国/県の制度 差別禁止条例

【報告】 11/10 第2回兵庫県障害福祉審議会 報告

11月10日、兵庫県中央労働センターにて第二回兵庫県障害福祉審議会が開催された。次回で計画案が確定、1月にはパブリックコメントが募集されるため重要な審議会であったが、議論は低調。審議会の約10日前にプラン・計画案が委員に提示されたが、数百ページの膨大な資料。障問連として事務局と藤原委員とで読み込み、批判的に分析して審議会に臨んだ。藤原委員からは主に「障害のある女性」「教育」「差別解消」に関わり意見が述べられた。審議会終了後には再度、障問連としての意見書をまとめ11/17に提出した。以下は、審議会の内容と意見書について報告する。


■プランの名称

前回原案では「プラン」と「福祉計画」を一体化したものとして「ひょうご障害者総合プラン」の名称であったが、今回提示案では「ひょうご障害者福祉プラン」に変更された。当局の理由説明では、これまでの名称の継続の必要。

〈意見書〉・・・社会のあらゆる場面での共生社会への変革にむけた強い「意志」に則り、「福祉の枠組み」を越えたものとして、名称としては原案通りの「総合プラン」または「総合福祉プラン」が相応しいと考える。

■プランと福祉計画が乖離している

○各市町との関係

〈意見書〉・・・県が示すプランを基本に各市町がどのように施策として実施していくのかが重要。法的根拠を持った指導が困難だが、地域格差の大きい課題について当審議会で検討していく事、また各市町の計画の検証結果と県のホームページとリンクさせて、すぐ閲覧できるようにすること。

○グループホーム施策

〈意見書〉・・・「全国比較で見た福祉サービス供給量」の資料を見れば、グループホーム施策が兵庫県は全国平均を大きく下回っている。公営住宅を活用したグループホーム設置は重要だが、「障害福祉計画」に示される各圏域の状況を見れば、ゼロ人が多く、極めて低調。改善を求める。

○施設入所

〈意見書〉・・・プランでは意思決定支援の重要性が強調されているが、福祉計画では、「障害の重い人」「高齢化」等の障害者は支援施設の対象となるような記述がある。プランでは障害を社会モデルとして阻害する障壁を除去すべきとの方向性が、福祉計画では後退していると思われる。支援施設に入所する人には、地域生活を支える社会資源の有無、地域風土、家庭環境、家族の意向も大きな割合を占めると思われるため、「様々な事情により入所を選択せざるを得ない障害者」との表現に改めること。

○施設入所

〈意見書〉・・・今プランの「未来予想図」を真に実現させるためには、入所施設の定員総数は維持するのではなく、減少させる方向性は必要。「地域移行」は重要とされながら、なぜ新規入所、待機者が多い現実が変わらないのか。入所待機者が多く居る事を前提とされているが、その方々の意思決定に基づくものであるのか、検証されているのか疑問。プランにおいて「意思決定支援は最重要課題」と説明されながら、この点を巡り、プランと福祉計画に乖離が見られる。ます。

○施設入所者の移動支援利用促進により地域移行を推進すること。

○将来障害者人口の推計について

〈意見書〉・・・国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口をもとに、現在の障害発生率が一定であることを前提に推計したとあるが、障害発生率が一定としたという方法について、年齢階層別の障害発生率を考慮したものか?高齢者が増えると、高齢者の中の障害発生率はそれ以外の年齢階層より高いので、人口の高齢化は全体の障害発生率を上げる効果があります。そのようなことを考慮して出しているのか?

 

■「プラン」「障害福祉計画」で変更して欲しい内容

○各分野のトップに「権利擁護/差別解消」を位置付けること

〈意見書〉・・・障害者基本法が示す「障害のない者との平等」「共生社会」実現には、権利擁護と差別解消は他の各分野の全てに関わる課題であるため、分野の構成を以下に変更すること。

1.権利擁護・差別解消の分野

2.生活基盤づくり分野

3.教育・社会参加分野

4.しごと支援分野

5.くらし支援分野

6.安全安心分野  ※「安全安心」では、防災や犯罪被害の課題のみを記述する。

○「これまでの経緯」

〈意見書〉・・・平成21年からの障害者制度改革に関わる記述において、国連/障害者権利条約への批准を目標に取り組まれた事を挿入すること。障害者基本法や総合支援法、各関連法の改正や差別解消法がバラバラに取り組まれたのでない。

