【報告】 11月26日 兵庫県教委交渉報告
【報告】 11月26日 兵庫県教委交渉報告
インクルーシブ教育の方向性については平行線、しかし・・・
~来年度からの国の補助事業により看護師配置推進の可能性に県教委が言及~
障問連事務局
11月26日、2年ぶりに兵庫県教委・特別支援教育課との話し合いを兵庫県民会館にて行なった。9月24日に要望書提出と趣旨説明、11月19日には事前確認を経て、要望書に沿って進められた。主に県教委の回答を中心に報告します。
(1)インクルーシブ教育の方向性 ~「同じ場で共に学ぶ」VS「多様な学びの場」~
要望書では、大阪市での「共に学び、生きる。地域の小学校で学ぶ事を基本」と保護者向けの就学相談案内に明確に示され、神奈川県で「インクルーシブ教育推進課」を今年度から新設された事など他府県の状況、さらに権利条約批准に向け「教育施行令改正」の趣旨を改めて周知徹底することなどを述べ、特別支援学校増設の中止、「同じ場で共に学ぶ意義を踏まえた兵庫県での特別支援教育の方向」について強く要望し、話し合った。
【県教委の回答】
○インクルーシブ教育の方向性
県教委からは現行(平成26年4月~実施)の「兵庫県第2次特別支援教育推進計画」の趣旨・内容の紹介を中心に、以下のような回答があった。
・平成24年中教審(特特委)報告では、個別の教育的ニーズのある児童への適切な支援、そのための通常学級・通級・支援学級・支援学校等の多様で柔軟な学びの場の仕組みが示されている。
・平成25年、教育施行令改正の意味については、文科省の担当官を招き研修会を行ったが、「全て同じ場で学ぶ、通常学級に在籍するのか」と聞いたところ、文科省からは「障害者基本法に示されているのは、同じ場で可能な限り学ぶことを目指すが、一番の目的は『十分な教育が受けられる事』であると教授された」
・平成26年国連・障害者権利条約への批准・・・この点も文科省から説明を受けたが、「人間の多様性の強化、自由な社会への効果的な参加と権利条約にも謳われ、そのためには十分な教育が必要」
・以上の法制度改定の趣旨を踏まえ、推進計画では4つの柱を設けている。
① 1人1人に応じた多様な学びの仕組み(指導の中味を重点)
② それを支える教育の専門性の確保
③ 早期からの相談体制 (教育支援委員会に機能を付加)
④ 充実のための環境整備
・またインク―シブ教育推進に係る文科省のモデル事業を受託している
・スクールクラスター事業
・交流及び共同学習
・センター的機能充実事業
・キャリア教育/就労支援
○特別支援学校の増設
推計であるが平成30年までは知的障害児童の特別支援学校への入学者は増加し続け、それ以降も4000人を越える見込みがある。【支援学校在籍者・・・知的障害児4287人 肢体不自由児727人】
規模過大が進み、現在も中庭や運動場に仮設校舎が建てられ、収まらないために以下、県立の特別支援学校、分校、分教室を新設した、または予定している。
・平成26年度~姫路白鷺特別支援学校を新設
・平成29年度~神戸市西部に農業公園内に知的の特別支援学校高等部の新設
・平成26年度~猪名川高校に昆陽の里特別支援学校の分教室を設置
・平成27年度~武庫之荘高校に阪神特別支援学校の分教室を設置
・但馬地域北部(香美町・新温泉町)には支援学校が無く鳥取県まで通学しており、それを改
善するため、出石支援学校の分校として美方校を分校として開設。
※県立以外
・三田市・・・平成27年度~三田市に肢体不自由児童の「ひまわり特別支援学校」を富士小
学校・富士中学校の中に開校。それまでは市内の小・中学校の支援学級に在籍していた。
○「副次的な学籍」の調査研究
現在、先進県(埼玉県)の視察を終え、それらを参考に平成30年度までに調査研究を行う。埼玉県では「支援籍」を導入し100%近い市町・学校で実施され交流が進んでいる。
○就学指導について
要望書にはなかったが、障問連が支援する就学問題の中で、「就学先決定の仕組み」は本人・保護者の希望を最大限尊重した「総合的判断」によるとされ、名称も「教育支援委員会」に変更するとされている。しかし、例えば西宮市では「適性就学指導委員会」の名前のままで、委員会による判定が保護者にとっても絶対的な物になり、就学後にまで影響を与えている実態を訴えた。
県教委の回答は、「文科省によると、名称はすぐ変えなければならないものではないが、『指導』でなく『支援』として位置づける事」とされたという。委員会の役割は、就学先を相談するだけでなく、就学する場で、どのように必要な支援や教育が受けられるのか、それを支援することであると確認した。
また、県教委は県下全市町教委と毎年1回、4月に「教育相談等連絡会」を開催し、保護者との合意形成がどういうプロセスを経て就学に向かって行くのか、前年度の成果報告、市町間の情報共有、工夫している好事例の共有など行っていると報告があった。
【話し合った内容】
・県教委作成の特別支援教育推進計画は当然、県下全域を網羅している。それでは「地域の通常学校への就学の取組」について聞くと、「設置者である市町教委に働きかける」と言うのみ。県教委としては県立学校のことしかできない、お金も出せないからだ。それでは県税の使い方としては「特別支援学校」のためにしか使用していないことになり非常に不公平であり、地域で就学できる支援や仕組みを県教委としてしっかり位置づけるべきだと指摘した。
