【神戸市オールラウンド交渉】 2021年度 精神障害者問題に関する要望書
2021年10月22日
神戸市長
久元 喜造 様
神戸市教育委員会
長田 淳 様
障害者問題を考える兵庫県連絡会議
代表 福永年久
2021年度 精神障害者問題に関する要望書
【1.教育】
(1) 【精神疾患教育】
2022年より始まる精神疾患教育について、直前に迫ってきました。神戸市教育委員会としての今年度の取り組み状況や周知内容、情報交換された先進的な取り組み内容について回答をお願いします。
(2) 【小学校・中学校への当事者講師】
小学校・中学校において、精神障害当事者講師を招いた授業や研修が行われることは大変重要です。2020年度の取り組み実績をご報告していただくとともに、当事者講師の招聘を一層推進して下さい。
【2.交通】
① 【運賃割引】
精神障害者の交通運賃については、身体障害者、知的障害者との格差が解消されていません。神戸市内の状況は、「福祉乗車証」が発行される他、神戸-関空ベイシャトルで運賃割引が実施されていますが、特に鉄道事業者が実施するよう、神戸市として各交通事業者に働きかけてください。
② 【介護者付割引】
精神保健福祉手帳2級や3級の障害者も、介護者がいなければ外出が困難な者は、移動支援等を利用して介護者と共に移動しています。神戸市においては、知的障害では等級に関わらず介護者付割引が認められ、介護者付福祉乗車証が交付されているにも関わらず、単独での外出が困難なため移動支援を利用する2級・3級の精神障害者には介護者付割引を認めていません。福祉乗車証については、県バス協会からの要望を受け有識者会議が開催された状況は存じていますが、精神障害者の移動権の保障が他障害に比べ格差がなくならない深刻な状況を踏まえ、介護者付割引の検討を行うよう要望します。
【3.神出病院事件について】
(1)【神出病院事件に係る課題】
神出病院での患者虐待暴行事件を踏まえ、障害者虐待防止法の通報義務が精神科病院は適用外とされていない事に対して、神戸市議会が全会一致で国に対し精神科病院に対しても同法の通報義務を適用する旨の意見書が採択されました。またこれだけの事件を起こしながら外部者も参画した第三者委員会の設置を神出病院は設置せず、強い批判を受けようやく8月内に設置すると報じられました。以下の質問に回答ください。
①同病院入院者に対して退院、転院等の希望について、どのように実施されましたか。誰が聞き取
り、入院者本人の自由な意思表明が確保された環境で行われたのか、希望を踏まえて転院・退院 された人数も含め、回答ください。
②今回の神出病院の暴行虐待事件と類似の事件が今後発生した場合、少なくとも同じ病棟の入院者を無条件で転院できるようなシステムを構築して下さい。
③神出病院で第三者委員会が8月内に設置されますが、同委員会の今後の取組、背景も含めた事件の検証、被害の回復、再発防止等に対する、神戸市として認識する課題、今後の神戸市としての取組について回答ください。
(2)【精神科特例について】
神出病院での患者に対する暴行虐待事件は改めて精神科病院の根深い問題を表しました。また身体拘束が年々増加していますが、これらの背景の一つとして他病院より少ない医師、看護師でも認可される精神科特例があります。2013年の第183回通常国会で「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」では、政府に対し「本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである」とされ、そこには「 精神障害のある人の保健・医療・福祉施策は、他の者との平等を基礎とする障害者の権利に関する条約の理念に基づきこれを具現化する方向で講ぜられること」とされ、そして「精神科医療機関の施設基準や、精神病床における人員配置基準等については、精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針の内容を踏まえ、一般医療との整合性を図り、精神障害者が適切な医療を受けられるよう、各規定の見直しを検討すること。なお、指針の策定に当たっては、患者、家族等の意見を反映すること」とされています。医療法に定められる精神科特例を段階的な廃止の方向で見直すよう、神戸市として国に要望してください。
(3)【精神病院での感染拡大】
