神戸市 2014年度 精神障害者問題に関する要望書
障害者問題を考える兵庫県連絡会議
代表 福永年久
2014年度 精神障害者問題に関する要望書
【1.地域移行~退院促進】
① グループホームの設置が進まない現状があるが、精神障害者のグループホームは、平成25年度末の時点で、各区ごとに何ヶ所あり、何人利用しているのか、平成26年度末の目標値とともに資料を持って回答して下さい。
② 神戸市において公営住宅を活用した精神障害者のグループホーム設置はどのような状況にあるのか、昨年度からの進捗状況を報告して下さい。また、須磨区の市営住宅地元自治会から、今年8月に市議会にグループホーム設置反対の陳情がなされました。私たちは、市営住宅に生活している障害者と住民の関係支援が日頃から不十分であったことが大きく影響していると考えます、また、反対の陳情を行えばホーム設置が拒めるという前例は決して作ってはならないと危惧します。地域住民と共に暮らすという視点を持ちつつ、市営住宅にグループホームを拡げていくために、今後具体的にどのような方策を考えておられるか明らかにしてください。
③ 公営住宅は、精神障害者にとって社会的入院解消のための地域の受け皿として重要なだけでなく、精神病の病状・症状そして経済的困窮度の高い当事者には重要である。精神障害者の公営住宅入居について積極的な施策を講じて下さい。
④ 公営住宅に入居した精神障害者が自治会の役員や掃除を担う事は困難で症状悪化になる場合もあるが、断れば近隣住民との関係が悪化しかねません。公営住宅としての公的責任を果たし、居住サポート事業を活用し、このような課題についても支援して下さい。
⑤ 「病棟転換型居住系施設」は、障害者権利条約の第19条「すべての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有する事を認める」に違反していると考えます。精神病棟を新手の入居施設に模様替えしただけの同施設は、精神障害者を新たに拘束するもので許せません。神戸市内の精神科病院で、そのような事がないように指導して下さい。
【2.精神障害者の介護保障等、地域生活】
① 平成25年度の精神障害者に特化した居宅介護等の利用者数・利用時間について資料で持って回答されたい。また、その実態についてどう分析されるのか回答されると共に、制度自体の周知徹底ならびに効果的な利用促進策を回答して下さい。
② 精神障害者の移動支援(ガイドヘルプ)についても、精神障害者に特化した平成25年度の各市町の利用者数と利用時間について資料で持って回答されたい。地域生活に欠かせない支援として、当事者からも、通院や買い物、娯楽や社会参加等、幅広くニーズが高いが、いまだ障害間格差があります。神戸市としての見解をお示し下さい。
③ 家族問題において、親子の共依存等から無理心中・親子殺人といった事件がたえません。家族・障害当事者からの相談窓口を充実するとともに、ピアな関係の啓発講座(例)を増やす等、具体的な対策を神戸市として取り組んでもらいたい。
【3.就労】
① 障害者雇用促進法の改正、平成30年度から精神障害者の雇用義務化が始まります。精神障害者が働きやすい環境作り、短時間労働やフレックスタイム制など、具体的に各企業に対しどのような施策を講じられるのか、回答して下さい。
② 障害者差別解消法が平成28年度施行、平成27年度は周知期間です。雇用については障害者雇用促進法による施策として実施される見込みですが、各障害種別ごとの雇用における合理的配慮について、神戸市の考えと今後の具体的施策について、回答して下さい。
③ 症状によって線引きせず、中度、重度の精神障害者でも症状が安定している人の就労について、どのように促進されるのか、併せて回答して下さい。
④ 近年、精神障害者の障害年金支給に関し、少しでも就労していたり毎日通所している事を理由に年金不支給になるケースが増加しています。これでは自立を妨げていることになります。他障害では考えられない事です。神戸市としての認識と解決策について回答して下さい。
⑤ 市職員採用における知的・精神障害者を含む障害者の採用計画を策定すること。とりわけ精神障害者採用についての行財政局の見解をあきらかにしてください。
【4.保健・医療・衛生について】
① 「社会的入院」はなかなか解消されません。精神保健福祉法の今般の改正により新規入院者に対しては3カ月、1年と期限を設け、長期入院に至らないようになっていますが、改正前の長期入院者には該当されず、国においても総枠の削減数値しか示されていません。神戸市として「社会的入院の早期解消」のため、どのように実効性ある施策を今後講じられるのか、回答して下さい。
② 精神保健福祉法「改正」に関して、保護者になりえる人の優先順位がなくなるため、一人の親族が同意しただけで病院に入れられてしまう危険性があります。相続問題の延長で、こっそり入院に同意してしまう問題も起きかねない。実際に、両親の意向を無視し親族が勝手に入院させた事例も聞きます。このような「改正」によって強制入院の増加という不安があり、大きな人権問題です。神戸市としての見解とこのような事がないための精神科病院等に周知して下さい。
③ 精神科病院で、面接・面会を拒まず外出を認めるよう指導して下さい。加盟団体の「兵庫県精神医療人権センター」の電話相談では、揖保川病院に長期入院されている方から、「退院したい」と頻繁に連絡があります。しかし医師の判断により外出もできない状況です。その方の過去の経歴等を理由に「社会には出せない」と医師が言っているとも聞きます。それでは一生出られません。医師の判断の正当性はどのように担保されるのでしょうか。本人の意見がきちんと聴取され退院支援が正当に行われるよう人権に配慮した実地指導をして下さい。
④ 西宮市では重度障害者医療費助成を精神障害2級まで拡大しました。神戸市として対象拡大を検討してください。
⑤ 精神疾患治療のための入院費を助成して下さい。
⑥ 精神科救急医療体制・初期救急を具体的にどのように今後充実されるのか、回答して下さい。
⑦ 精神障害者が地域で生活し続けるために、国における精神保健医療福祉改革のビジョンにおいても、アウトリーチ支援が検討されています。神戸市としての考え方を回答して頂き、次期計画の中で、どのように取り扱われるのか、回答して下さい。
【5.教育について】
統合失調症やうつをはじめ、誤解や偏見が残る精神疾患・精神障害についての理解促進を学校においてどう教育していくのか、今年度の神戸市教育委員会および各市立学校の取り組みを報告していただくとともに、今後の取り組み方針をあきらかにしてください。
以上
11月 5, 2014