国/県の制度

【報告】 県審議会~障害者差別解消法の施行に向けた施策等研究会が開催される 兵庫県が差別解消に係る条例制定に向け検討を始める

6月30日兵庫県障害福祉審議会において、兵庫県として差別解消条例の制定について初めて公の場で言及しました。それを踏まえ審議会の「研究会」として、「障害者差別解消法の施行に向けた施策等研究会」が、7月21日、8月17日の2回開催されました。いずれの研究会においても「条例制定するかどうかは未定」とのことですが、以下のように、条例の前文や名称等、かなり具体的に検討されています。以下、研究会での配布資料を抜粋して紹介します。

 

「障害者差別解消法の施行に向けた施策等研究会」

○設置目的・・・平成28年4月からの障害者差別解消法の施行を控え、条例制定の有無を含め、県職員行動計画(仮称)や県民・事業者向けリファレンス(仮称)の策定等、関連施策のあり方等について集中的な議論を行うため、兵庫県障害福祉審議会の主要委員による研究会を設置する。

 


■7/21「施策等研究会」

上記審議会に続き、差別解消法、条例をどうするのかに特化した研究会が、以下のように7月21日に開催されました。同研究会は審議会委員の内、主に当事者と研究者により14人の研究員により構成されています。

【各論点ごとの事務局の考え方】

○論点1 条例による上乗せ・横出し(差別解消部分)

【事務局の考え方】

(1) 政策条例型の選択

①理念条例型では条例制定の意義が乏しい(例えば、個人が規制対象外のままとなり、法の主旨と変わらないため)。

②差別解消法からの上乗せ・横出しを伴う政策条例型を選択する。

 

(2) 条例がない場合の課題と上乗せ・横出しの方向性

①法では主務大臣に事業者への勧告権限が付与されているが、(a)事業分野をまたぐ違法行為、(b)所管分野が不明確なもの(自治会・個人等)等への迅速な対応が期待できない

→知事に勧告等の権限を与えて(a)(b)に対応[横出し]

※ただし、個人については思想・信条の自由、結社の自由等に抵触する恐れがあるため、差別の判定には慎重な判断・仕組みが求められる(→論点3)。

②障害者差別解消法では事業者による合理的配慮の不提供の禁止(サービス提供)は努力義務に留まり、実効性に欠ける

→サービス提供についても法的義務化[上乗せ]

※ただし、求められる配慮は様々であり、企業規模等によっても異なるものであるため、一律的で過度な規制は避ける必要がある(→論点5)

③障害者差別解消法では、事業者による違法行為の申し出先が国となり、行動範囲や意思表明手段が限定される障害者に負担が大きい。 →より身近な申し出先としての県の活用

④基本条例を視野に検討しており、差別の各則(分野ごとの考え方)はその中に反映させ、差別項目に限定した各則は設けない(差別が想定される分野を全て網羅することは非現実的であり、逆にカバーされてない分野については規制なしとの印象を与える可能性もある(茨城県条例方式))。

 

○論点2 障害者を理由とする差別の定義

【事務局の考え方】

(1) 障害を理由とする差別の定義

①間接差別とは「中立的な基準だが結果的に差が生じるもの」だが、特に「サービス提供」面において、どのようなものが間接差別に該当し得るのかを条文上明確化することは困難である。

②合理的配慮の提供を法的義務化することにより(→論点1)、間接差別となり得る事態は概ね防止できるのではないか。

③差別解消法及び大半の差別解消条例(長崎県を除く)は、間接差別を定義から除外している。

④障害者間差別については、別途、性別や年齢、心身の状況等に配慮することを書き込むことにより、定義に含めなくても(結果的に)概ねカバーすることができるのではないか。

(2) 合理的配慮の定義

①障害者権利条約の定義を基本に、機会の均等を確保するために行う措置であることを定義に含める。

②合理的配慮の不作為を違反としない過重な負担として、(a)人的負担、(b)物的負担、(c)経済的負担の3類型を明示する(→論点5)。

 