神戸市内の精神科病院でも新型コロナウイルス感染によるクラスターが発生しています。長期入院の方も多くおられ、精神科特例による他一般病院に比べ少ない医師・看護師数の医療環境、また閉鎖的な環境で深刻な人権侵害が起きているのではないかと危惧します。それを踏まえ、精神科病院での新型コロナウイルス感染拡大の実態と課題について、以下の点についてお答え下さい。
① 神戸市内の精神科病院での感染者数、死亡者数、転院した人数について報告ください。
② 全国的にも精神科病院の入院者が感染しても転院できず十分な治療が受けられず多くの方が亡くなったと日本精神病院協会も記者発表し「由々しき事態」と報じられています。このような精神科病院でのクラスター発生と対応に対して、神戸市としてどのように認識されていますか回答いただくとともに、感染した場合など専門的治療が必要な場合、速やかに専門医のいる病院に転院できるような通常からのネットワークの構築する施策をを講じ、社会的に示してください。
【4.精神科病院での身体拘束、精神医療審査会】
(1)【 精神科病院での身体拘束】
神戸市内の精神科病院で、2020年度の「身体拘束」を行った精神科病院数と身体拘束の件数及び身体拘束の平均の期間、身体拘束した理由について回答してください。
(2)【神戸市精神医療審査会について】
神戸市の精神医療審査会の2020年度の開催回数と審査件数、また、そのうち退院請求、処遇改善請求それぞれの件数について回答してください。また退院請求してその後退院になった件数、また処遇改善請求して、その後処遇が改善された件数も併せて回答してください。
【5.公営住宅の課題】
公営住宅に関し、以下の点について回答してください。
(1)大阪市営住宅では障害者に対して自治会役員の強要、できないと言うと障害を公表せよと迫られ自死に追い込まれた痛ましい事件が発生しました。近隣住民の精神障害に対する無理解や偏見、その結果生じる差別に対する様々な不安や孤立を精神障害のある住民は感じています。兵庫県営住宅では「指定管理者に障害者対応等に長けた総合相談員等を配備し、生活支援センターや病院等と連携した取り組み」が行われています。神戸市として、このような課題に対しどのように取り組まれるのか回答ください。また神戸市として管理会社に対し、精神障害者問題や障害者差別解消法に基づく合理的配慮等に関してきちんと実施するよう指導して下さい。
(2)2021年3月、神戸市は「第三次市営住宅マネジメント計画」が発表されました。「将来の過度な財政負担」を理由に、10年後の2030年度末までに、市営住宅を約7000戸も削減されます。しかし諸外国に比べ日本は全住居のうち公営住宅が占める割合は低く、居住福祉の発想が貧困です。精神障害者も含め車いす障害者も公営住宅に応募してもなかなか当選しません。新型コロナウィルス感染拡大による住宅困窮問題や災害時への備えなど、公営住宅の存在は重要であり、精神障害者の地域移行やグループホームへの活用など、障害者の地域生活にとっても重要です。同計画において障害者のこのような課題をどのように検討され改定されたのか回答いただくとともに、不十分であれば計画改定も含め検討して下さい。
【6.精神障害者の介護保障等、地域生活】
① 精神障害者に特化した居宅介護の2020年度の利用者数・利用時間を回答して下さい。
② 精神障害者に特化した移動支援の2020年度の利用者数と利用時間を回答して下さい。
③ 精神障害者のグループホームが何ヶ所あり、何人利用しているのか。2020年度実績について回答して下さい。
【7.重度障害者医療費助成制度】
就労B型事業所に通所しグループホームで生活する知的障害者の経済状況は、収入は障害基礎年金と工賃、支出はグループホーム利用料と作業所での昼食費など主たる支出となり、その他の被服費、携帯電話料金、交通費、休日の昼食代や娯楽費等の費用が必要です。知的障害者、精神障害者の年金は2級の方が多く、現実的に工賃は平均1万5000円ぐらいです。自由に使える金額が少ない中で、特に持病のある障害者が頻回に通院すると大きな医療費負担が強いられます。一般就労し一定の所得がある場合や工賃が高額であれば賄えます。実態として所得状況は反映されず一律に手帳等級の違いだけで、同じ作業所で働く障害者となぜこのような格差があるのか当事者は非常につらい思いをしています。このようなあり方は不合理であり平等であるべきです。一般の健康保険制度の医療費負担額は所得が反映されています。重度障害者医療費助成制度にも所得基準を設け、精神障害者2級や療育手帳B1B2の人にも対象拡大して下さい。
以上
11月 7, 2021