兵庫県知事選挙

【兵庫県知事選挙】 2021年兵庫県知事選挙 公開質問状と回答

「障害者問題を考える兵庫県連絡会議」は、2021年兵庫県知事選挙について、立候補予定者に対し、障害者問題に関する公開質問状を提出しました。以下、質問および回答を発表します。

・2021年6月15日付で公開質問状を郵送。

・同日時点で立候補を表明した方、4名に郵送しました(服部修氏には、同日時点で立候補を表明されていなかったため、送付しておりません)。

・公開質問状の回答期限は同年6月25日。

※私たちは特定の候補者を応援しているわけではありません。公職選挙法上、禁止されています。公平な立場で立候補者の回答を公開しています。リンクを張る場合やネット上で周知されるなどの場合には、特定の候補者の応援または特定の候補者を批判するなどの投稿は止めてください。公職選挙法に違反することにも繋がります。もしご意見がある場合には、障問連のメールアドレスにご連絡ください。

公開質問状および回答は以下です。

 

【障害者問題に関する公開質問状】

障害者問題を考える兵庫県連絡会議

拝啓

時下皆様方におかれましてはますますご清栄のことと存じます。

私たち「障害者問題を考える兵庫県連絡会議」(略称:障問連)は1981年に結成され、県下の障害者団体や関係団体とのネットワーク組織として、障害当事者を主体に共生社会を目指し40年間活動している団体です。

国連障害者権利条約に日本政府2014年に批准して以降、障害者諸制度が改訂され、障害のある者と障害のない者との平等、障害者が当たり前に地域社会の一員として生活できる共生社会の構築がより一層求められています。障害のある人が生きやすい社会は誰もが生きやすいユニバーサルな社会であり、人と人が共生し合う豊かな社会の礎になるものです。

未曾有の新型コロナウィルス感染拡大により、社会のセーフティーネットの仕組み、公が果たすべき役割、人権意識など、改めてこれまでの社会の仕組みやあり方が問われています。そのような中で実施される2021年兵庫県知事選挙は、今後どのような理念、方向性により兵庫県政が行われていくのかを指し示す大変重要なものであり、新たに選ばれる県知事の障害者問題に対する考えに強い関心を持っております。

そこで、県知事選に立候補を表明されている方に、共生社会に向けた障害者施策のより一層の発展に関わる公開質問状(別紙)への回答をお願いするものです。

この公開質問状は兵庫県民が県知事を選ぶ貴重な情報となるものと考えております。ご回答のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

敬具

 

2021年兵庫県知事選挙    障害者問題に関する公開質問状

※各質問に最大300字程度でご回答ください。

質問(1):「ポストコロナを見据えた社会の在り方」

今年4月~5月の第3波の新型コロナウィルス感染拡大は兵庫県にも多大な影響を及ぼし、人口100万人当たりの死者数で全国比でも兵庫県は多くの方が亡くなられています。特に第3波で医療体制が逼迫し入院できず待機のまま亡くなられた方やご家族はどんなに無念だったでしょう。障害者も含めあらゆる人が安心して生活していくためには社会的リソースが必要です。

あなたは、上記のような新型コロナウィルスに係る兵庫県の医療逼迫の要因や背景をどのように分析しどのように解決していくお考えなのか、そしてポストコロナにおける社会のセーフティーネットに係る「公の果たすべき役割」についてのお考えも合わせてご回答ください。

 

質問(2):「障害者の人権に関わる施策」

2021年通常国会で障害者差別解消法が改正され、民間事業者の合理的配慮の提供が義務とされ、ワンストップ窓口の創設、様々な障害者に応じた配慮等が求められています。兵庫県下では明石市、宝塚市、三田市等で自治体独自の差別解消に係る条例が制定されています。

あなたが知事になられた場合、兵庫県下で障害者差別解消にかかる施策をどのように展開されるのか、障害者差別解消にかかる県条例を制定するお考えがあるのかも含め、お考えをご回答ください。

 

質問(3):「共に学ぶ教育に関わる課題」

障害者基本法には「可能な限り障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶこと」と謳われています。しかし少子化にもかかわらず特別支援学校数が兵庫県でも増加しています。特別な教育的ニーズに対する支援は教職員の理解と環境整備が図られれば、地域の通常学校でも実現できます。学校教員の過重労働等による余裕のない学校現場が、時に障害のある児童を排除しかねない状況を生み出しているのではないでしょうか。

