精神障害者

【精神障害】 病棟転換型居住系施設に反対の声を!

【精神障害】 病棟転換型居住系施設に反対の声を!

障問連事務局

精神障害者をめぐる「病棟転換型居住系施設」の問題は、本ニュースでもこのところ毎月掲載している。今月は7月1日の厚生労働省有識者検討会を前にして行われた、病棟転換型居住系施設への反対行動を中心に、アピール文と主な新聞記事を掲載する。同趣旨のアピールは日弁連からも出されている(6月5日会長声明)。

本ニュースでは、いこいの場ひょうごの高瀬建三さんが継続して批判的にこの問題に迫っているので、改めてくりかえす必要もないと思う。そのうえでなお言葉を重ねるとすれば、障害者の地域生活を謳う障害者権利条約を批准したこの国において、まさに条約に反するようなことが行われているということである。さらに言えば、こうして精神障害者を病院内に閉じ込めて「居住」させることによって、地域社会と交わる回路を断つならば、「精神障害者は何をするかわからないから閉じ込めておくのがよい」というような差別的な考えがいま以上に蔓延するだろう。精神障害者本人にとってみても、こうした状況は、病気や障害そのものに加えさらなる症状の悪化につながる、これは言うまでもないことである。

 

精神科病院の「病棟転換型居住系施設」に反対する緊急アピール

DPI日本会議、2014618

私たちDPI日本会議は、すべての障害者の権利と地域社会における自立生活の確立を目指して活動している障害当事者団体である。

病院の敷地内で暮らすことが地域移行と言えるのであろうか。

厚生労働省は本年3月に設置した「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」において、精神科病院の病棟を居住系施設に転換するための協議を進めている。

日本は34万床もの精神科病床があり、これは人口比で全世界の4倍の精神科病床となっている。1年以上の長期入院を続けている人は20万人以上おり、地域での受け皿さえ整えば地域移行できる社会的入院が5~15万人いるとも言われている。これは、経営の都合であると検討会の場において経営側は発言している。この突出して多い精神科病床を削減し、地域移行を進めることが日本の大きな課題である。

しかし、現在検討されている「病棟転換型居住系施設」は、病院内の病棟を介護型施設、宿泊訓練、グループホームやアパート等に転換するというもので、生活の場は病院の敷地内にとどまるものである。にもかかわらず、数字上は34万床の精神科病床は削減され、地域移行が進んだと見なされる実態の伴わない見せかけの政策である。

我が国が本年批准した国連障害者権利条約では、第19条で「全ての障害者が他の者との平等の選択の機会を持って地域社会で生活する平等の権利を有することを認める」「特定の生活施設で生活する義務を負わない」と明記されている。「病棟転換型居住系施設」は、第19条が脱施設収容政策を求めている点と、事実上地域生活への選択ができない状況の中で進められている点から、この規定に反するものである。「病棟転換施設」問題は、障害者権利条約批准の価値を大きく損ねるものであり、精神障害者はもとより障害者全体に関わる重大問題である。真に地域移行を進めるためには、地域福祉サービスの拡充、住環境整備等の地域の社会基盤整備と、ピアサポートをはじめとする当事者エンパワメントの拡充が不可欠である。見せかけだけの地域移行ではなく、長年続けてきた大規模収容型施策から地域社会基盤整備へと政策の転換が必要である。DPI日本会議は、障害者権利条約の理念に反する「病棟転換型居住系施設」に断固反対するとともに、地域の社会基盤整備を推し進めるように強く求める。

 

 

 

病棟転換型居住系施設に反対し、障害者の人権を守るための緊急アピール

病棟転換型居住系施設を考える会、2014626

我が国における障害をもった人たちの人権が重大な危機にさらされています。

現在、厚生労働省に設置されている「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に関る検討会」では、精神科病院の病棟を住まいなどの施設に転換する「病棟転換型居住系施設」構想が議論されています。

言うまでもなく、病院に入院している人が帰るべき場所は、「地域」です。現在ある病棟に手を加え、それを「施設」としてもそこは「地域」ではありません。

我が国の精神科病院には、32万人もの方が入院し、そのうち1年以上の入院が20万人、10年以上の入院が7万人もいます。そしてこの中には多くの社会的入院の方が含まれています。

2004年に国は「精神保健医療福祉の改革ビジョン」を策定し、「『入院医療中心から地域生活中心へ』というその基本的な方策を推し進めていくため、国民各層の意識の変革や、立ち後れた精神保健医療福祉体系の再編と基盤強化を今後10年間で進める」としました。

