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【報告/生活保護問題】 住宅扶助、冬季加算の削減が決定-今年7月~実施予定

2015年3月9日、厚生労働省の社会援護局関係主管課長会議が開かれ、2015年度予算で既に削減が決定されている「住宅扶助/冬季加算」の減額の内容について厚労省案が提示された。

■「住宅扶助基準の見直しの考え方」の内容/神戸市単身世帯で3000円の減!

①単身世帯の住宅扶助上限額を、家賃物価-2.1%を反映させ適正化する

②世帯人数区分を細分化し、人数別の上限額を適正化する(現行の2~6人を、2人、3~5人、6人と細分化)、③都道府県の地域区分を2区分(1・2級地、3級地)から3区分(1級地、2級地、3級地)に見直す

④床面積に応じて上限額を減額する仕組みを導入し、より適切な住環境を備えた住宅へ誘導する。

劣悪な住宅にもかかわらず、上限額で家賃を設定し、生活保護受給世帯を居住させる貧困ビジネスを是正する、とされている。その結果、具体的な住宅扶助特別基準(上限額)は次のようになり、上がる自治体もありますが、都市部では概ね減額される(単位:月)。

・東京都1級地単身世帯 5万4000円→5万4000円(変わらず)

・東京都1級地2人世帯 7万円→6万4000円(-6000円)

・大阪府1級地単身世帯 4万2000円→3万9000円(-3000円)

・熊本県2級地単身世帯 3万円→3万5000円(+5000円)

【神戸市の住宅扶助の上限(単位:月)】

・単身世帯 4万3000円→4万円(-3000円)

2人世帯 5万5000円→4万8000円(-7000円)

■障害者にとっての住宅扶助削減

減額される場合・・・「適用を次回契約更新時まで猶予」「転居費用を支出」等の経過措置が設けられる。また、「車椅子使用者で通常より広い場所が必要」や「高齢等で転居が困難」な場合には個別の配慮措置が盛り込まれている。しかし、知的障害者や精神障害者に対してどのように配慮されるのかには触れられていない。住宅確保には根強い差別があり賃貸物件が見つからない現実に、更に追い打ちをかける結果になりかねない。

■日本弁護士連合会が撤回声明(3/26)

政府/厚労省の今回の削減方針に対し、日弁連は「・・・住宅扶助基準引下げによって、生活費を切り詰めたり、家賃滞納で住宅の明け渡しを求められる等の事態が発生し、特に子どものいる多人数世帯の生活の場が不安定な状態に置かれることが懸念される」とし、「・・・今回の住宅扶助基準と冬季加算の引下げは、生活保護基準部会の専門的知見との整合性を欠く点などにおいて、厚生労働大臣の裁量権を逸脱・濫用し(生活保護法8条2項)、憲法25条が保障する生存権を侵害するものであるから、当連合会は、政府がこれらの引下げを撤回するよう強く求める」と強く抗議している。

本来、厚労省/社保審・生活保護基準部会が今年1月9日に取りまとめた報告書では、生活保護利用世帯の最低居住面積水準の達成率が一般世帯を大きく下回っていることから、より適切な住環境を確保する方策を求めていた。しかし部会の提言を無視し、家賃物価の動向のみに着目して今回の削減を決定している。また、2人世帯の住宅扶助は単身世帯の1.3倍とされていたところを、今回の方針では1.2倍に引き下げたため、単身世帯の基準が引き下げられた地域では、複数世帯の基準が大きく引き下げられる結果となった。

また、冬季加算についても同部会では、寒冷地・山間部において冬季加算額で賄われているのかの実態を精査すべきと提言したが、これも無視し、「年間収入下位10%の一般低所得世帯における冬季に増加する光熱費の実態を反映させる」とし、ほとんどの地域での冬季加算の削減を決定した。「最後のセーフティーネット」とされる生活保護基準の引き下げは、その他施策の所得水準も引き下げる結果となり、ますます社会の貧困化、格差拡大が進行していく。

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