国/県の制度

【制度政策】 国の制度動向

財務省は、介護保険の自己負担分を、原則1割から2割に見直すという案について、2016年末までに結論づけるとしています(福祉新聞2015年10月19日など)。アベノミクス「新三本の矢」によって、高齢者や障害者の生活が追い込まれていきます。以下、障害連とJILによる社会保障審議会、障害者政策委員会の報告です。

 

●説得力のある議論を ―障害者部会から―(2015/10/15 障害連FAXレター)

「常時介護を要する障害者は施設、という考え方を変えていくことが重要」や、「パーソナルアシスタンスの場合、資格は考えなくてもよいのでは」という意見が出た。10月15日(木)、社会保障審議会障害者部会があった。様々な立場からの意見が出され、少々分散気味の感はあった。「拠点づくりということが示されているが、自治体に丸投げ状態ではないか」との厳しい指摘も…。

財政審にみられるように、政府の社会保障の見直しの圧力が高まる中で、“なぜ障害の重い人たちの地域自立生活が社会に求められているのか”という根本的な命題について、もう少し説得力のある議論がほしい。

この日は、“移動支援”“就労支援”も議論され、「省庁間、自治体、などとの相互連携や意思疎通が大きな課題である」等、多くの意見がだされた。

 

●政府と、障害者政策委員のずれ、明らかに(2015/10/26 障害連FAXレター)

「権利条約に基づいて国内法に障害女性の項目をつくるべき」と力説したのは松森委員。同委員は、障害女性について終始取り上げ、政府は虐待やDVについて、「支援をしている」「措置を講じている」と言っているが、その実態を見ると何もしていないのではないか、と鋭く指摘した。

10月26日(月)の障害者政策委員会は、国連への政府報告案に対する議論だった。

後半では、政府報告案自体に対する意見が出され、DPIの佐藤委員は、「自力通勤可能な人、というような条件をつけて、公務員試験を受けさせないところもまだ多い」や、「成年後見を受けると公務員を辞めさせられるという差別の実態がある」などと提起した。

会議の前半は、政府報告案に対する政策委員会として意見をつけるが、それについて議論した。ワーキンググループで議論されたことがまとめられるかたちだが、成年後見制度についての考え方、精神医療と人権についての考え方、などは、多様な意見が出された。特に成年後見は、国連が代行型の仕組みを認めていないのではないか、ということで、新たな法的行為能力の支援の構築が必要だ、という意見を基に、さらに練り直していくこととなった。

その日の会議は全体的にはおとなしい議論で、委員相互の連携がもう少しほしいところ。ところで同日行われたJDFの会議では、政府報告案について政府としっかり意見交換を行う必要があるとの指摘もあった。当事者参画の報告をきちんとつくらなければならない。

この日の政策委員会では新たに任命された加藤障害者担当特命大臣も駆けつけ挨拶した。次回は12月。

 

●政策委員会ニュースレター 第三号(2015/10/21 JIL

ご存じの通り「総合支援法3年後の見直し」の議論は、厚労省の社会保障審議会(社保審)障害者部会において進められています。今回(10/15)示された「現状・課題」と「検討の方向性」は、厚労省がやろうとしているものが読み取れるものであり、いよいよ佳境に入ってきた感があります。今後の社保審の議論や資料は今まで以上に注視していく必要があります。

しかし、総合支援法が今後どうなっていくかを読み解くには、どうやら社保審だけに注目していては近い将来足元をすくわれたり、はしごを外されたりといったことが起きそうな懸念が生じてきました。実は厚労省内において「新たな福祉サービスの システム等のあり方検討プロジェクトチーム(あり方PT)」なんていうものが9月17日に立ち上がっていたのです。このあり方PTの構成メンバーは全て厚労省内の役人で、資料は公開されたものの一般傍聴はできない閉鎖的なものです。

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000098006.html

ここで公開された資料を見ると、次のような懸念事項が浮かび上がってきます。

<主な懸念事項>

脱施設の視点ゼロ

介護に生産性を求めており、障害者権利条約、社会モデルの視点もゼロ

分け隔てなく・・・障害のない人とではなく、「高齢者、障害者、児童」を分け隔てないという意味で使っている

全世代・全対象型・・・結局介護保険統合を目論んでいそう

また、第71回、72回社保審と連続で財政審の資料が添付されています。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia271009/02.pdf

ここでは、次のようなことが読み取れます。

平成29年度までに、医療・介護制度改革法案提出

負担と給付の適正化という名の締め付け(支援区分判定の厳格化、自己負担額の増額、軽度障害者へのサービスの地域支援事業化、サービス提供の効率化など)

さらに、アベノミクスの新三本の矢で掲げられた「介護離職ゼロ」。聞こえはいいが、具体策は「特養の増設」だという頓珍漢な政策案。しかし、我々からしてみれば頓珍漢な政策でも、人権意識が高いとは言えないこの国の行政サイド(霞が関)からすれば、今後ますます少子高齢化が進む中、高齢者・障害者・児童を分け隔てなく 、支援の必要な人に効率よくサービスを提供するには施設の増設と資格の規制緩和、軽度者の切り捨て(地域生活支援事業化)。そしてこうした全世代を対象とするのだから国民みんなで支え合いましょうということで介護保険料の増額および徴収年齢の引き下げが必要不可欠。と考えていてもおかしくはないのではないでしょうか。

今は社保審だけでなく、先述の「あり方PT」や「財政審」でもあからさまに「介護保険統合」とは出てきません。しかし、それぞれから出てくる資料を紐解いていくと、平成29年度までに出すとされている「医療・介護制度改革法案」の中に、介護保険と障害者総合支援法の統合が組み込まれてくる可能性は決して低くはないとみて、準備を始めていく必要があると思うのです。それに、今回の安保法案が顕著だったように、いくつもの法律に関係する法の改定は、一括りにして焦点を判り難くした形で出される恐れもあります。こうした手口は、今に始まったことではないのかもしれませんが、トンボの目のような広い視野で注意して見張っていないと、気が付いた時には「時すでに遅し」になりかねません。

是非、多くの皆さんでいろんな角度からチェックしていきましょう!

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