○論点3 紛争解決の仕組み・地域協議会の位置付け

【事務局の考え方】

(1) 紛争解決のスキーム

①県が相談を受け付け、助言等を行う。

②①に不満がある場合は、知事にあっせんの申立てを行う(特定行政相談前置)。

③知事は第三者委員会に対してあっせん手続きの開始を求める。

④第三者委員会は必要に応じて助言等を行う。

⑤差別的行為者が④に従わない場合、第三者委員会は知事に勧告を求める。

⑥知事は必要に応じて勧告や公表を行う。

 

(2) 障害者差別解消支援地域協議会の位置付け

①障害者差別に関する情報交換や事例研究等のため、地域協議会を設置する。

②併せて、紛争解決のための第三者委員会としての位置付けも行う。

③②については集中的・機動的な審議を要するため、地域協議会に部会を設置してその役割を担う。

 

(3) 障害者差別解消支援地域協議会の名称等

①障害者差別解消支援地域協議会は差別事案のあっせんを主目的とするが、差別事案にとどまらず、差別に関わる地域生活も念頭に、障害者施策全般を含めたマクロ的な視点での意見・情報交換も期待されるのではないか。

②そのため、名称を「兵庫県障害者支援地域協議会」とする

③障害者福祉施策の総合的な指針を審議する「兵庫県障害福祉審議会」は定員30名だが、「兵庫県障害者支援地域協議会」は差別を起点とする審議に特化するため、定員15~20名程度で構成する

 

○論点4 条例に盛り込む基本理念の骨格

【事務局の考え方】

(1) 基本理念

①前ページ「基本理念項目の比較表」に掲げる7項目全てを盛り込む。

②項目(f)「一方的非難・制裁の回避」については、差別解消法の目的が共生社会の実現(相互理解)であることを踏まえ、過度な権利主張や一方的な思想弾圧等に至らないよう歯止めをかける点で重要な要素なのではないか。

③本県独自項目として、「ひょうご障害者福祉計画」の基本理念である「自己決定」「共生」の両方を盛り込む(「共生」は(c)で代替される)。

④以下の骨格案を軸に、基本条例としての総括性を意識した表現を適宜補足する。

《条例に盛り込む基本理念(骨格案)》

(1) 全ての県民は、障害の有無によって分け隔てされることなく、等しく基本的人権を享有する個人として尊厳が尊重され、その尊厳にふさわしい生活を保障される必要があること。

(2) 全ての県民は、障害のある人と障害のない人との交流及び人権を尊重するための教育等を通じ、障害についての知識及び理解を深める必要があること。

(3) 全ての障害のある人は、必要に応じて適切な支援を受けつつ、自分の行動を自らの意思に基づき決定する機会を尊重されること。

(4) 全ての障害のある人は、社会、経済、文化、スポーツその他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

(5) 全ての障害のある人は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が尊重され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。

(6) 全ての障害のある人は、意思疎通を図るため、その相手方に対して手話、点字その他障害の特性に応じた手段について選択する機会が確保されること。

(7) 全ての障害のある人は、障害を理由とすることに加えて、性別、年齢その他の要因により複合的な差別の対象として特に困難な状況に置かれる場合等において、その要因に応じた適切な配慮がなされること。

(8) 障害を理由とする差別を解消するための取組は、差別を行う側と差別を受ける側に分け、相手側を一方的に非難し制裁を加えようとするものであってはならない。

 

(2) その他想定される兵庫県らしさの例

①地域創生の観点(障害者の社会参加が地域の発展に繋がるという視点)

②多様な風土環境(前文への反映)

 

○論点5 正当・不当な理由と過重な負担(差別解消部分)

【事務局の考え方】

(1) 不当な差別的取扱い

①正当か不当かは、客観的に判断すべきではないか

差別的行為者に、「障害を理由として、区別や排除、制限等、障害のない者と異なる取扱いをしている認識」があることを不当性の構成要件とし、「積極的に障害者に害を加えようとする意図」までは必要としないのではないか。