・県教委は「同じ場で学ぶ意義」「通常学級の良さ」は認めながらも、「その児童の状態に応じた教育が提供できるのか、支援学校・支援学級等それぞれの場ならでは提供できるものがあり、専門性があり一律でなく、柔軟に対応すべき」とした。障問連としては、まず前提して同じ場で学び、その中でそれぞれに応じた合理的配慮の提供も含め十分な教育を実施するインクルーシブ教育の方向性を示すべきだと要望したが、平行線であった。
・現行の特別支援教育推進計画は平成30年度までであり、31年度からの推進計画策定に向けて、引き続き要望していきたい。
(2)障害者差別解消に当たっての取り組み
主に来年4月~始まる障害者差別解消、基礎的環境整備と合理的配慮の在り方について話し合った。
【県教委回答】
・「11/9に告示された文科省の私学向け対応指針」「県障害福祉課が主管して作成する職員対応要領」、この2つを参考として県立学校教職員向けの「対応要領」を今年度末までに作成する。それを各市町教委にも情報提供していく。
・文科省によると「合理的配慮の充実を図るために、まず基礎的環境整備を行い、その上に個々の児童に対して合理的配慮を行う」とされており、これらについて県教委の見解と取組について質問したが、県教委としては、何が基礎的環境整備であるのかについては、明確に示さなかった。例えば、医療的ケアが必要な児童に対する看護士等の配置についても、それが基礎的環境整備かどうかを考えるより、結果として合理的配慮が行われれば良いと言う考え方を示し、文科省の見解とは異なっていた。また、主に車椅子児童に対して必要なエレベーター設置についても、基礎的環境整備という観点からの言及は無く、「福祉の街づくり条例」により計画的に設置されているとの回答だった。また「通学」に関して合理的配慮されるのかどうか聞くと、平成24年の中教審まとめでは示されていないとし、福祉サービス等により行われるのではないかとの回答に留まった。
(3)学校教育法/施行令改正後の兵庫県下の状況
①兵庫県下の各市町毎の教育支援委員会の検討対象になった者+「22条の3」に該当した者
平成25年度 985人 → 該当者249人 通常学校就学148人 特別支援学校就学101人
平成26年度 1161人 → 該当者227人 通常学校就学76人 特別支援学校就学151人
② 兵庫県下で通常の学級に在籍している児童生徒数(神戸市を除く)
公立小学校 75人 公立中学校 24人
(4)特別支援教育支援員
①兵庫県では平成24年度から平成25年度には500人以上も減になっている要因について。
→神戸市以外では、平成24年度1267人、平成25年度1319人と増加している。減少理由は神戸市にあり、県教委としては把握していない。
②特別支援教育支援員が、どのような手順で配置が決定されるのか?
→就学する児童の状況に応じ、学校が配置に係る申し出を市町教委の行う → 市町教委が集約し学校に聞き取る → 財政事情もあり優先順位を決め、「代替措置の検討」も含め最終的に決定する。
(5)付き添い問題
○基本姿勢・・・「学校において保護者に付き添いを安易に求めるなど、過度な負担を求める事は適切ではない」と考えている。文科省の通知も含め市町教委には通知している。
○日常的に保護者が付き添っている件数(神戸市以外)・・・28人
その内、医療的ケアを伴う付き添い・・・・・・・・・・・11人
その内、看護士がいないことが理由・・・・・・・・・・・ 9人
(対象市町・・・尼崎市・姫路市・南あわじ市・はりま高原事務組合。但し今年度内に看護師を配置する予定の市町もある)
(6)医療的ケアが必要な児童の就学について
① 看護士を雇用している市町
→ 尼崎市、西宮市、伊丹市、宝塚市、三田市、川西市、明石市、加古川市、三木市、小野市、姫路市、朝来市、篠山市、淡路市
→ 市町立の特別支援学校も含まれているため通常学校での状況は不明。市町立の特別支援学校が無い市町は、朝来市、篠山市、淡路市。
② 大阪府実施の「市町村医療的ケア体制整備推進事業」を兵庫県としても実施するよう要望
→ 県の財政事情もあり厳しいが・・・平成28年度の文科省の概算要求の中に、「インクルーシブ教育推進に係る補助事業」として、今回は「専門家の配置」(人的措置)の例として、医療的ケアが必要な児童への看護士の配置も示されている。これには県教委としても対応すべき課題であり財政当局と対応の可能性について相談していきたい。
負担割合・・・国1/3 都道府県1/3 市町1/3 (政令市・中核市は国1/3 市2/3)
※看護師以外にも・・・「合理的配慮協力員」「早期支援専門家」「言語・理学療法士」
→ すでに文科省が概算要求したとは聞いていたが、今回県教委からこのような回答があり、実現
する可能性が高いとの感触を受けた。ぜひ看護師の配置や兵庫県では芦屋市を対象として配置されていた「合理的配慮協力員」を全市町で配置されるよう、障問連としても取り組んで行きたい。
③ 兵庫県で通常学校で医療的ケアが必要な児童の在籍者数
小学校・・・(通常学級在籍26人 特別支援学級在籍35人 計61人)
中学校・・・(通常学級在籍1人 特別支援学級在籍4人 計5人)
小学校と中学校の在籍者数が大きく異なる理由について
→ インシュリン注射や導尿について、年齢と共に自分でできるようになった例もある。
④ 教員が一定の研修を受け医療的ケアを従事する事について
→県教委として、①教員が研修を受け実施する ②安全性を考え看護師が実施 について設置者である全ての市町教委に確認した。
→「神戸市・姫路市・加古川市・明石市では特別支援学校において、教員も研修を受け実施する」との回答。県立の特別支援学校では看護師が行う。福祉との連携により訪問看護を活用している市町もある。
12月 3, 2015