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【報告】 第1回兵庫県障害福祉審議会の報告 ~次期プランの全体像が提示される

【報告】 第1回兵庫県障害福祉審議会の報告 ~次期プランの全体像が提示される

障問連事務局

9月10日、兵庫県私学会館において第1回県障害福祉審議会が開催された。3月から新たな特別委員が選任(※障問連も委員として参画)、5~6月に分野ごとに各分科会が開催され、それらを踏まえ、次期プラン策定に向け本格的な検討が始まった。今回の審議会への障問連の意見をまとめ提出した。今後は、10月にはプラン文案を委員に提示、11月、12月と2回の審議会を経て案が作成、1月にパブリックコメントが募集され2月には決定し、4月から施行される予定。以下、プラン全体像の概略と審議会の報告を行います。

 

【新たなプラン案の全体像】

■「ひょうご障害者総合プラン」(仮称)の位置付け

これまで障害者基本法に則った「プラン」と数値目標を主とした「障害福祉計画」の二本立てであったが、「本県障害者福祉行政の基本指針を示すものとして一体的に策定すること」とされ、新たに「ひょうご障害者総合プラン」として位置付ける事が提案された。

内容としては、「障害者の意思決定や意思決定支援、共生社会の実現を尊重する障害者権利条約等の理念に鑑み、副題を『自分で決める 自分の生き方 みんなでつなぐ共生の社会』と設定する」

 

■計画期間

・二つの計画の統合に当たり、計画期間を5年→6年に改める。

・法令で3年と規定されている「障害福祉計画」の該当部分を、「ひょうご障害者総合プラン」の中間的な到達状況を図るものとし、障害福祉審議会において毎年度進捗状況を評価し、必要に応じて計画を見直す。

 

■プランで描く〈未来予想図〉と理念構造

6年という計画期間は、長期的理想を語る上ではスパンが短いため、長期的なビジョン(2040年)を〈未来予想図〉として示し、6年後はそこに到達するための軌跡と位置付け、2段階での枠組みを提示。

【2040年の未来予想図】

「障害が1つの個性として浸透し、街中などを行き交う中で、人々がごく自然に接し合う風景」

【6年後(2020年)の目標】

「住みたい地域・場所で暮らし、まだまだ改善余地はあるけれども、障害のある人も支援者も、『毎日が充実しているよ』と胸を張って言えること。」

取組のキーワード

○自己決定・・・障害のある人が必要に応じて支援を受けつつ、自分の生き方を自分で決め、その決定が尊重される社会の実現。

○共生・・・・・障害のある人が、地域の一員として生涯安心して当たり前に暮らし、誰もが共に支え合う社会の実現

 

■障害者福祉が直面する主な課題の設定

課題1 意思決定と意思決定支援・・・意思決定を見守り、居住地等を可能な限り自分で決める環境整備の他、意思決定が困難な方にはできるだけ複数人が表情や仕草の読み取り等に関わっていく事か必要

 

課題2 相談支援/権利擁護の推進・・・基幹相談支援センターを核とする相談支援体制の整備や従事者の資質向上・計画的増員、成年後見制度の利用促進のほか、障害者虐待防止、差別解消の推進が必要

 

課題3 多様化/重度化する障害への対応・・・発達障害や高次脳機能障害、難病等への支援強化のほか、専門的医療ケアを要する在宅重症心身障害児・者支援および家族へのレスバイトケアや緊急時受入体制等が必要

 

課題4 障害のある子どもへの支援・・・子ども/子育て支援施策の後方支援として、相談支援やアウトリーチ型支援の充実等に加え、兄弟姉妹を含む早期からの関わり、両親への支援の強化等が必要

 

課題5 高齢化への備え・・・障害者が利用可能な特別養護老人ホーム等の整備や、体力が低下した障害者の一般就労から福祉的就労への移行推進、介護保険との円滑な連携等が必要

 

課題6 障害のある女性への支援・・・障害者支援施設等における同性による介助や、本人意思に反する不妊・中絶の強要の廃止の徹底、女性として生きていくことの自尊心を尊重する支援の促進

 

課題7 就労支援の強化・・・特例子会社設立促進等による雇用の場の拡大や職場定着支援の強化、福祉的就労における工賃向上/商品力の強化等、適性や能力に応じた多様な就業環境の整備が必要

 

課題8 自らの意思に基づくすまいの選択・・・障害者支援施設やグループホーム、賃貸等多様な住まいの場の提供や居住環境の向上、障害者支援施設での自由な日中活動の保障および地域住民との積極的交流が必要

 

課題9 ユニバーサル社会の実現・・・ユニバーサル社会づくりの率先のほか、障害者の社会参加の可能性を高めるロボット・リハビリテーションの推進や補装具の適切な支給支援等が必要

 

