生きる場/作業所

2012年6月 毎日新聞記事「神戸市東部、新規受け入れ困難」

毎日新聞 2012年06月21日 神戸版

生活介護施設 神戸市東部、新規受け入れ困難

「新設するか、拡張を」 自助努力も「綱渡り状態」

 

神戸市東灘区、灘区、中央区の東部地域で、重度の知的・身体障害を持つ人たちが通う生活介護施設の半数以上が定員に達し、新たな受け入れが難しい状態が続いている。土地や賃料が安価な北区や西区の郊外に施設が偏っていることが一因だが、施設を指導する立場の神戸市に有効な手立てはなく、施設側の自助努力に任されている。【内橋寿明】

 

神戸市によると、障害者自立支援法が定める障害程度区分3以上の重度障害者を対象に、生活介護サービスを提供する通所施設は、市内9区に58施設ある(11年4月現在)。北区が17施設と最も多く、東部地域の3区は計10施設にとどまる。

この10施設に毎日新聞が問い合わせたところ、6施設で定員に達しており、うち4施設はすでに定員を超えていた。定員に達していない4施設も若干名しか受け入れる余地はない。1人あたりのスペースが狭くなると、利用者が精神的に追い詰められたり、利用者同士のトラブルにつながる恐れがあるという。

東部地域で来春からの通所希望者として市が把握しているのは、青陽東養護学校(灘区)の3年生12人。他の養護学校の生徒や、在宅で介護を受けている人が新たに希望すれば、さらに数人増える可能性があり、現時点で通所先のめどは立っていない。

市は06年の自立支援法施行当初から、東部地域の通所施設が少ないことを認識。施設を作る意向がある事業者には、この地域での開設を勧めるなどしてきたが、現時点で新設の予定はない。既存施設の拡充には補助金が下りず、拡充をためらうという事情もある。

市自立支援課は「施設に登録している人全員が毎日来るわけではないので、各施設あと1人ずつは受け入れ可能」としている。同課の境田多美枝課長が今月下旬、青陽東養護学校の保護者らと面会し、現状を説明する。

ある施設の代表者は「施設を新設するか、拡張するかして受け入れ枠を拡大しない限り、根本的な解決にならない。希望者全員を受け入れられるか、毎年が綱渡り状態」と訴えている。

 

◇「運営ぎりぎり、政策で支援して」

神戸市灘区の生活介護施設「飛行船」。宗保栄さん(62)が06年春、重度の知的・身体障害を持つ長男(24)の養護学校卒業を機に、長男の同級生の保護者らとともに設立した。6人が通う作業所としてスタートし、現在は利用者11人に対し、職員9人が常駐する施設となっている。

定員まで若干の余裕はあるが、東部地域での受け入れが難しい現状を知り、施設の拡充を検討中。現在賃借している部屋とは別に、新たに1部屋を借りる予定で、5、6人の受け入れが可能になる。

部屋の敷金、家具や家電などの初期費用は250万円に上ると見積もっているが、既存施設の拡充に補助金は下りず、約100万円の自腹を切るつもりだ。通所者が増えたからといって、それに見合う額の補助金が受けられるとは限らず、月収19万円(税込み)の宗保さんにとっては苦しい選択となる。

「障害者の保護者は精神的に追い詰められている人もおり、預ける場所を何とか確保したい」と宗保さん。「各施設ともぎりぎりの運営。政策で支援してほしい」と訴える。【内橋寿明】

 

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◇各区の生活介護施設(通所型)

北区  17

西区  11

須磨区  6

長田区  5

兵庫区  5

灘区   5

垂水区  4

東灘区  3

中央区  2

(11年4月現在)

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