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【社会保障】 この間の生活保護・社会保障予算の動き

【社会保障】 この間の生活保護・社会保障予算の動き

障問連事務局

 

すでにご承知の通り、2015年度予算案は、さる1月14日に閣議決定されました。予算案総額は過去最高の96兆円に及びました。社会保障予算の内訳は32兆円、約1/3を占めます。現在、この予算案をめぐって、国会で論戦が繰り広げられています。

そのうち、約5000億円の増額が見込まれるのが、子育て支援です。保育所の増設、保育士の給与アップ、そして、それらによって待機児童の解消を目指しています。しかし、実際に子育てをする家族への直接的な支援というわけではなく、「育児の社会化」をめぐって、求められる支援とのかい離がないかについては、議論の余地があるのではないでしょうか。

公的年金給付については、一律に給付抑制が自動的になされます。「若年層の人口減少と高齢者の平均余命の伸びに伴う若年層への負担軽減」をうたい文句に、現年金制度維持を名目にしつつ今年はじめて導入されます。年金給付の総額では0.5%の減少となり、社会保障費の伸びに反して年金受給額は今年から減額されていくこととなります。

生活保護受給者に対する保護費の減額もなされます。住宅扶助や暖房費など冬季加算、食費など生活扶助も合計で320億円減少されます。生活保護問題を追っているみわよしこ氏の記事によれば、政府・財務省による生活保護の削減は既定路線であり、基準部会ですらその路線を覆すことができなかったようです。みわ氏の記事中にある社会福祉学者・岩田正美氏も述べていますが、貧困の解釈が絶対的なものから相対的なものへと移行するとき、格差の問題が見過ごされる恐れがあります。相対的な貧困の解釈によって、「生活保護を受給していない人だって、低家賃の住宅に住んでいるのだから、生活保護費の住宅扶助を削るべきだ」というような意見が、説得力を持ってまかり通ってしまうのです(みわよしこ「結論ありきで生活保護削減を決めた厚労省の非情 社会福祉学者・岩田正美氏インタビュー」*)。

また、その一方で、この4月から施行される予定の生活困窮者自立支援法に合わせ、生活困窮者自立支援費が新たに400億円設けられます。これは、失業者や多重債務者が生活に苦しむことのないよう、生活保護を受給する前に生活再建を目指すためのものです。厚生労働省のホームページによると、生活訓練・社会訓練、中間的就労、家計支援、学習支援などの事業がありますが、これらがどの程度効果があるかについても不透明なようです。

安倍政権の掲げる「社会保障改革」というのは、社会保障費の伸びに反して、「能力によって活躍できる人たちを救う」だけのものではないでしょうか。だからこそ、若年層を含む現役世代への厚遇を目論んでいるものだと思わざるを得ません。他方で、障害者をはじめ、高齢者、シングルマザー等、働けない、働きづらい者たちに対しては、生活保護費や年金額の縮小をはじめ、容赦なく切り捨てていくものではないでしょうか。私たちは、障害者の立場から、「生きていくのに条件はいらない、(労働)能力の有無によって人の生存権が奪われてはならない」という主張や運動を強めていくべきだと実感しています。

 

(*)URLはhttp://diamond.jp/articles/-/65952。

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