所得保障/年金

【報告】 知的障害者、精神障害者の障害年金不支給問題について

障問連事務局

 

一昨年度から大きな課題として指摘された、主に知的障害者・精神障害者の障害年金が申請しても不支給になる割合が、全国的に大きな地域格差があり、兵庫県は不支給割合が多い自治体である事は、今ニュースでも紹介しました。生活する上で極めて必要な障害年金が、そのような実態にある事は大問題であると、精神保健福祉士や精神科医らの専門家による団体や家族会、当事者団体等からも強く指摘され、厚労省も2015年2月に「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域格差に関する専門家検討会」を立ち上げ、検討を進め、同年7月には新たな指針の原案を固めました。そして、2016,年1月からの指針の適用を予定していましたが、前号掲載の「NPO法人自立生活センターリングリング」の抗議文など、「新たな指針では、現在障害年金を受給している人も受給できなくなる、その数は約8万人も上る」と精神科医ら専門家の指摘、様々な要望が厚労省に上げられました。その結果、以下『福祉新聞』のように厚労省は、方針を変更しました。

「厚生労働省は2月4日、障害年金のうち精神障害、知的障害の認定に関するガイドライン(指針)を今年3月までに策定する事を明らかにした。不支給と認定される割合の地域格差を解消する事が狙い。2015年7月の指針原案に対し、精神科医らからは「年金受給者に指針を適用すると、状態像は同じなのに減額や支給停止になる恐れがある」といった懸念が相次いだことを踏まえ、申請者が不利にならないよう留意事項を加える。指針の適用開始は当初の予定より大きくずれ込み、今年の夏になる見込み」

この「申請者が不利にならないような措置」とされる「留意事項」の具体的な内容として、『福祉新聞』では、「・・・再認定にあたり、受給者の状態像が従前と変わらない場合は、当分の間、等級非該当への変更は行わない」とされています。

一体、どういう事かと改めて驚きます。まだ始まっていない段階から多くの専門家からも危惧の声が上げられ、また「新たな指針で再認定したら年金不支給になる、でも当分の間は不支給にはしません・・・」という荒唐無稽な制度設計があっていいのでしょうか。

さらに、実際に障害基礎年金の実務を行うのは日本年金機構です。この「指針」も厚労省年金局の通知として策定され、法的拘束力はありません。この「指針」や「留意事項」を巡り、新たな地域格差が生じかねません。

障害者にとっての障害年金は、生きるために最低限必要なものであり、憲法で保障される最低限の生活保障としての権利であり、障害者の実状を全く踏まえていない厚労省の年金行政、今回の「指針」について、抗議するとともに、根本的な見直しを強く求めます。

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