという文言を付け加えるべきかと思います。

 

4.相談

相談窓口の敷居が高く、また親身になって相談に乗ってくれるかという不安を当事者は持っています。

ひきこもりの人が相談に訪れるのは難しいと考えますので、電子メールでの対応を併設することを求めたい。また、「ひきこもり状態にある人の社会復帰」という文言に、「ひきこもりは悪であり、社会と接点を持たなければならない」という思想が読み取れます。この文言の削除を求めるとともに、こうした考えこそひきこもり当事者をさらに追い込むことを明記していただきたい。

6.権利擁護・差別解消

障害者差別解消のための啓発活動に、従来の障害疑似体験ではなく、社会モデルを基本思想とした障害平等研修を取り入れていただきたい。

7.地域福祉力の向上・人材育成

人材育成の責任として、資金の拠出源も含め、市・県・国の役割を明確にしていただきたい。ならびに、地域における人材育成に関しては、当事者団体や当事者と連携して行ってほしい。

9.一般就労支援

ダブルカウントをしないでほしい。

普通学校、普通学級に在籍する障害児の就労支援をしてほしい。

11.子どもに関する施策

障害の早期発見はスクリーニングすなわち選別の思想です。障害があっても、ひきこもっていても、その存在が歓迎されるような社会のあり方を目指すべきです。

発達の概念も、研究が進み、個的な発達から、関係性のなかでの発達に変化してきています。そうした成果を踏まえ、障害児が健常な子どもの中でともに育ちあいながら成長する過程の重要性を書き加えるべきだと思います。

インクルーシブ教育の理念は、原則として普通学校の普通学級で障害児も健常児も学び合うことであり、「多様な学びの場を提供してともに学ぶ環境を整え、域内の教育資源を効果的に活用することにより、一人ひとりの教育的ニーズに応じた特別支援教育を充実」することではありません。これは「多様性」の意味を履き違えています。理念上の話しとして、「学びの場(教育機会)」を「多様」にすることなのではなく、同じ場所で「児童生徒(という存在)」がまさに「多様」な存在として育ち合うことこそが、インクルーシブ教育のいう「多様性」です。

特別支援学校を新たに建てるより、支援学校に入学予定の障害児が普通学校において学べるように対策を講じてください。

たまにしか接することのない交流や共同学習は、障害児に挫折感を味わわせ、健常児には偏見を植え付けるだけであり、しないほうがマシであると考えます。それをよいことだと考えるなら、毎日してください、つまり障害児も普通学校の普通学級で学べるようにしてください。

13.啓発

啓発事業には、事業計画段階から当事者の参画を求めます。

アイマスクを筆頭とする、健常者の機能を制限させて障害者の疑似体験をさせる啓発では、障害が医学的、個人的な欠損に還元されて理解されてしまいがちです。社会モデル的な観点に立った、障害平等研修への移行をお願いします。

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