生きる場/作業所

神戸市東部問題

この間も報告してきた、神戸市東部に重度障害者が通所できる生活介護事業所が不足し新規受け入れが困難で、卒業予定者が大変不安な状態に置かれている問題について、加盟団体のNPO法人飛行船の取り組みを中心に報告します。

 

◎マスコミへの働きかけ

同問題は行政当局も認知しながら具体的な対策が講じられていません。そのため、社会的にもアピールする必要があり、飛行船の宗保さんがマスコミ各社に働きかけ、別掲のように取り上げられました。

 

◎神戸市の二枚舌

飛行船からの問題提起を受け、この数年間この問題については毎年オールラウンド交渉で要望してきました。しかし神戸市は県内でも先駆けて小規模作業所の新規開設は認めず、入所施設が多く存在する神戸市北部・西部地域の社会資源に依存することにより全体として賄われるという姿勢、真に「地域生活」を重視してこなかった事が根本的な問題なのです。この間も、施策要望として障問連が担い、飛行船として新規事業場の開設のため融資等について神戸市との協議が行われてきました。しかし、担当課長が4月に交代し、神戸市は折衝を求める障問連に対しては「飛行船と話し合っています」と話し合いを拒否、しかし飛行船との協議は具体的には何ら進まず、まさに二枚舌の対応に終始してきました。そこで打開策として、飛行船として神戸市の「出前トーク」という施策を活用しての話し合いが6/25、六甲道勤労市民センターにて開催されました。

 

◎6/25神戸市「出前トーク」~切実な親の声~

当日、支援者数名と約20数名の青陽特別支援学校の保護者が集まり開催されました。神戸市からは自立支援課の境田課長と塩見係長が出席。貴重な2時間の中、「必要なし」との事前の申し入れにもかかわらず、40分もかけて自立支援法について課長が説明しました。自立支援法の理念である「自己決定、希望により選べるサービス」と課長は説明するが、下記のように実態は大きく異なっている。神戸市として何度も「厳しい事は承知している」と述べながら、提示された施策は・・・

・新規受け入れ数は退所する人もおり動く。神戸市知的障害者施設連盟とも協議し新規受け入れについて協議している。

・今年1月から話しを進め今日もお話しし、6/29にも青陽特別支援学校で進路説明会も実施する。

・スペースの問題、職員確保の問題もあるが、定員を越えて受け入れても良いので、新規受け入れ枠がないわけではない。新規に事業所を開設したいという話しも聞く。

・高齢者施設での受け入れも進めている。知的障害者に関する研修を実施していただき、それに対して予算措置も検討している。ただ高齢者施設も灘区・東灘区では定員が一杯で難しいが何とかお願いしている。

→全体数が決定的に不足しているにも関わらず小手先の取り組みしかしていない。また事業者の立場として、「新規受け入れには職員確保も必要で困難ではないか」との質問に対して、「報酬でペイできるはず」といとも簡単に回答する。また「6~7月に行われる実習で障害者の姿を見て事業者も考える」と述べられたが、どちらが選ぶ立場にあるのか逆転し、重度な者は拒否されかねない回答であった。神戸市からの説明を終え、次々と保護者から訴えられた。

 

【保護者からの訴え】

「高三の子どもがいるが、アチコチに見学に行ったが、募集は一人と言われた。子どもは一時間も一人でおいておけない。歩くのにも手をつないでおかないといけない。ここの事業所に三日、こちらの事業所に二日、二ヶ所になると本人はパニックになる。母子家庭で仕事の関係もあり生活がやっていけなくなる。『希望』と言われても選べない。逆に選ばれる状態。地元の東灘区を希望しても兵庫区に行ってくれと言われる。送迎にヘルパーは使えないし介護の時間数も少ないし、切実な問題だという事を受け止め、先延ばしないで欲しい」

「○○作業所に行ったが、受け入れ可能はゼロと言われた。高三だが自力で外には行けない。付き添いも必要。親は震える思いで生活している。来年度の卒業生は詰め込みで行けたとしても、今中学生の保護者は将来に不安しか持てない」