③異なる取扱いとは、障害者に不利益を与えるもので、「放置すれば、障害者や障害についての無理解や偏見の植え付け・固定化に繋がるもの」を想定する。

④事業者の視点も配慮する必要があり、事業運営(営業)や安全性の確保等に不利益を与えることが一般的かつ容易に想定できる場合は、正当な理由に該当すると考えられる障害者も事業者側の安全性や繁忙性等を想定し、できるだけ事前確認(入店可能性等)しておくことが望ましいのではないか

⑤県民・事業者向けリファレンス(仮称)等に差別事例を列挙するが、①~④に基づき分類していく。

 

(2) 合理的配慮における過重な負担

①合理的配慮を求めることができるのは、人権を行使し、均等な待遇を実現するためのものであって、過剰なサービスの提供を強制するものではない

②事業者側の創意工夫による「おもてなし」で対応することが基本ではないか。

③投資を伴う合理的配慮については、事業者の財務状況や、その投資が、将来にわたって事業運営にどのような影響をもたらすものであるかという視点等に基づいて判断する。大企業だから投資負担に耐えられるといった一律的な判断は適さないのではないか。

④基本方針が示す5項目(P20)に基づき過重性を判断するにあたり、(a)業務プロセスの変更程度、(b)設備形状の変更程度、(c)補助器具・サービスの負担程度の3項目を、特に重視すべき判断材料とするのが良いのではないか。

 

■8/17 第2回「施策等研究会」

2回目の研究会では、「○論点6 基本条例を意識した名称及び前文」が審議されました。名称については他自治体条例の名称を参考にしつつ、兵庫県の各種条例の名称も踏まえ、シンプルなものにしようと、事務局として提案されています。

○名称・・・「兵庫県障害者基本条例」

また、条例の「前文」としては・・・

①兵庫県らしさ(風土、ユニバーサル社会づくりへの取組)を前面に出す。

②地域創生を念頭に、地域の一員としての障害者の社会参加を重視する。

③その過程で、教育等を通じた障害・障害者への理解の重要性を説く。

・・・以上を念頭に置き、以下のように事務局案の前文が示されています。

 

 

【基本条例における前文案】

兵庫県は、北は日本海、南は瀬戸内海に面する広大な県土を有している。その美しい自然と多様な風土によって、豊かな個性や特色ある文化、国際性等がもたらされ、そしてそのことにより、互いの存在を認め合い、尊重する県民性が育まれてきた。兵庫県が、年齢や性別、障害の有無、文化等の違いに関わりなく、誰もが地域社会の一員として支え合い、一人一人が持つ力を発揮し、安心して暮らすことができるユニバーサルな社会づくりを進めてきたのは、こうした包容力のある県民性に由来するものである。

しかしながら、障害のある人については、障害及び障害のある人に対する理解の不足や偏見等のため、障害への配慮が十分ではないことによる生活のしづらさに苦しんだり、障害を理由とする差別を受けたりするなど、依然として、様々な社会的障壁による制約が存在し続けている。そのため、障害のある人は、自らが望む地域や場所で暮らしたり、必要とする情報を入手したり、自由に移動したり、能力や適性に応じた働き方をしたりするといった日常生活を構成する基本的な要素を、必ずしも十分に享受できてきたわけではない。

少子高齢化や東京圏等の大都市圏への人口の流出が進み、地域の担い手が減少していく中、地域の個性と特色を最大限に生かし、安全で元気なふるさと兵庫を実現していくには、障害のある人もない人も、心身の状況等に応じて必要な支援を受けつつ、様々な分野の社会活動に参加し、地域における役割を担う必要がある。そのためには、教育等を通じて障害及び障害のある人についての正しい知識の普及及び理解の促進を図り、全ての県民が共に支え合うことで、障害のある人に対する不利益な取扱いが解消されるようにしなければならない。

ここに私たちは、障害のある人もない人も、ユニバーサル社会の下で互いに個人を尊重し、地域社会の一員として自信と誇りを持って暮らすことができるようにすることを決意し、この条例を制定する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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