教育

2015年度 兵庫県教育委員会への要望書

兵庫県知事  井戸敏三 様                            2015年9月24日

兵庫県教育長 高井芳郎 様

障害者問題を考える兵庫県連絡会議

代表 福永年久

要 望 書

 

日々、インクルーシブ教育の推進に尽力されていることと存じます。近年、障害者施策においては、国連障害者権利条約に日本政府が批准し、また2016年4月から障害者差別解消法が施行されるなど、より一層、障害のある者とない者との平等の実現、地域での共生社会に向けた施策がますます必要とされています。共生社会に向けての学校教育の役割は極めて重要です。私たち「障害者問題を考える兵庫県連絡会議」(以下、障問連)は結成以来、地域の学校で障害のある児童も障害のない児童も共に学ぶ教育の実現を一貫して求め様々に取り組んできました。しかし兵庫県下で特別支援学校の増設はどんどん進められ、地域の学校で学びたいと思っても、学校や各市町教委の対応、環境整備が十分ではないため、本人や保護者が辛い思いを余儀なくされる事例があります。兵庫県下の障害者に係る施策全般について審議される兵庫県障害福祉審議会においても度々、学校教育に関して指摘されています。それらを踏まえ、以下のように要望ならびに資料の提供をお願いするものです。資料につきましては事前に提供いただき、要望ならびに質問につきましては、話し合いの場を持って回答していただくようお願いします。

 

(1)インクルーシブ教育へ向かう理念と方向性について

①他府県での取り組みですが、神奈川県では2015年4月から新たに「インクルーシブ教育推進課」が設け

られ、当初予算1937万円を投じ、立ち遅れている障害のある児童とない児童との「場の統合」の推進のため、高校と中学のモデル校での実践研究、普及啓発のリーフレット作成等に取り組まれています。また大阪市の保護者向け「就学相談」のパンフレットには、「大阪市では、障がいのある子どもの人権尊重を図り、地域で『共に学び、共に育ち、共に生きる』ことを基本とした教育・保育の推進に努めており、地域の小学校で学ぶことを基本としています」と示されています。兵庫県教育委員会として、障害のある児童と障害のない児童が同じ場所で共に学ぶ事を基本に置いたインクルーシブ教育の方向性を明確にして、保護者、各学校に周知されるよう要望します。

②兵庫県教育委員会として「インクルーシブ教育システム構築モデル事業(スクールクラスター)」を受託されていますが、その成果報告書(平成25年度)には「インクルーシブ教育システムについては、場の共有といった狭い意味に捉えられてしまいがちであるが・・・」とされています。そのような認識は間違いであり、兵庫県教育委員会として、障害のある児童と障害のない児童が同じ場所で共に学ぶ事を基本に置いたインクルーシブ教育の方向性を明確にして、各市町教育委員会を指導されるよう要望します。

③そのために、これ以上、特別支援学校の増設を中止して下さい。地域の学校で障害のある児童が就学できるように基礎的な環境整備や教育条件を拡充して下さい。

④「兵庫県特別支援教育第二次推進計画」には、「特別支援学校在籍児童生徒が、同世代の地域の仲間として共に学び、居住地との結びつきを強め、地域での生活基盤が形成されるよう、先進事例を参考に、特別支援学校在籍の児童生徒が居住地の小・中学校在籍の児童生徒との直接的、間接的な交流及び共同学習等を行う、副次的な学籍の導入について調査研究を行う」とされていますが、「副次的な学籍」に関する進捗状況ならびに今後の方針について報告して下さい。

 

(2)障害者差別解消に当たっての取り組み

兵庫県教育委員会として障害者差別解消法の施行に向け、様々に取り組まれている事と思います。以下、質問ならびに要望します。

①    現在まで兵庫県教育委員会として障害者差別解消法の施行に向け、どのように準備、取り組まれ、また施行までにどのように今後取組まれるのか、まず概要について報告をお願いします。

②    文科省によると「合理的配慮の充実を図る上で、基礎的環境整備の充実は欠かせない。そのため、必要な財源を確保し、国、都道府県、市町村は、インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、基礎的環境整備の充実を図っていく必要がある」とされています。

・基礎的環境整備には施設・設備面また人的な体制等多岐にわたります。兵庫県教育委員会ならびに各市町教育委員会の具体的な取り組みと今後の課題について説明して下さい。

・車椅子を使用する児童にとって、就学先の学校にエレベーターがあるかないかは重要です。エレベーターの設置は基礎的環境整備と思われますが、どのような進捗状況にあり、どのような課題があるのか説明して下さい。明石市では学校長による不適切な対応や車椅子児童の学校生活で課題があると聞きます。

・文科省では平成25年度から共生社会に向けたインクルーシブ教育システム構築事業として、合理的配慮の提供の実践事例等がインクルーシブ教育システム構築支援データベースにより公開されていますが、兵庫県教育委員会として県内の同事例の収集や公開、各市町村教育委員会等への指導について報告してください。

