【報告】 県審議会~障害者差別解消法の施行に向けた施策等研究会が開催される 兵庫県障害福祉審議会の動向-県条例の検討が具体化する
障問連事務局
■6月30日審議会の内容
(1)新たな委員が選任される
○構成のポイント
・「障害当事者による参画の促進」との観点から、発達障害者、難病者等が拡充
「NPO法人発達障害をもつ大人の会」代表 「兵庫県難病団体連絡協議会」役員
※当事者団体としてではないが、Eテレ「バリバラ」でお馴染みの玉木幸則さんが、「一般社団法人兵庫県相談支援ネットワーク」代表理事として、新たに委員に就任された。
※その他、公募委員として身体障害者、精神障害者、発達障害者それぞれ1人
・男女共同参画の推進(女性視点の障害者支援、複合差別への対応等)
・障害者差別解消法への対応(学識経験者、人権問題専門家、企業関係者等)
・障害者雇用の促進(企業関係者等)
→任期は、平成27年5月1日~平成30年4月30日
○審議会の位置付けの見直し
・これまで、審議会と区別された「自立支援連絡協議会」が位置づけられていたが、今年度以降は、審議会と一体として位置づけられ、審議会の下に・・・
「企画部会」「不服審査部会」「相談支援部会」「就労支援部会」が位置づけられている。
(2)集中して差別解消に関し議論される
①条例の制定については庁内で検討を進めており、現時点ではその可否については回答できない。
②条例を制定する場合は、「県職員行動計画」等の策定を集中的に審議する研究会に、経済・業界団体や障害当事者等のゲストを招いて審議を行う。
③(略)
→条例を制定することとなった場合、昨年度の審議会及び本日の議論の蓄積、県職員行動計画(仮称)等の策定のための基礎調査等を踏まえ、事務局として条例案の提示を行う予定。(以上、配布資料より抜粋)
また、審議会の最後には竹内障害福祉部長が「現在、知事も含め条例について検討している」とし、担当主幹からも「条例制定するなら大幅に審議会のスケジュールの見直しになる」とのコメントがあった。
今回の審議会では、公募による障害当事者3人からの「差別や配慮の経験」に関する意見、「飲食業界代表者」「企業経営者」の2人の委員から差別解消法に関する意見、「法学研究者」の委員から基本的人権と差別・権利擁護に関する意見が、議論の前段でそれぞれ表明され、また審議会の議論としても、差別解消法への対応に関し多くの時間を使い議論された。現時点では「未定」である事に変わらないが、上記の内容から見ても、これまで条例に否定的であった兵庫県が、前向きな検討に踏み込んだ事が伺える。
(3)委員・ゲストスピーカーによる差別解消に関する意見
●障害当事者から
①身体障害当事者の差別や配慮の体験・・・元々保育の仕事をしていたので、障害を負ってからも保育所アルバイトに応募した。障害に対して配慮すると約束されていたのに、一日の大半が掃除、座っていてもできる幼児への本の読み聞かせ等、保育に係る事は一切させてもらえず、何もしていないのに1カ月経って「障害のあるあなたに保育は無理、子どもが可哀そう、無理して働かないで家でゆっくりすれば」と言われ、一番辛かった。
②精神障害当事者の差別や配慮の体験・・・相談員を何年もやっている立場から、就Bや地活に通所しているメンバーの話しを聞く事が多い。多くの人が学校時代にいじめ体験がある。三障害のなかで精神は立ち遅れている、交通割引がないこともしんどい。通所していても精神と知的の人のトラブルも多く支え合いができない。30歳代まで頑張れても40歳になると服薬も影響してガクっと状態が落ちてしまう。差別を受けたかどうかも分からない人が多い。差別と言うなら制度を他障害と一緒にして欲しい。
③発達障害当事者の差別や配慮の事例・・・学校での差別はあった。家族から自分の障害を伝えられず就職も障害を公開しなかった。外見から分かりづらい。必要な配慮をしてもらえず辛い思いをした。障害のない人ならすぐ分かる説明でも私の場合は何度も確認させて欲しかった。同時に2つの事が処理できない。周囲が忙しそうで言えなかった。そのような状況でミスが多いと怒られた。配慮を申し出にくい雰囲気。嬉しかった事は障害を知って雇ってもらった事。そのことだけでも精神面が違う。私の場合、仕事に時間がかかり、省略せずに説明してもらえた、説明内容をあらかじめプリントにして配ってもらったこと。私がとっさに言葉が出にくい時も、嫌な顔をせず聞いてもらった事。
●事業者の立場から
④飲食業界から見た差別解消法(兵庫県料理業生活衛生同業組合理事長)・・・地域の市民生活に密着している飲食、旅館、食肉等、15の組合に障害者差別解消のアンケート調査を実施した。その結果では、障害者と接することがあるとの回答は80%。
・「何が不当な差別か?」・・・「コミュニケーションが難しいから入店拒否」「障害のない人との異なる接客態度」「高額な要求」。
・「正当な理由」にあたるもの・・・「危険防止の観点~美容での動く人」「混雑時に予約なしで来られた場合」「店舗の立地条件、構造上、人員の問題」。
・「合理的配慮」・・・「つきそい」「笑顔の接客」「分かりやすい表示」
・「過重な負担」・・・「出入り口の構造など、身の丈に合わないバリアフリー」「長時間にわたるつきそい~経済的負担」