一刻も早くこの方々に退院し地域に帰っていただかなければならないのに、このような施設ができてしまえば入院患者さんはそこに留まることになってしまいます。

我が国は、本年1月に障害者権利条約に批准しました。障害者権利条約第19条は「障害のある人が、他の者との平等を基礎として居住地及びどこで誰と住むかを選択する機会を有し、かつ、特定の生活様式で生活することを義務づけられないこと」としています。病棟転換型居住系施設はこれに反し、到底認めることはできません。

もしもこのようなものを一旦認めてしまえば、我が国の障害者施策に多大な悪影響を及ぼすことは間違いありません。

病棟転換型居住系施設は、障害をもった人の人権をないがしろにする問題の大きい施設であり、我が国の障害者高齢者施策全般の根幹を揺るがす愚策に他なりません。私たちは、このような施設の構想の検討を止め、障害をもった人が病院の外にある地域に普通に暮らすことができるよう強く求めます。

 


精神病棟の居住施設転換…患者囲い込み続く懸念

2014年6月12日読売新聞

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=99992

 

精神科の長期入院を解消する手段として「病棟の一部を老人保健施設や居住施設に転換する」という構想が浮上し、厚生労働省の検討会で議論が行われている。病棟を模様替えした施設に住んで、患者が「地域生活」に移行したことになるのかが問題だ。

 

日本の精神病床は34万床あり、30万人余りが入院している(2012年調査)。経済協力開発機構(OECD)に加盟する先進・中進国の中で、人口比でも絶対数でも突出して多い。

しかも1年以上の長期入院が20万人。うち5年以上の入院も11万人を超す。多いのは統合失調症、次いで認知症の患者で、65歳以上が半数を占める。

おおもとの原因は、政府が高度成長期に隔離収容主義の下で膨大な精神科病院を民間に建てさせたことにある。結果として長期入院になった患者たちは、必ずしも病状が重いわけでない。長い入院に伴う生活力と意欲の低下、退院後の生活の場を確保できていないといった事情が大きい。

政府は、そうした社会的入院の解消を02年末に打ち出したが、なかなか進まなかった。病院は、ベッドが空くと収入が減るため、退院支援にあまり積極的にならず、空きが生じたら新たな入院患者で埋める傾向があるからだ。公立病院主体だった欧米と違い、民間病院は容易に減らせない。

そこで今回浮上したのが<病棟を居住系施設に変えれば、ベッド数と入院患者数を減らせる>という構想だ。福祉関係の検討会委員からの提案だったが、日本精神科病院協会(日精協)の方針でもある。

河崎建人(たつひと)・日精協副会長は「病床数を適正化して急性期医療に力を注ぎたい。長期入院患者が退院しやすい生活支援の場をつくるため、病棟転換という選択肢があってよい」とする。

何に転換するのか。老人保健施設、宿泊型訓練施設、グループホーム、共同住宅などが挙がっている。

厚労省は今月中にも検討会の議論をまとめ、来年度の予算や障害福祉サービスの報酬改定に反映させたい考えだが、批判も多い。

懸念の一つは、病院内に住んで本当に自由な暮らしができるか。竹端(たけばた)寛・山梨学院大教授(福祉政策)は「病院のソフトな支配下にある施設では、本当の地域移行とは言えない。また隔離・拘束や外出制限がなくても、街から遠いと社会生活は難しい」と指摘する。日精協の調査では精神科病院の6割は山林か農地に囲まれた場所にある。

そもそも長期入院がよくないのは、それぞれの人生を実現する時間が奪われるからだ。ハンセン病の隔離政策が「人生被害」と呼ばれたのと同様に、長すぎる入院は人権侵害である。幸福追求権を取り戻すには、実際に社会とかかわれる場でないといけない。

もう一つの懸念は、ハコモノを居住場所として残したら、病院による囲い込みが続きかねない点だ。病院内の施設だと、空きが生じるたびに次の退院患者で埋め、その分、新たな入院を招くのではなかろうか。

地域に退院の受け皿はないのか。08年の総務省調査では全国の空き家は756万戸(総住宅数の13%)に及ぶ。その後も公営住宅を含めて空き家は増え、高齢者住宅も大量に造られた。それらを活用し、在宅生活を支える医療・福祉サービスを確保することこそ、正面の政策のはずだ。