【プラン案への評価と第1回審議会報告】

○プラン案への評価

国の法改定や権利条約批准を背景として新たに「総合プラン」として体系化され、副題にも目指すべき理念が示されており、従来にはないプランであり、県障害福祉部局としての努力が感じられる。また長期的ビジョン(2040年)として「未来予想図」を「風景」としてイメージできるよう、障害者の存在が当たり前になり(ノーマライゼーション)、障害者が社会に溶け込むような状況(インクルーシブ)の意味が込められており、できるだけ平易な表現で分かりやすく示されており、未来予想図に向け何をどう積み上げて行くのかの指標として提案されている。「楽観視し過ぎる」との批判もあるが、目標として一定評価しつつ、しかし長期的ビジョンの理念を各課題ごとの施策にどのように反映していくのかに明確な視点や具体性をいかに担保して行くのか、それが次回の審議会の課題になるだろう。また、分野ごとの施策以外に、「直面する主な課題」が設定され、「新たな対応が求められる障害と複合性への対応」が取り上げられ、とりわけ「障害のある女性」が一つの課題として取り上げられたことは評価したい。障問連の藤原委員から性別のクロス集計を提案し、それを県事務局として実施し、男女による格差が明確になったため、課題として上げられた。

 

○審議会報告と各分野での課題

総勢40人の大所帯の委員が出席、発言の機会も限られていたが、障問連の特別委員藤原さんからDPI女性障害者ネットの資料も配布しての複合的差別について、教育、実態調査など多岐にわたり発言され、特に自身の経験談として、「私は視覚障害があるため、娘とテレビを見ている時、娘は私と一緒に楽しもうと、手のひらに絵を描いて伝えようとしてくれる。一緒にいる中で合理的配慮は自然に生まれてくる。だからこそ学校等で一緒にいる意味はとても大きい」と発言された。以下、各分野ごとに特徴的な各委員からの意見を紹介する。

●意思決定支援について

前回審議会では、重度の知的障害者には「意思決定という言葉はきつ過ぎる」等、否定的な意見もあったが、宮田会長の資料提供等もあり、「主な課題」の筆頭に位置され、重要性は今審議会でも確認されたが、支援者等がその人の意思をどう読み取っていくのか、その技術等の向上や重要性について議論された。

●くらし~居住場所

「地域移行」そのための「グループホーム」に関し、分科会では否定的な意見もあったが、今審議会では影をひそめ、その人の意思決定、ケアマネイジメントが必要という点で合意された。しかし、施設入所者は・・・「平成24年度 5486人 → 平成25年度 5523人」と増加している。この点は地域格差も如実に表れており、次回以降の審議会の課題でもあろう。

また、国が現在進める「病棟転換型居住系施設」に関しても複数の委員から否定的な意見があった。

●教 育

県提出の資料には年度ごとの特別支援学校の在籍者数が示されている。

  平成20年度 平成25年度
視覚障害 98人 94人
聴覚障害 293人 265人
知的障害 2998人 4.039人
肢体不自由 683人 712人
病弱 69人 69人
4.141人 5.179人

他障害児童は年ごとに微増減し大きな変化はないが、知的障害児童は爆発的に増加しており、さらに5年後には4.500人に達すると見込まれている。審議会でも会長の宮田さんから「共に学ぶ」重要性は指摘され、委員でもある県教委の役人を問い糺す場面もあった。今プランの「未来予想図」と最も乖離しており、次回以降の審議会でも継続した議論が求められる。

●就労支援

県提出資料には、「障害者を取り巻く現状」として、「生産年齢人口の減少」→「就労促進による社会保障の受け手から貴重な労働者としての障害者観への転換」とされている。これに対し育成会委員からは「貴重な」という表現は改めて欲しいとの意見があった。またこの表現では、「生産年齢人口が減少」していなければ、障害者観を転換しなくていいのかとも読みとれてしまう。さらに、これまで就労を強く希望し職業訓練校に通っても、本人ではどうする事も出来ない障害を理由に就職を断念させられてきた人は多くいた。社会の都合によって、「あなたは働けません」とされたり、「担い手が少なくなるので働いて下さい」と言われたり、そのような歴史的な流れを、社会が反省・総括しない事は当事者の尊厳を傷つけかねない。

また、特例子会社については、「障害のある人を個別の場所に分離してしまう。ともに働くという理念に反する」との意見や、また就労継続A型施設に関して、「県には86箇所あり全国でも6位。最賃も払うので、増えることは良いことだが、それにふさわしいだけの仕事を提供できているのか、チェックが必要。中身のない就Aが増えるのは恥ずべきこと」との指摘もあった。

●その他~まとめとして

複合的な問題として重要視されているのが、「高齢化」。介護保険制度との円滑な連携とされながらも各委員からは厳しい状況が発言された。障問連として、親子の共依存関係、今なお続く家族責任論、入所施設やグループホーム以外に親元から離れる事が困難な現実、障害の思い人の居宅介護等を活用した自立生活が認知されていない事などを改めて、意見書として提出した。

また、福祉事業者の人材不足の課題も複数の委員から大きな問題として指摘され、さらに今回の県のプランに対しては評価しつつ、それを具体化していくのは各市町であり、県の指導力を発揮すべき、例えば計画未達成市町名の公表などの提案もされた。

12月審議会は最終になるため、10月内にも示されるプラン文案を読み込み、11月審議会に向けて障問連としても内部検討したい。県内の地域格差の問題も大きな課題であり、また差別解消法がプラン2年目に施行されるため、兵庫県内での実効性ある仕組みに関し積極的に提案していきたい。

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