【小特集/GH問題】 グループホームをめぐる様々な課題/状況~報告
【小特集/GH問題】 グループホームをめぐる様々な課題/状況~報告
障問連事務局
年々、障問連の加盟団体の中でも、グループホームを開設する事業体が増加しています。しかし開設しても多くの困難を抱えながら運営されている現状があります。開設時の建築基準に関わる問題、地域住民との関係、そして第一義的には報酬面の低さが何よりも上げられます。神戸市のグループホームを巡る課題も併せ、以下に現在、来年度からの報酬改定に向けた検討が厚労省で行われており、7月25日に「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」に対し「障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会」から意見書が提出されていますので、抜粋して紹介します。
【日本グループホーム学会の意見書】
■小規模でも運営できる報酬改定を
障害者自立支援法でグループホームの一住居の定員が2名から10名に改正になり、入所施設の定員削減や通勤寮からグループホームに転換したり、精神科病床の転換による場合は2ユニット20 名、知事が認めれば3 ユニット30 名のグループホームも認められ、全国的に大規模化、同一敷地内(近接地)に集約する場合が増えている。総合福祉部会の骨格提言では、4~5人の小規模の住居の制度に戻すべきとの提言が出て、また障害者の地域生活の推進に関する検討会のヒヤリングでも、多くの団体がグループホームを小規模化すべきとの意見を主張していた。しかし残念ながら、厚生労働省から示された当初の案は、障害の重い人が住む場合など都道府県知事が認めれば、一住居10名以上でも可能との見解が出されていた。これは、総合福祉部会、検討会のヒヤリングで述べた多くの団体の意見要望を無視した案であった。では、グループホームは、当初の理念から逸脱して大規模化、集約化になってきたのであろうか。グループホームの報酬が低いためでないだろうか。
■介護サービス包括型での個人単位での居宅介護を利用する経過措置について
平成27年3月末での経過措置になっている区分4以上の個別の居宅介護利用の恒久化を要望する。現在この個別の居宅介護の支給決定が無くなると障害の重い人のグループホームでの生活が困難になる。
基本報酬が低いので、常勤の職員の配置が難しく、居宅介護も併用できないと生活が成り立たない人が
いるからである。
一方、グループホームでの居宅介護の利用に当たって市町村が支給決定を渋る場合とか、支給量が少ない場合があり、市町村格差が出てきている。国庫負担基準の見直しと、国庫負担基準以上の支給決定している市町村への補助を充実していただきたい。障害者自立支援法になり、居宅介護の利用ができなくなり、論議を重ねていつくかの変遷を重ねて現在の経過措置にたどり着いている。対象者は障害支援区分4以上ですが、計画相談で支援区分4以下の人でも必要であれば居宅介護を利用できるように対象者の拡大も図っていただきたい。
■夜間支援体制加算(Ⅰ)、(Ⅱ)について
4月の改定で、夜勤、宿直に着目して夜間支援体制加算が変更になった。従来と大きく解釈が変更になったのは一人の支援員が「障害支援区分に関係なく何人を夜間支援するか」、「勤務実態が夜勤か宿直か」で報酬が変わった。夜勤で障害支援区分が5,6で5人以上を支援する場合の加算は減額になり、一方支援区分が低くても夜勤の支援をすると5人以上は従前の加算より大幅に上がることになった。当学会の実態調査、事例検討では、障害の重い人のグループホームの支援で夜間、一人の入居者に複数の支援員が配置する事例、2人、3人の入居者の定員のグループホームに夜間支援員が配置されて支援している事業所もあることがわかった。これらの事業所には今回の夜間支援、体制加算の見直しでは不十分で、一人の夜勤職員が3人、2人の入居者を支援する場合の報酬を評価していただきたい。
【神戸市のグループホーム問題をめぐる状況】
■建築基準問題
さる6月神戸市議会で「建築安全条例」の一部改正が行われ、それに伴い、防火安全規定に関する「条例施行規則」においても改正が必要とされ、その改正案についてのパブリックコメントが9月末日締め切りで募集されました。内容は以下の通りです。
●条例第33条第3項に規定する規則で定める基準
安全上又は防火上支障がないものとして定める基準は、次に掲げるもののうち、いずれかに該当する場合とします。
① 耐火建築物又は準耐火建築物であるもの(建築物の倒壊及び延焼の防止のため構造制限をする)
② スプリンクラー設備又はパッケージ型自動消火設備を設置したもの(初期消火を図るための設備を設ける)