あなたが知事になられた場合、障害のある子どもが共に学べるよう、介助員や支援員を配置する各地教委に対する県バックアップ施策や、障害のある児童を含め誰も取りこぼさない教育の実現に向けた教員配置などの施策を推進していくお考えがあるのかも含め、教育政策に対するお考えをご回答ください。

 

質問(4):「地域共生社会の実現について」

障害者権利条約の理念に反し、兵庫県でも長期にわたり入所施設や精神科病院での生活を余儀なくされる障害者がいます。昨年神戸市内の精神科病院で深刻な患者への暴行虐待事件が発覚しました。また障害児者を持つ保護者の「親亡き後」の不安は今もなお解消されていません。障害・高齢の介護では、現在「ヤングケアラー」問題が国政でも注目されるなど、今もなお家族の責任が強く求められています。また一方では超高齢化社会を見据え介護職員の増加は急務とされながらも厳しい状況です。

あなたが知事になられた場合、兵庫県における今後の具体的な介護・福祉施策に対しどのようなお考えを持たれているのか、「自助・共助・公助」に関するお考えも含めご回答ください。

 

質問(5):「優生思想に関わる課題」

旧優生保護法の下で多くの障害者が強制不妊手術され、一昨年には国により被害者に対する一時金支給制度が創設されました。とりわけ兵庫県においては、かつて県知事自らが率先し県対策室まで設け「不幸な子どもの生まれない運動」を展開してきた歴史があります。

あなたが知事になられた場合、このような過去の兵庫県施策は誤りであったことを表明し、手術を受けた県内の被害者に謝罪し、被害者への一時金制度の更なる周知等の施策を拡充していくこと、そして優生思想は誤りであると県民に積極的に表明する、そのようなお考えがあるのかも含め、優生思想に対するお考えをご回答ください。

 

【立候補予定者からの回答】

・回答をいただいた順番で掲載します。

・回答いただいた日時

斎藤元彦さん(6月19日)  金田峰生さん(6月23日) 金沢和夫さん(6月25日)

中川暢三さんからの回答は6月30日時点で届いていません。

 

質問(1):「ポストコロナを見据えた社会の在り方」

 

斎藤元彦さんからの回答

今回の第4波の蔓延速度は非常に急激で、医療関係者 の懸命な対応にも関わらず、受け入れ体制がひっ迫したことは残念です。県立公立医療機関が中心となって コロナ対応に当たってこられましたが、更に民間医療機関にももっと積極的に加わっていただき、オール兵庫で蔓延防止、ワクチン接種体制を構築することが大切ですし、知事として先頭に立って、体制構築に努力していきます。またコロナ倒産・失業・生活困窮者ゼロを目指し、県制度融資枠の拡充、返済猶予期間、返済期限の延長等を検討していきます。疲弊している飲食店に、「ひょうご安心認証制度」を導入し、時短要請の緩和を行います。

 

金田峰生さんからの回答

感染拡大、医療のひっ迫は、大規模なPCR検査・頻回検査や無症状感染者の見つけ出しと保護、自粛要請と一体の補償ななど、国と兵庫県がやるべきことをやってこなかった結果です。とくに兵庫県政は、保健所を41か所から17か所に削減、病院の統廃合・病床削減をすすめ、地域医療のひっ迫をつくりだし、多くの死者を出しました。いまはコロナ対策に力を集中しながら、ポストコロナを考えても、保健所の人員・体制の拡充、病院の統廃合・病床削減のもとになっている「地域医療構想」を撤回し、地域医療を拡充すべきです。不要不急の大型事業やムダ使いをやめ、福祉・医療など県民の命と暮らしを守る施策に県財政を優先的に使うべきです。

 

金沢和夫さんからの回答

①  医療逼迫の要因や背景及び対応

医療逼迫状況は、新規陽性者数の増加に併せて重症患者が増加し病床数不足や入退院での目詰まりが原因。その解消のため、今後は公立に加え民間病院の病床提供を可能にする仕組みを作るとともに、入院原則を基本としつつ新規陽性者発生増に応じた弾力的な医療強化型宿泊療養施設への入所原則に移行し、それでも対処困難な場合は、医療ケアの迅速な展開を図った上での自宅療養の容認と段階的な対策を進め、コロナ病床からの転院促進、リハビリ等のための高齢者施設への受け入れ促進などの対策が必要。