もちろん病院経営の軟着陸も考える必要はあるが、仮にベッドを単純に半減させれば、今の職員数でも配置の密度は倍になる。入院料を倍にすれば収入は変わらない。そうした道筋を厚労省が明示すべきだろう。純粋な病床数の縮小に助成金を出す方法もある。

病棟転換の施設は「現実的でよりましな方法」なのか、「看板の掛け替え」にすぎないのか。精神医療福祉の大きな分岐点である。(大阪本社 編集委員 原昌平)

 

精神病床「住まい化」波紋 退院促進が難航、厚労省検討

朝日新聞デジタル2014年6月18日05時00分

http://digital.asahi.com/articles/DA3S11195452.html

 

精神科病院の病床を減らし、居住施設に転換しようという政策案が厚生労働省の有識者会議で議論され、波紋を広げている。精神障害者について国は、入院中心から地域社会で生活してもらう政策へかじを切ったが、なかなか進まない。居住施設転換は病床削減を目指す提案だが、「一生を病院敷地内で過ごすことになりかねない」などの批判がでている。17日の会議では意見がまとまらなかった。

■入院1年超、20万人

統合失調症など精神疾患の入院患者は約32万人おり、1年以上の長期入院患者が約20万人いる。入院の必要がないのに居場所がない人も多く含まれるとされる。日本の精神病床数は世界的にみても多く、平均在院日数も極端に長い。

この状況の改善を目指し、厚労省は2004年、入院中心の精神医療政策を転換。退院促進の目標数値を設定し、03年に35・4万あった病床数が15年には7万床減ると見込んだ。だが11年までの削減数はわずか1万床ほどにとどまる。

病床を減らせば病院の経営が厳しくなることに加え、退院後の受け皿となるグループホームなどの不足が原因という指摘もある。そこで浮上したのが病床の居住施設への転換だ。

長期入院患者の高齢化は進み、65歳以上の割合がすでに過半数を占める。有識者会議で提案した委員は、「最善とはいえないが、(患者が)病院の中で死んでいくのに手をこまねいて見ていられない。早急に議論を進めたい」と話す。

すでに転換して移行に取り組む病院もある。福島県 郡山市の「あさかホスピタル」。02年に102床あった分院を閉じ、共同住居に改修した。生活支援や住居運営にあたるNPOも設立。病院の訪問看護など継続してサポートする態勢を整えた。

統合失調症で10代から入退院を繰り返していた40代の男性は、転換後の暮らしを「外出や買い物も自由。同じ建物でも病院とは全く違った」と話す。07年には同じ敷地内にグループホームを建てた。

廃止した分院の患者の平均入院期間は20年以上。家族の受け入れも難しく、いきなり地域生活に戻るのも難しかった。佐久間啓院長は「受け皿がなければ地域移行はできない。サポート態勢を整え、段階を踏んでいけば退院できる人もいる」と強調する。

■「名変えただけ」批判

一方、居住施設への転換策には強い批判がある。

有識者検討会は昨年7月から議論を始め、17日の検討会で対策のとりまとめ案が示された。だが、精神障害者の家族で作る全国精神保健福祉会連合会の理事が「厚労省の調査では『病院に住みたくない』という(当事者の)人が圧倒的に多かった。本人が嫌がっていることを尊重すべきだ」と述べるなど、この日も反対意見が出た。

日本弁護士連合会は今月、「地域から分離して生活させる政策を存続させるもの」「収容型医療の名前を変えた形だけの地域移行になるおそれがある」との会長声明を出した。障害者団体も「病床の看板のかけかえに過ぎない」「障害者を特定の施設に収容し続けることは人権侵害」などと反発する。反発の背景には、かつて国が推進してきた入院中心の施策への不信感がある。

検討会は7月に地域移行策の最終とりまとめをする方針。ここに居住施設への転換案が盛り込まれれば、国として制度化を検討することになる。(中村靖三郎)

 

「障害者権利条約に違反」精神科病棟転換で反対集会

共同通信 2014年6月26日

 

厚生労働省が精神科病院の長期入院患者の退院を促そうと、病棟の居住施設への転換を認める方針を示したことに対し、障害者団体などが26日、都内で反対集会を開き、「地域社会で生活する権利を認めた障害者権利条約に反する」と訴えた。

