グループホーム

【報告】グループホームの再編に反対する緊急行動ネット 厚労省に署名提出

障問連事務局

◆厚労省がスケジュールを変更~次期国会での法改正は見送り???

11月29日開催の社会保障審議会障害者部会では、今後のスケジュールが厚労省から提案された。当初この12月にも報告とりまとめが予定されていた。しかし「来年5月以降に取りまとめる」と期限を設けないスケジュールが示されました。

ここまで読めば再編に対する下記のような反対の声を踏まえての見直しとも読めるが、スケジュール案ではさらに「現時点での案であり変更の可能性あり」とされ、今後の推移により、状況を見て再編を進める意思は変わっていないのだろう。

 

◆変わらない再編の意思

同日の部会資料ではGHの「現状・課題」と「検討の方向性」はこれまで通りに書かれており、基本的な考え方を変更していないが、主に11月5日部会で出された反対意見を考慮し・・・

〇こうした検討を進めるに当たっては」との項目を設け、以下に留意すべきとされている。

①  障害者のライフステージを見据えた支援や障害者の地域生活支援施策の全体像が見えないため不安。

②   一人暮らし等に向けた支援はピアサポーターの配置が有効

③  地方では、まとまったニーズがなく整備が進まないのではないか

④  一人暮らし等への移行により空室が生じるため安定的な事業運営が難しい

⑤  報酬上の実績評価については、障害者の状態像等を踏まえた一人暮らし等に向けた支援の困難度を勘案して評価すべき

以上について「課題・指摘があったことを踏まえて、丁寧に検討していく必要がある」としている。

しかし「○利用対象者や支援内容等を検討する場合の留意点」として以下、報告されている。

・利用対象者・・・年齢や障害種別、障害支援区分等の一律の基準でなく本人希望により選択できる制度。

・希望する者には、これまで通り、継続的な支援を行うGHを利用できること。

・相談支援専門員やGHのサービス管理責任者が本人の今後の生活の希望を把握することが重要。

・新たなGHのサービス類型は、事業者が申請により選択できる仕組みとすべきである。

・・・等が挙げられ、その他、「1人暮らし等の居宅生活への移行のための支援のため」、どのような支援が必要なのか、人員の体制、専門職の配置、1人暮らしができた場合の適切な評価などが示されている。

このように「丁寧な議論」は必要としつつ、厚労省がこの間検討してきたGHの再編の方針、考え方は基本的には変更されていません。「グループホームの再編に反対する緊急行動ネットワーク」が求めるよう、再編そのものを一旦、撤回するべきです。今後とも注視したいと思います。

 

◆11月23日に署名提出される

11月23日時点で「オンライン署名36,737人」「自筆署名10,781筆」が集まり、厚労省に提出され話し合いも行われたようです。兵庫県からも兵庫ピープルファーストのメンバーと支援者が参加されました。 そしてその前日には同緊急ネットを中心に複数の団体の賛同により、以下の要望書が提出されました。

 

 

 

2021年11月22日

厚生労働大臣  後藤 茂之 殿

「障害者のグループホームならびに居住支援のあり方」に関する緊急要望

・貴職におかれましては、障害福祉行政、地域支援の推進に向け日々ご尽力のことと存じます。

さて、今年度、社会保障審議会障害者部会において「総合支援法施行後3年を目途とした見直し検討」が進められており、グループホームと居住支援のあり方についても検討が進められている次第です。

・その検討に先立ち、既に今年3月に「グループホーム、地域生活支援のあり方事業報告書」が、グループホーム関係者を抜きにして、学識経験者と厚労省、委託業者だけで作成、発出されていたことに私達は大変驚きました。この報告書では、中軽度者のグループホームを有期限の通過型とし、それ以外の類型を一般型にまとめて介護給付とし、また個別ヘルパー利用も制限するかのように書かれており、そのあまりに乱暴な内容に関係者は衝撃を受けました。

・そして、11月5日の社保審障害者部会では「本人が希望する一人暮らし等に向けた支援を目的とする新たな類型(=通過型)を設け、事業者が申請により選択できる仕組みとする。対象者を年齢や障害種別、区分等の一律の基準により決めるのではなく、本人が選択できる仕組みとする」との方向性が示されました。しかし、これは結局、グループホームを通過型とそれ以外とに分離していくことにほかなりません。

・グループホームはあくまでも「住まい」であり、「有期限の訓練施設」とすることはなじみません。また「どこで誰と生活するかの選択」は、どのグループホームにおいても保障されるべきであり、今後、通過型以外のホームが「終の棲家」とみなされていくことも危惧します。どのホームにおいても希望すれば他の暮らしに円滑に移行できるよう、入退居支援や退居後の支援を抜本的に見直すべきです。また、希望する一人暮らしを実現していくために、所得や住宅の保障、日常生活を支える介護や支援を担う社会資源の現状もきちんと調査し、課題を整理していく中でその拡充策を検討して下さい。

・更には今回の再編は、この間、実績・経験の乏しい営利法人の参入が急速に増えていることが背景にあり、グループホーム全体の総量抑制が目的とされているようにも見えますが、事業指定のあり方などその大元から対応策を検討すべきと考えます。今後の制度の変更にあたっては、グループホーム入居者・関係者の意見をていねいに聞いて検討すべきであり、グループホームの理念や歴史を歪めるような無理な再編を進めるべきではないと考えます。

・以上の認識に立ち、以下要望いたします。

1. 新たなグループホームの類型(いわゆる通過型)を設けず、どのホームでも希望する暮らしに移行できるよう支援策を充実して下さい。

グループホームで落ち着いて「自分の暮らし」をつくることによって、次の新たな暮らしにつなげていくことができます。あえて通過型を設けてグループホームを「訓練の場」とするのではなく、その財源を使って、どのグループホームでも退居希望が出てきた時に一人暮らし等に円滑に移行できるよう、相談支援との連携も含め、個々の希望に対してしっかりと支援、対応できる制度や仕組みに見直して下さい。

2.グループホームでの個別単位でのヘルパー利用を、現在の仕組み、水準のまま恒久化して下さい。

個別ヘルパー利用について「例外的な経過措置であり責任所在、指揮系統、事故対応時に問題がある」として一方的に制限しないで下さい。ヘルパー利用はとりわけ個別支援を要する障害者にとって暮らしの安全と自由を担保する生命線です。ホームからの退居支援でもヘルパー利用の経験は必須であり、外からの目を入れる意味でも重要です。重度化・高齢化への対応はグループホームの支援体制の充実だけで対応できるものではなく、ヘルパー利用は必ず現行の仕組み、水準のまま恒久化して下さい。

3.グループホームや地域生活支援のあり方について拙速に検討を進めるのではなく、グループホーム入居者・関係者の声をしっかりと聞きながら検討する場を設け、ていねいに検討を進めて下さい。

この間、営利法人の参入が増えていることを理由にして、グループホームの類型の再編や総量規制をかけるなど拙速に結論を出すのではなく、事業指定基準の見直し、自治体でのチェックのあり方も含め、グループホームの今後のあり方について、グループホームの当事者・関係者等、現場の声をしっかりと聞きながら、ていねいに検討を進めて下さい。

 

<要望団体>

・一般財団法人 全日本ろうあ連盟

・きょうされん

・グループホームの再編に反対する緊急行動ネットワーク

・障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会

・障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議(障大連)

・全国ろう重複障害者施設連絡協議会

・特定非営利活動法人 全国精神障害者地域生活支援協議会

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