②  ポストコロナ社会における「公の果たすべき役割」

私のめざすのは「どの人も、どの地域も共に輝く兵庫」で、過度な効率性重視、新自由主義、経済原理主義の立場はとらない。ひとり親世帯や生活困窮者など必要な生活支援を必要な所に届ける、「公」だからこそできるセーフティーネット機能を確保する。

 

質問(2):「障害者の人権に関わる施策」

 

斎藤元彦さんからの回答

障害者福祉施設を着実に整備するほか、人材確保への支援、親亡き後を見据えた支援等に取り組みます。また障害者の雇用拡大支援や工賃の向上や作業がしやすくなるロボットの導入支援等障害者が働きやすい環境づくりを進めます。障害者スポーツや障害者絵技術文化活動を力強く応援します。「ひょうご福祉の観光県条例(仮称)」を制定し、障害者が日本一旅行しやすい県にします。おもてなしの研修、宿泊施設でのLINE・ チャットのフロントコール、視覚障害者用の街歩き音声ナビ等、ソフト・ハード両面で取り組みを進めます。 兵庫県内にWi-Fi整備を早急に進め、障害者にもICTを活用した社会参加ができる整備を促進します。

 

金田峰生さんからの回答

障害者差別解消法が改正されたことは、重要な前進だと思います。民間業者の合理的配慮が「義務」とされましたが、まだ、内容が知られておらず、県として、事業所などに正しく知らせ、指導していくことが必要です。また、障碍者、事業 者の相談を一手に引き受けるワンストップ窓口も、設置が十分すすんでおらず、 窓口で相談に応じる専門家も不足しており、指導、促進する必要があります。法律が規定している地域協議会の設置も促進し、協議会で障害当事者の参加がすすんでいない点も改善が必要です。これらの取り組みを進めるためにも、県が障害者差別解消にかかる県条例を制定します。そして、県下のすべての自治体が条例を制定するよう促進します。

 

金沢和夫さんからの回答

県人権啓発協会理事長であった立場からも、障害の有無等の違いに関わりなく、誰もが安心して生活できるユニバーサル社会づくりに向けた取組を強化する。

特に聴覚障害者や盲ろう者への理解促進のための手話通訳士の人材育成、点字普及を促進するなど障害者の理解促進と、インターネットによる障害者差別や人権侵害に関する相談窓口、ネットによるモニタリング機能を強化する。

障害者差別解消条例については、既に法律が制定されており、県が独自に制定したユニバーサル条例や議員提案で制定された障害者の意思疎通の促進に関するひょうごスマイル条例など、県としての理念や施策を規定する条例が既に存在する。既存条例を含めて整理することの適否について検討する。

 

 

質問(3):「共に学ぶ教育に関わる課題」

 

斎藤元彦さんからの回答

障害がある児童生徒と無い児童生徒が共に学ぶインクルーシブ教育については、引き続き促進出来るよう頑張っていきます。そして、特別支援学校の狭隘化解消に向けての対策も同時に進め、近隣の学校との交流授業の拡大にも努めていきます。その為の教員・介護員・支援員、そして場合によっては、医療関係者の設置・確保に向けて、厳しい財政状況ですが、再度全ての事業を見直し、財源に余裕を持たせた上で、検討していくつもりです。

 

金田峰生さんからの回答

障害者基本法が謳う「ともに学ぶ教育」を保障することは、国はもとより自治体の責任です。そのためのも、一学級当たりの児童生徒数の引きが必要です。 小学校における35人学級の実施を国が40ぶりに認めました。兵庫県は国に先行して少人数学級を実施していますが、残された5,6年生、中学での35人学級を直ちに実施し、通常学校における特別支援教育の促進・充実をすすめます。また、通級指導教室の整備、障害のある子どもがともに学べるよう、介助員や支援員を配置するための市・町への財政的支援、余裕のない学校現場を解消するための教員配置などをすめます。

 

金沢和夫さんからの回答

障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場で共に学べることが望ましい。一方で、、それぞれの子どもが、授業内容が分かり学習活動に参加している実感、達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付けていけるための環境整備の一つとして特別支援学校の充実が必要である。