 

(3)学校教育法/施行令改正後の兵庫県下の状況

①教育支援委員会の取り組み状況について。文科省の調査によると市町村教育委員会が設置する教育支援委員会の検討対象となった者は平成25年度39,208人、平成26年度42,352人と制度改正前より増加しているとされている。兵庫県下の各市町毎の教育支援委員会の検討対象になった者が何人おり、該当となった者の就学先について報告して下さい。

②    関連して、平成27年7月10日、内閣府障害者政策委員会のワーキングセッションにおいて、文科省は「平成26年5月1日現在、障害のある児童生徒のうち、学校教育施行令第22条の3に定める程度の障害のある者で、通常の学級に在籍している児童生徒数は、公立小学校で1,607人、公立中学校で761人である」と回答しています。兵庫県の同人数を各市町毎に資料を持って回答して下さい。

 

(4)特別支援教育支援員

①公立幼稚園、小中学校、高等学校において日常生活上の介助、学習支援等を行う「特別支援教育支援

員」は全国総数としては年々増加傾向にありますが、兵庫県の場合、幼稚園においてはほぼ定率に増加していますが、小中学校では激しく増減しており、平成24年度から平成25年度には500人以上も減になっています。兵庫県教育委員会としてどのように分析されているのか回答して下さい。

②特別支援教育支援員については国から各市町に財政措置されていますが、どのような手順で支援員の配置が認められるのか、あるいは認められない場合の理由も併せご説明ください。

 

(5)付き添い問題

平成27年7月10日、内閣府障害者政策委員会のワーキングセッションにおいて、文科省は「障害のある児童生徒の学習や特別活動等に際して、設置者や学校が、保護者による付き添いを求めるケースもあると承知しており、現在、小・中学校における付き添いの実態把握に努めている」と回答しています。兵庫県教育委員会として、どのように実態把握されているのか、説明して下さい。基本的に保護者にとって不本意な付き添いを求める事はあってはならないと各市町に指導して下さい。

 

(6)医療的ケアが必要な児童の就学について

医療的ケアが必要な児童の就学、学校での生活において看護士等の医療的な支援が必要です。2015年4月に宝塚市で人工呼吸器を使用した児童が地域の小学校に就学しました。しかし就学先決定の過程で宝塚市教育委員会から、必要な看護士ついて必ず配置するとの回答は無く、本人保護者も大変不安な状況にありました。それを踏まえ、以下質問ならびに要望します。

①    前述の宝塚市では当該児童の就学に当たって看護士を臨時職員として雇用しました、すでに淡路市でも平成21年度から看護士を臨時職員として雇用しています。県内の市町で同様に看護士を雇用している市町名を教えて下さい。また医療的ケアが必要な児童が地域の学校に就学しているが、看護士を雇用せず保護者の付き添わせている市町があれば市町名を教えて下さい。

②    医療的ケアが必要な児童の就学における看護士等の配置は、兵庫県教育委員会として基礎的環境整備として位置づけられているのでしょうか。大阪府で実施されている「市町村医療的ケア体制整備推進事業」を、兵庫県としても県と各市町の共同事業により実施することを要望します。

③    文科省の資料(平成26年5月1日現在)によると、兵庫県下においては、小学校では(通常学級在籍26人  特別支援学級在籍35人 計61人)、中学校では(通常学級在籍1人  特別支援学級在籍4人 計5人)と報告されています。平成27年5月1日時点での人数を報告して下さい。また平成26年度統計では小学校と中学校の在籍者数が大きく異なっていますが、その理由や経緯について説明して下さい。

④    学校において、医療的ケアに従事するのは看護士だけでなく一定の研修を修了した認定特定行為従事者も従事できるとされています。特別支援学校も含め兵庫県下では研修を修了した教員が少ないと思われます。医療的ケアが必要な児童が安心して保護者の負担なく学校生活を送るためにも教員による支援が必要です。兵庫県教育委員会としての考えを説明して下さい。

 

(7)高等学校における共に生きる教育の実現について

高等学校では入学選抜制度が壁となり、共に生きる教育がなかなか推進されません。その改善に向け、以下、質問ならびに要望します。

①    高等学校における特別支援教育支援員の活用状況を報告して下さい。

②    医療的ケアが必要な児童が公立高校に就学する場合、医療的な支援を行う看護士等の配置について、兵庫県教育委員会として、どのような考え方、方針を持たれているのか、回答して下さい。

③    別資料にある「公立高等学校入学選抜における障害のある生徒に対する配慮」、全19項目あります。兵庫県教育委員会として、これまでどのような配慮をされているのか回答して下さい。また差別解消法の施行、合理的配慮の提供の観点からも、今後の配慮に関する方針、考え方を説明して下さい。

④    学力選抜も伴う入学選抜は知的障害者にとって壁になります。大阪府教育委員会による取り組みも踏まえ、今後の兵庫県教育委員会としての考え方を説明して下さい。

 

以上

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