〈意見〉・・・「正当な理由」「過重な負担」について統一していない。企業の大小もある。私が経営しているしあわせの村にある店舗では、車椅子でも動けるスペース、刻み食、糖尿病食の提供等の配慮はしている。しかし本店である料亭は、元々あったビルを使用しており、坂道があり階段もありカウンターが高く、手すりは付けているが車椅子対応は難しい。ビルによりエレベーターもない場合は多く、そのような構造上の問題はどうすれば良いのか、小さい規模の店では難しいのではないか。
⑤企業経営者から見た差別解消法(兵庫県経営者協会副会長)
私自身、小さなコンピュータ関係の会社を経営している。元々、女性が活躍できるようにとずっと闘ってきた。女性が結婚しても出産しても働き続けられるようにとの思いで会社を立ち上げた。ワークシェアリングやフレックスをずっと実践してきた。それを障害者に当てはめると同じ事ができるのではないか。小さな会社だからこそ個人の能力が発揮できるのではないか。しかし、うちの会社も以前はバリアフリーではない。雑居ビルでエレベーターも車椅子対応のトイレもなく、応募された車椅子の人が断念した事もある。現在のビルにはエレベーターもはあるが出入り口の段差があり休憩室は無い。貸しビルの場合には難しい。打ち合わせだけ会社で行い、普段は在宅ワーク、印刷業も機械化されIT活用によりできる事も多い。差別解消に関しては、各々の会社がどうすれば障害者を受け入れられるか、罰則より、こんなに上手く共に働けるという実践例を上げていく事が必要。40年前、アメリカのバークレーに行った。こんなにアメリカには障害者が多いのかと、何も知らない私は思ったが、多いのでなく、障害があっても普通に街で暮らしているだけ。今、日本がようやくこの数年で障害者が出て行けるようになった。
●研究者の立場から(神戸大学法学研究科教授)
「基本的人権と差別・権利擁護」・・・憲法・社会保障の専門で障害福祉にはあまり知らなかったが、友人の研究者が留学中、フランスの障害者の雇用調査研究をし、それを手伝う中で関心を持った。差別解消法は国連権利条約批准に向けた国内法の整備として制定された。国連の権利条約制定までを読み直すといくつかのポイントがある。1960年後半までは「ハンディの克服」が主な記述、1969~1975年「障害者の権利宣言」によりノーマライゼーションの一般化。障害福祉の枠内でなくあらゆる政策で障害者への配慮を求める、メインストリーミングの考え方。
・今回の差別解消法では何が差別に当たるのか法上に具体的に書いていない点については、経験値の積み重ねが必要。
・何が差別なのかのキャンペーン、意識改革の必要 → 差別解消法が法として存在している意義。同法が広がって障害者への認識を変えて行くベースになり得る。
・当事者の体験や研究者・企業人の意見・情報を発信し可視化していく事が重要。
・フランスの障害者雇用率は6%と高い。経営者も苦労しているが、達成させるためテレビでのキャンペーン等、資本を注いでいる。情報の可視化と意識変革が重要視されている。
■7/21県審議会「障害者差別解消法の施行に向けた施策等研究会」が開催
同研究会は審議会委員の内、主に当事者と研究者により14人の研究員により構成される。
○設置目的・・・平成28年4月からの障害者差別解消法の施行を控え、条例制定の有無を含め、県職員行動計画(仮称)や県民・事業者向けリファレンス(仮称)の策定等、関連施策のあり方等について集中的な議論を行うため、兵庫県障害福祉審議会の主要委員による研究会を設置する。[開催回数2回(7月、8月)]
○【研究会でご議論いただきたい論点】として、以下示されている。
○論点1 条例による上乗せ・横出し(差別解消部分)
○論点2 障害者を理由とする差別の定義
○論点3 紛争解決の仕組み・地域協議会の位置付け
○論点4 条例に盛り込む基本理念の骨格
○論点5 正当・不当な理由と過重な負担(差別解消部分)
※論点4・5は第2回研究会で議論するが、条例の庁内検討状況によっては差し替える可能性もある。
また、研究会の議論の前提として、以下のように示されている。
(1) 条例の制定についてはまだ庁内で検討中である。
(2) ただし、条例を制定する場合は、障害者差別解消法だけに焦点を当てたものではなく、障害者施策全般の理念等を中心に構成する基本条例の策定も視野に入れて検討を進めている(障害者の差別解消の規定はその一部分に位置付ける)。
(3) 第1回研究会においては、条例を制定する場合を想定し、障害者の差別解消にテーマを限定して議論を行う。第2回研究会において、基本条例を視野に含めた議論を深める。
(4) 研究会での議論内容は、第2回兵庫県障害福祉審議会で報告する。
(5) 審議日程が非常にタイトであるため、昨年度の「ひょうご障害者福祉計画」策定の際に行われた障害者の差別解消についての議論の成果も条例案には反映していく。
(6) また、障害者団体や経済・業界団体には並行して意見照会を行う。
→資料冒頭に記された「研究会の目的・内容」と「現時点での県障害福祉部局としての考え方、進め方」を紹介しました。以降の資料には論点ごとに、他自治体の条例内容を紹介
・分析し、兵庫県としての考え方/方向性も踏み込んで提示されています。その内容については、8/17に開催される第2回研究会報告と併せて次号にて報告します。
いずれにしても、以上のように急速に県として条例制定に向けた検討が始まっています。障問連として兵庫県との第一次交渉を、この差別解消に係る課題に絞って行いたいと思います。
8月 6, 2015