そのため、現在地域拠点校に配置している学校生活支援教員の質的向上、特別支援学校と高等学校との交流及び共同学習の実施、就職支援コーディネーター配置等による就労支援にも積極的に取り組む。

阪神間の特別支援学校の在籍者の増加に対応し、阪神北及び阪神南地域における特別支援学校の新設を行うなど環境整備にも積極的に取組む。

 

質問(4):「地域共生社会の実現について」

 

斎藤元彦さんからの回答

団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年問題が間近となる中、地域完結型の医療・介護・福祉の充実が求められています。二次医療圏域ごとの官民一体となった地域医療介護福祉を支える体制づくりを進めていきます。在宅介護の充実、医療従事者の確保を推進します。また介護人材の確保に向け、処遇改善や外国人材の活用、また介護人材の負担軽減を図るため、介護ロボットの導入やICTの活用も進めます。ヤングケアラーの解決に、学校・福祉事業者・児童委員等の連携により早期発見体制を構築し、悩み相談や福祉サービスへのつなぎ、学習支援等を柱としたプログラムを策定します。

 

金田峰生さんからの回答

「老々介護」が社会問題となり、高い国保料や介護保険料・利用料の相次ぐ引上げなど、高齢化社会のもとで社会保障の切り下げは重大問題です。政府は菅総理を先頭に「自助・共助・公助」の名で、実際には自助を押しつけ、さらなる引き下げをすすめようとしています。絶対に許せません。県下で高い国保料が払えない滞納世帯が8万4、558世帯、介護保険料は20年間で2倍以上に、特養老人ホームの待機者は2万5600人に達しています。国保料、介護保険料の引き下げ、切り下げられた福祉・医療制度を取り戻すこと、特養老人ホームの増設は急務です。県の助成で、全産業平均と比べ10万円も低い介護労働者の賃金を引き上げ、人で不足を解消します。

 

金沢和夫さんからの回答

自助・共助・公助の役割分担は介護福祉施策の中でも必要である。障害者の場合は、障害の程度によって自助を中心とした対応だけでは困難で、公助の役割が多く占めるものの、公的部門の取り組みにも限界があることから、地域や非営利法人など地域全体で障害者への対応を進めていく共助が重要な役割を果たしていく。

今回の公約でも、精神障害など心の健康を損なっても孤立することがないよう、地域の支援体制を充実させることや、重度障害者の親亡き後を見据え、地域での生活支援の中核的な役割を担う医療支援型のグループホームの整備などに取り組むことを掲げており、自助・公助・共助の組み合わせにより誰もが安心して生活できるユニバーサル社会づくりを進める。

 

質問(5):「優生思想に関わる課題」

 

斎藤元彦さんからの回答

旧優生保護法による不幸な歴史は、非常に残念ですし、 現在では考えられない法律であったと認識しています。 地方自治体でもその法律に則り、施策が展開された事は、大いに反省しなければならないと考えます。 ただ、国の法律によって制度化された施策であり、一義的には国による被害者救済制度が手厚く実施されるべきと考えます。県の立場でどのような生活支援策が展開できるか、今一度国とも協議しながら検討していく必要があると考えています。

 

金田峰生さんからの回答

旧優生保護法のもとで、ご指摘の兵庫県が障害者に強制した人権無視の「運動」は誤りであったことは明確です。知事として、県内の被害者に謝罪し、国が実行する一時金制度を周知・徹底、拡充します。県民に対しても、優生思想が誤りであることを明確に表明します。

 

金沢和夫さんからの回答

旧優生保護法に基づく優生手術については、機関委任事務として法律に基づき、国の機関として実施してきたが、今日の社会的価値観に照らせば、国の事務の履行としても不適切であった。

これまで県政資料館や県関連部署の調査のほか、手術実施の情報があった県立兵庫心の医療センターのカルテの悉皆調査を県独自に実施するなど徹底した調査を行い、一時金の支給等についても周知を行ってきたが、引き続き必要な対応を行う。

また、優生思想は、現在の社会状況から見ても、私のめざすべき兵庫像からしても、相容れないものであることは明らかであり、誰もが持てる力を発揮し、安心して暮せる兵庫づくりをめざしていくことを積極的に表明していきたい。

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