○「障害のある女性」

〈意見書〉・・・

「障害のある女性が「生」と「性」に自信を持ち、自尊心をもって生活ができるようにする」

→権利条約の条文のように、「障害のある女性(および少女)がすべての人権及び基本的自由を完全かつ平等に享有できるようにします」または、「障害のある女性が人権を尊重され、職場、家庭、地域のなかで、自由に、安心して生活ができるようにします」と変更すること。自尊心を持てないのが、本人のせいのような感じ、自尊心が持てないのはなぜか、掘り下げて考えていく必要がある。

○女性および障害のある女性相談支援従事者による相談支援の促進

〈意見書〉・・・促進の前に「育成」が必要です。

○「障害のある女性の出産・育児等、本人が必要とする支援」

〈意見書〉・・・以下の文章を挿入する事。「但し、育児や家事支援の利用については、女性に限定されるものではない。具体的には居宅介護(家事援助)や重度訪問介護(育児支援)等を活用する」。性別役割分業を固定化しないような記述にすること。

○「周産期医療との連携の強化」

〈意見書〉・・・分かりにくいため、「障害がある妊産婦が安心して子どもを産める環境の整備」と変更すること。

○「障害のある女性に対する性的虐待や強制わいせつの防止」

〈意見書〉・・・防止というと意識啓発的なことが想定されるが、すでに起きている事態への対応の必要性がある。「防止と被害者の保護」DV防止法(配偶者からの暴力の防止と被害者の保護に関する法律)のような意味で、保護のなかに相談支援も含まれるが、ここではどこまで想定されているのか?

○「就労状況」

〈意見書〉・・・雇用者数だけでなく離職者数も併せて掲載して頂きたい。

○「安全安心分野」

〈意見書〉・・・「差別解消法の施行後の進捗状況により、差別事例に対して、既存の相談機関以外に障害者が安心して何でも相談でき紛争を解決する新たな仕組みの創設に向けて検討する。」を白丸「2020年に目指す施策」として追加していただきたい。

○「地域生活支援拠点」

〈意見書〉・・・国から詳細な提示はないが、地域生活を推進する拠点としての意味であり、入所施設の補完ではない事を各市町に周知されたい。そのような意義を盛り込んでいただきたい。

○「教育」

〈意見書〉・・・プランで示される未来予想図にある風景を実現させるためには、学齢期に障害のある人とない人が共に生活する事は必要であり、差別解消・理解促進の観点からも極めて意義が大きく、小学校~中学校、高校での共に学ぶ教育システムの構築が必要です。「同じ場で共に学ぶことの追求」と「個別のニーズに応える仕組み」が併記されてるが、現在の特別支援教育は後者に力点が置かれ、前者が後退している。

・個別の教育的ニーズに対応する教育を通常学校で行うための条件整備を盛り込んでいただきたい。

・「副次的な学籍」・・・居住地の小中学校に基本的に在籍し、特別支援学校に副籍を置く事が基本として記述して頂きたい。

・高等学校においては「交流・共同学習」が前提とされているが、大阪府においては府立高等学校において「自立支援コース」等を設け、知的障害生徒が入学している。学力選抜試験が知的障害者の高校入学において障壁になっている現実をしっかり見据え、黒丸「今後さらに検討を深めていく施策」として記述して頂きたい。

 

■パブリックコメント募集に向けて

この度の本文案をはじめとする資料は、図表などが多くて視覚障害者には非常に理解しがたく、また量も膨大です。誰のための施策なのか、当事者にわかるようにしてください。

 

■次回の審議会に向けて

11月10日開催の障害者政策委員会で示された障害者差別解消法の「基本指針」修正案では、「・・・法の施行後においても、地域の実情に即した既存の条例(いわゆる上乗せ・横出し条例を含む。)については引き続き効力を有し、また、新たに制定することも制限されることはないなく、障害者にとって身近な地域において、条例の制定も含めた障害者差別を解消する取組の推進が望まれる。」

このように下線部分が修正された。それを踏まえ、差別解消法を兵庫県でどのように実効性ある施策として展開していくのか、次回の審議会で一定、議論する時間を設けて下さい。

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