介護保障 市・町の制度

神戸市グループホーム問題について

神戸市におけるグループホーム問題に、新たな動きがあったのでご報告します。

■神戸市グループホーム問題とはなにか――グループホームの新設条件が厳しくなる?

まずは、そもそも神戸市のグループホーム問題とは何かを簡単にまとめてみます。

数年前に高齢者グループホームの火事があり、亡くなられた方が出たことをうけ、グループホームの建築基準についての議論が起こりました。建築基準法上はグループホームというくくりがないため、どのような基準を当てはめるか?という議論の中で、「グループホームは住宅ではなく寄宿舎扱いにする」という国の見解が出ました。

ただ、高齢者グループホームのように1020人の入居者ならともかく、神戸市も含め多くの障害者グループホームは35人の小規模なもので、とうてい「寄宿舎」という概念とは相容れません。35人で住んでいて、その中に介護を必要とする人を含む家族が一つ屋根の下で暮らすという場合はたくさんありますが、その家が「寄宿舎」ではないのと同様に、小規模の障害者グループホームも寄宿舎ではないのです。

しかし、この国の見解に基づき、各自治体は新設のグループホームに対し「寄宿舎」基準を当てはめる規制を始め、そうすると「廊下幅1.5メートル」「天井まで防火壁」など様々な条件が厳しくなり、今までのように一般住宅を借りてそこでグループホームを開設するということが出来なくなってしまいました。一般住宅やマンションの、廊下幅を広げる改築など構造上不可能だからです。

そのため、新たにグループホームを作るには寄宿舎基準に合わせて新築の家を建てる、というとてもお金がかかる方法しかなく、それほど資金のない団体は諦めざるを得ない状況になっています。障問連にも「何件もの家主や地域住民と話し合ってようやく見つけた物件が、寄宿舎扱いの基準のせいで使えなくなった」という相談が複数寄せられるようになりました。

その一方、福島や鳥取のような他都市では、小規模なグループホームの現状もしっかり理解し、ある一定条件ならグループホームも「住宅扱い」するという通知を出している自治体もあります。また兵庫県内でも通知は出さないまでも、小規模グループホームには柔軟な対応をしている自治体はありますが、神戸市だけは厳格な「寄宿舎扱い」を一歩も譲りませんでした。

■神戸市の動き

そのような中で、新たな動きがありました。まずは神戸市の動きから。

今年33日から41日まで神戸市で「神戸市建築物の安全性の確保等に関する条例の一部改正()」のパブリックコメントを募集しており、その中で、「一定の防火避難規定を附加し、その規定を充たす場合には、階段および踊り場並びに廊下幅に寄宿舎基準を当てはめない」という緩和案が示されています。「規定を充たす」の規定が詳しくわからないこともあり、障問連として35日に加盟団体(えんぴつの家、シティライト等)とともに建築安全課に話を聞きに行きました。

その話の中ではっきりしたことは、今回の神戸市の条例改正案は福島や鳥取と違い、あくまで「寄宿舎扱い」は変えていないということです。寄宿舎扱いは守りながら、基準を少し緩和するという案なのです。

そのため、もしこの条例改正案が通っても、防火壁などの基準は寄宿舎扱いのままになります。一般住宅を転用して新設グループホームにする申請した場合、階段幅の要件が緩和されることによりその一般住宅が使えるようになるかもしれない一方で、防火壁改修の多額な費用は捻出しなくてはなりません。

■国の動き

そして、これとは別に国でも新たな動きがありました。

36日に行われた参議院予算委員会で、長沢広明議員からグループホームについて取り上げ、以下のような質疑がありました。

○長沢広明君:厚生労働省としても、グループホームを増やすためのそういう予算措置をいろいろ考えてくださっていると、進めてくださっているということです。

ただ、例えば認知症高齢者向けグループホーム等の高齢者施設に関しては、今後、防火用にスプリンクラーの設置というのが義務付けられることになりました。全施設にスプリンクラーが設置をされます。スプリンクラーが設置されるということで、防火上のある意味大事な対応はそれで取れるようになるわけです。国土交通大臣、是非これはお願いなんですけれども、住宅を転用してグループホームにするというときに、建築基準法上、寄宿舎という規制というか、そういうものを受けてしまう。しかし、スプリンクラーを設置するようになれば、その安全性を確保した上で防火上の規制を合理化することはできないか、そうすればグループホームが造りやすくなる。ここの壁をひとつ突破することはできないのか。ここを是非大臣に御決断お願いしたいと思っておりますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(太田昭宏君):おっしゃるとおりで、急増しているグループホーム、これを厚生労働省と消防庁とそして国土交通省、また私たちにとりましては建築基準法ということで、がしっと、それぞればらばらにやるというのではなくて、よく実態に即して、安全が確保されるということが一番大事ですから、そういう点では、安全ということをどう確保するかということを見て、そしてこの建築基準法についても何らかの緩和をしていくということが極めて重要だというふうに思います。今御指摘がありましたように、来年四月から原則としてスプリンクラーを設置することを義務付けたということを受けて、このスプリンクラー設備が設けられた場合、あるいは規模が小さくてそのままぱっと屋外に逃げることができるというような場合、この二点、特に二点でありますけれども、この場合には間仕切り壁の防火対策の規制を緩和するということを本格的に検討したいというふうに思います。

この質疑から、まず、国レベルでも「障害者グループホームの寄宿舎扱い」については問題視されているということ。そして大臣の「スプリンクラーを設置した場合、小規模グループホームの場合は耐火壁等の規制緩和する」という発言から、国レベルでも寄宿舎扱いをどのような形でかは緩和していく方向性だとわかります。

■神戸市の改正案を注視していきましょう

一方、神戸市に戻ると、今回の神戸市建築安全条例改正案が通ることで、神戸市にどんどん障害者グループホームが新設されるのかどうかには障問連加盟団体からも疑問視する声が上がっています。

グループホームが出来てきた歴史的な経緯をみても実際の運営からみても、小規模の障害者グループホームは寄宿舎ではなく、「住宅」です。その観点からすると神戸市の改正案は、福島や鳥取と比べて不充分な納得し難いものです。他の自治体がしていることが神戸市には出来ないという理由がわかりません。そこのところは変わらず強く訴え続けると共に、もし今回の神戸市の建築安全条例改正案が通ったなら、その運用に充分に注意を払う必要があります。

地域移行の一つの選択肢として、地域に密着した小規模グループホームを増やしていくことが目的であり、そのためには、改正条例の運用において、緩和の適用条件を厳しくチェックされることで結局グループホームの新設につながらない=グループホームが増えない、では全く意味がありません。また改築工事に必要な多額な費用に対しての補助金についても、神戸市に確認をとっていく必要もあります。

加盟団体からの強い要請を受け、この間何度も神戸市との話し合いを継続してきました。同時に兵庫県にも県内各自治体の状況調査を依頼しつつ県の見解を確認すると、建築基準は遵守すべきだがグループホーム、特に障害者グループホームは小規模でありその特性から柔軟運用が望まれるとの見解を引き出し、それを持って再度神戸市にも強く柔軟運用を求めてきました。今回の改正案は、このような私達の要望の一定の成果とも評価できますが、極めて不十分です。今後の神戸市、そして国のグループホームに対する動きに注視しながら、また報告していけたらと思います。

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