「見学に行くと週一日なら可能と言われたが、後の週4日は在宅になるんですか? 週一日でも受け入れ先ができたと言われるんですか」

「ずっと聞いていたが認識不足でないか。高齢者施設と言われるが、学校でもひっかいたり日常的に事件が起きている。お年寄りに何かしないか心配。本当の現実を知って欲しい。24時間テレビのような軽い子ばかりではない。長期、短期でできることを検討して欲しい」

 

◎今後に向けて~飛行船への支援のお願い~

「出前トークは神戸市の施策について説明する場なので回答はできません」としたが、保護者の切実な声に実質話し合いの場となった。神戸市は「平成25年度予算では考えたい」と言うが、保護者からは今年度での検討を迫った。「お金がもし必要なら出しても良いが」と言いつつ、飛行船との個別協議は進んでいない。どう予算枠を設けるのか、具体的には難しい面もあろうが、基本的に実態に対しての認識の欠如が明らかとなった。また、神戸市の意向として、今後「個別に相談したい」と言うが、一人ひとりバラバラにされ我慢・諦めないよう、保護者の集まりは何とか継続していきたい。また、以下に掲載するよう飛行船からの緊急の支援の要請が届けられています。在宅を強いられ親子が追い込まれないよう、飛行船として大きな負担と犠牲を払ってでも新規受け入れのための事業場の拡大を準備しています。新たな場の確保のための敷金、新規職員の雇用等、約200万円もの資金が必要です。加盟団体に置かれましても、支援のご協力をお願いします。

 

 

【飛行船への支援カンパ先】

郵便振替口座  00930-8-281960    特定非営利活動法人 飛行船

 

行政による対応だけでは解決が困難なため、社会的に幅広く支援を求めるためにも、今後ともマスコミには働きかけていきたいと思います。2月神戸市議会でも取り上げられており、障問連として、市会議員への周知、支援要請にも取り組みます。

 

 

 

障害者問題を考える兵庫県連絡会議 様

緊急/支援の要請

近年、オールラウンド交渉でも問題にしてきた「神戸市東部問題」は状況が切迫してきています。

来 春のこの地域における養護学校等卒業予定者は私たちが把握する限りでも青陽東東養護学校から12名、兵庫県立聴覚障害特別支援学校から1名、計13名にの ぼります。一方、この地域にある神戸市立の生活介護事業所5か所では、実質的には来春新規に受け入れられる状態ではありません。

このままでは多数の卒業生が、卒業と同時に在宅化することは必至です。

私 たち飛行船は障害の程度や種別に関わらず、地域で生きていくための場でありたいと願ってきています。神戸市東部の厳しい状況下で飛行船を志望する卒業生に ついては私たちの介護力の範囲内でできる限り受け入れていきたいと考えています。しかし、現在の場では既に手狭になりつつあり、私たち程度の規模の事業所 にとっては大人数を受け入れるためには、場をなんらかの形で拡張しなければなりません。本日(5/16)も神戸市側とは話し合いましたが、神戸市側の結論 としては、平成24年度予算では支援する術がない、というに尽きます。

できるものなら今より広い場所に移ってより多くの人を受け入れたいのですが、そのためには多額の費用を要します。従って、現状と同程度の物件を賃借し、残念ながら2ヶ所に分かれて活動することが現実的かと考えています。

それにしても手持ち資金だけでは困難です。

新事業所確保のための敷金、改造備品等の費用、新規職員3人雇用など、約200万円が不足しています

誠に厚かましいお願いで恐縮ですが、障害者問題を考える兵庫県連絡会議様から物心両面でのご援助を賜れればこれに適う喜びはありません。よろしくご配慮くださいますようお願い申し上げます。

2012.5.16

特定非営利活動法人 飛行船

理事長 宗保 榮

(NPO法人 飛行船 の紹介)

住所:神戸市灘区下河原通4-2-15中井ビル1F    TEL:078-802-2812   FAX:078-855-8024

平成18年3月  小規模作業所としてスタート

平成21年4月  生活介護事業に移行

現在、通所利用者11人

「飛行船の願い」

生活介護事業所「飛行船」は、受け入れの許す限り、障害の軽重も種別も問わずに受け入れていきたいと考えています。生まれ育った「地域」で、どんな障害者も生活を続けるための拠点でありたい、それが私たちの願いです。

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