厚労省は7月1日に開く有識者検討会で、長期入院患者の地域生活への移行に向けた報告書をまとめる考えで、集会の主催者は病棟転換構想の撤回を求めるアピール文を厚労省に提出した。

集会には約3千人(主催者発表)が参加。呼び掛け人の一人、杏林大保健学部の長谷川利夫(はせがわ・としお)教授は「厚労省の検討会委員25人のうち、精神障害の当事者は2人だけだ」と述べ、当事者不在で議論が進んでいると批判した。数十年入院していた人たちも「転換施設は病院経営のためで、障害者のためのものではない」と訴えた。

 

精神病床解消策:「隔離続く」 居住施設へ転換、問題視--障害者団体

毎日新聞 2014年06月27日 東京朝刊

http://mainichi.jp/shimen/news/20140627ddm012040123000c.html

「STOP」のチラシを掲げて、病棟転換施設への反対をアピールする参加者=東京都千代田区の日比谷公園で26日

精神科の病床と長期入院患者を解消するため、空いた病床を居住施設に転換する構想が厚生労働省の検討会で議論されている。施設の有効活用などを理由に病院経営者らが推進しており、7月1日に報告書がまとまる見通しだ。これに対し、障害者団体などは「病院敷地内での『隔離』が続くことに変わりはない」と反発。26日には反対集会を東京都内で開き、構想の検討中止を厚労省に求める緊急アピールを採択した。

日本には精神病床が約34万床あり、約32万人が入院。1年以上の長期入院は約20万人に上る。経済協力開発機構(OECD)の統計によると、加盟国の中で病床数は最も多く、入院期間も突出して長い。欧米が公立病院を中心に地域生活を支援する医療を展開してきたのに対し、日本では戦後、政府が入院処遇を重視し、民間の精神科病院の建設を進めてきたためだが「長期にわたって劣悪な入院生活を強いられている」 との批判も根強い。

厚労省は2004年、入院中心から地域生活支援へと転換する改革プランを発表。退院を促進して10年間で7万床の削減を目指したが、病床削減はほとんど進んでいない。

同省は今年3月、改めて長期入院患者の地域移行を推進する検討会を設置。その中で、長期入院患者の退院を進め、空いた病床をグループホームなどの居住施設として活用するプランが浮上した。

病床削減は収入減に直結するうえ、病気への偏見からグループホームなどの建設も困難なことから、民間の精神科病院は「病棟を改修して退院後の受け皿として有効活用するのが合理的」と転換推進を求める。厚労省も転換を容認する報告書案を検討会に提示した。

これに対し、反対派が26日に東京・日比谷公園で開いた集会には約3200人が参加。「病棟を改修しても、病院の敷地では『地域』とは言えず、障害者の人権がないがしろにされている」などの批判が相次いだ。【江刺正嘉】

 

精神障害者の病棟転換住居反対 東京で集会

神奈川新聞2014.06.27 03:00:00

http://www.kanaloco.jp/article/73626/cms_id/88370

 

精神科病院の長期入院、社会的入院の解消策として、病棟の一部をグループホームなど居住系施設に転換する構想が厚生労働省の検討会で議論されている問題で、構想に反対する緊急集会が26日、東京の日比谷野外音楽堂で開かれた。

全国から約3200人が参加し、元入院患者、支援団体の関係者らが報告やリレートークを行い、「病棟転換は病院経営のための看板の掛け替え」などと批判した。

8回の入院を経験したという男性は「プライバシーもなく、自由も権利もない入院生活で、人間らしい感情が鈍麻してしまう」と語り、「地域で暮らせるよう地域福祉に予算を充ててほしい」と訴えた。

呼び掛け人の一人、池原毅和弁護士は1月に批准された障害者権利条約との関係を指摘し、「病院の敷地内の生活施設では、条約が定める地域社会への包容(インクルージョン)にならない。排除、分離、差別を促進させる。アンシャンレジーム(旧体制)を残しては政策転換はできない」と批判した。

県内から参加した県精神障害者家族会連合会(じんかれん)の堤年春理事長は会場で「国は地域の受け皿づくりに予算を付けず放置してきた。住宅、福祉サービスの整備にこそ予算を配分すべき」と話した。

集会では「病棟転換型居住系施設は、人権をないがしろにする、あってはならない施設。構想の検討をやめ、社会資源や地域サービス構築を急ぐことを求める」とする緊急アピールを採択、厚労省に提出した。

厚労省の有識者検討会「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」は7月1日に最終会合を行う。

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