③ 居室の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを建築基準法施行令第129条第1項第1号に規定するもの(難燃材料等)とし、かつ、廊下、階段その他の通路の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを建築基準法施行令第129条第1項第2号に規定するもの(準難燃材料等)としたもの(延焼拡大を抑制する対策をする)
④ 屋内のすべての部分で火気の使用がなく、かつ、避難階段以外の階において居室から直通階段までの歩行距離が15m以下、避難階において居室から屋外の出入口までの歩行距離が30m以下となるように設けたもの(熱源対策と避難距離制限をする)
以上が内容です。上記の「全て」でなく「いずれか」であり、折衝段階で聞いていたほぼそのままの内容であるが、既存の建物がこれでほぼ該当できるなら、一歩前進と評価したい。
■GH設置に関する地域住民の反対
市会議員から加盟団体に情報が寄せられ判明したが、8月に神戸市議会に「市営住宅を活用したグループホーム設置」に対して、反対の陳情書が上げられた。11日には神戸市議会と各会派に事情調査を行い、9月22日、神戸市議会環境福祉常任委員会で同陳情が審議されね予定と聞き、障問連としても傍聴した。以下、傍聴記録。
〈傍聴報告 宗保榮(NPO法人飛行船)〉
市側の説明では、本年1月から候補地の選定に入り、2月から候補地の各自治体と事前話し合いに入った。東落合については当初から自治体側の反対意見が多く、6月26日から6月28日にかけて市からの説明会を行う。その際、反対の主訴は市担当者の要約によれば以下の様になる。
・かつて同住宅に居住していた精神障害者が多くのトラブルを引き起こしていた。
・グループホームの夜間対応がどうなるのか説明がないため不安である。
・障害者が住宅内で火を使うことが不安である。
それらの意見に対し、神戸市側はやや感情的になって、障害者だからという理由での反対は障害者差別であると返答したようだ。「感情的になって」の下りについては、委員からの質問にも否定しなかったことから見てそのような事態だったと思われた。
午前中の部会では、委員から、住民への丁寧な説明を心がけて欲しい、との意見が出された。
それに対し神戸市は、そのようにする。また県営住宅をグループホームとして利用する際には、実施予定の事業者と県が同行して住民説明会を行っている。神戸市は良かれと思って事業者決定前に市だけで説明会を行ったため、住民からの質問点に的確に答えられなかった。今後は住宅住民だけでなく、地域住民への啓発活動も必要と考えていると回答していた。
午後、この陳情の取り扱いが話し合われ、民主、共産、新社会が否決、自民、公明が打ち切りとなり、結果的に陳情は受け付けられなかった。
なお、この問題については9月25日の本会議で新社会党の小林るみ子議員が県と同様、事業者が決定した後、事業者と市が同席して説明会を行うようにすることを求める質問をするとのことである。
以上
■課題
兵庫県においては県営住宅を活用したマッチング事業が行われているが、市営住宅レベルではなかなか進まず、障問連としても推進を求めており、その意味では神戸市の取り組みは評価したい。しかし、傍聴報告にもあるよう、神戸市担当者の説明内容や対応の仕方により、問題をより悪化させたと推測されます。また、数年前には公営住宅ではないが、宝塚市でも2件連続して「地価が下がるから」等の理由によりグループホーム設置が断念された事例もあり、また県担当者に聞くと、表面化していないが、住民の強い反対により断念したケースがあると聞きます。
「日本グル―プホーム学会」の意見書にもあるよう、報酬面等の制度的な不十分さに加え、地域住民との関係で、設置する事自体に困難さがあり、その意味でも差別解消に向けた取り組みが必要です。
また、現在、応募期間(9/10~10/31)で、神戸市として市営住宅を活用したGH事業の実施法人の募集が行われています。北区・西区・垂水区の住宅3軒で、陳情に挙げられた須磨区の住宅は対象とされていません(理由は不明)。さらに応募資格として・・・
・自治会等からの要請に応じて運営や人員配置体制について説明できること
・運営に関する苦情等に対応できること
・自治会との良好な関係を構築できること
・市営住宅の使用等について関係法令を遵守すること
しかし、国土交通省平成22年通知「公営住宅のグループホーム等の事業への活用について」では、当該の団地自治会に対し事前の説明、また入居後にトラブルが起きた場合にも福祉部局として説明する事が求められています。「公営住宅を活用する」のは行政としての意思でもあり、全て事業所に委ねるのではなく、行政としての責任は果たすべきだと考えます。
10月 2, 2014