精神障害者

【報告】 ハートフェスタ2015に参加して

星屋和彦(障問連事務局)

10月24日(土)、神戸市立地域人材支援センターにて、ハートフェスタ2015実行委員会主催・障問連加盟団体の「いこいの場ひょうご」共催でハートフェスタ2015が開催されましたので、その報告です。

ハートフェスタは、精神障害のある人たちと市民との交流を通じ、こころの病に対する理解を促進することを目的に、1990年から開催されています。

講堂で作業所や関係団体の模擬店が出され、コンサートも行われる中、別室で講演会「当事者ってなんや-私たちこんなんやってます-」も開催され、いこいの場ひょうごのメンバーなどの報告者から様々な発言がありました。

司会に大阪保健医療大学の平尾一幸先生、報告者として、いこいの場ひょうごからお二人の他、淡路障害者生活支援センターからお二人、兵庫県精神障害者家族会連合会からお一人、NPO法人すまみらいからお一人、それぞれ報告がありました。講演会会場も、最終的には50人ほどの参加者が集まっていました。

皆さんの発言を簡単にまとめさせていただくと、まず淡路障害者生活支援センターさんからは「ピアサポーターの活動」として、実際にピアサポーターとして活動されている精神障害当事者の方から報告がありました。まず精神障害者への国による施策の違いの話で、いわゆる先進国では統合失調症の平均入院日数が20日間であるのに対し、日本では最低でも3ヶ月。しかもNHK「クローズアップ現代」調査では1年以上の入院者が20万人を越えるということです。10年20年以上入院し続けている「社会的入院」を解消するため、国も地域移行を掲げていますが、なかなか進んでいません。淡路では、当事者によるピアサポーターが自治体の地域移行体制と積極的に連携出来ており、当事者が入院者と細かくコミュニケーションをとって地域移行を支援しているそうです。専門職ではなく当事者だからこそ出来るアドバイス、当事者ならではの親しみやすさが大事、とも発言されていました。また、ピアサポーターの活動として、淡路にある精神科病院への訪問活動をされているそうですが、淡路ではピアサポーターが病室にまで入っていけるような関係性になっていて、長年かかって行政が間に入っての関係作りだったようです。ピアサポーターのお二人が揃っておっしゃっていたことは、ピアサポーターの活動を通して社会的な役割を担うことで、自分自身が生きがいを味わうことができている、ということでした。

次に、いこいの場ひょうごさんからの報告です。まず団体の紹介で、兵庫県下8団体150名からなり、四季の行事や月に1回の定例会、県下精神科病院訪問、行政交渉(県・神戸市)、ピアカウンセリング(仲間の支援相談)などをおこなっています。ピアカウンセリングは、当事者としてこうして症状や差別を乗り越えたという体験談、利用できる社会資源の紹介などをおこないながら、「病気と仲良く付き合う」というスタンスで活動しているそうです。報告では差別解消法にも触れられ、来年4月からの施行だが、合理的配慮が民間会社には努力義務でしかないことへの不安要素や、各地で進んでいる自治体単位での「差別解消条例」作りが宝塚でも検討段階に入り、いこいの場ひょうごの高瀬さんも検討委員に入られているというお話がありました。

次に、兵庫県精神障害者家族会連合会さんからの報告。「家族による家族支援の取り組み」として、まずイギリスの紹介がありました。イギリスでは精神障害者は入院ではなく地域生活中心で、入院後もできるだけ早く退院する方がかえって本人の回復につながるという考えが一般的だそうです。というのも、ある研究者により、統合失調症を回復した一年後の再発率の調査が行われ、それによると回復後一年間なにもしなければ再発70%、薬を飲めば再発30%に下がる。ところが家族と本人への支援をきっちり行えば再発は13%まで下がった。という結果が出たためだそうです。それだけ家族支援というのも大事で、世界的に家族への支援が見直されているとのことでした。次に、ピアサポートを日本でも法制化しようとすることに対し、法制化するなら「ピアサポートを行う当事者に専門教育を行い専門家にする・専門職にする(しないといけない)」という動きがあるそうで、連合会としてはこれに疑問を持っているという話がありました。10年前にも精神障害者相談員を制度化しようとした時に、偉い先生たちは「精神医療には高度な専門知識が

必要だから(当事者には無理)」といってきたそうです。連合会としては「当事者やその家族の体験的な知識が大事なんだ」という立場で、専門職知識もそれはそれで大事だがそれだけでは駄目なんだ、ということを発言されていました。

最後にNPO法人すまみらいさんからの報告です。すまみらいさんでは、精神障害に関して正しい情報を知ってもらいたい、こころのしんどさを知ってほしい、ということで、こころの絵本プロジェクトを立ち上げ「僕と君の昨日の話」という絵本を制作し、神戸市立のある高校で絵本を使ったワークショップを行ったそうです。ワークショップを行うことで、参加した高校生の精神障害に対するイメージは確実に変わったし、プロジェクトを行うことですまみらいのメンバー間でも活動を通して良い方向に変わったと思う、という内容でした。

いこいの場ひょうごの高瀬さんからは、すまみらいさんの活動報告を受けて、改めて中学・高校生など若い人たちの精神障害への正しい理解と情報が大事かつ絶対に必要なので、当事者をゲストティーチャーとした出前講座をぜひ各学校で行ってほしいと行政にずっと働きかけている、という発言もありました。

会場からの発言では、神戸市でピアサポーターとして活動されている方から、精神科病院からの退院準備プログラムの段階からピアサポも関わって、退院支援や地域定着を支援している。地域移行に関して良くなってきているが、変わらないのが、医療関係者など専門家・専門職の人たちからのピアを導入することへの疑問視・軽視、だそうです。ピアサポの(必要性への)理解がないし、活用もしていない。これは、先のいこいの場ひょうごさんや連合会さんの報告ともつながる発言でした。

最後に、印象に残った発言として、高瀬さんから「当事者主体、というのは当事者が偉いとかではないと思う。すべての人が当事者で、一人一人が活動のリーダーにならないといけない。この社会で生きる人すべての問題だから。それぞれが、頑張るではなく、やる気を持つというのが大事」とおっしゃられてました。以上、ハートフェスタ報告でした。

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