知的障害

【報告】  医療費助成と交通割引に対する知的障害当事者の要望

障問連では知的障害当事者の意見要望を聞こうと、当事者が中心になり勉強会や会議を開催しています。その参加者でもあり障問連加盟団体「共働作業所あかね」(川西市)に所属する平田さん、支援者の岡田さんの文章を「あかね」機関誌から、以下転載させていただきます。

 

◆日ごろ感じていること

平田真由美

私はピープルファーストの活動の他にオールラウンド交渉にも行かせてもらっています。11月19日にあかねの職員さんとオールラウンド交渉の会議に参加させてもらいました。何人か仲間がいて、それぞれに役割を決めて発表させてもらいました。

私は重度障害者医りょうと交通割引について話させてもらいました。この2つを県のえらい人にうったえました。りょういく手帳がAの人の医りょうひは、同じ病院にいくと二回目までは六〇〇円で三回目からは無料になったりするけど、私はりょういく手帳がB2なのでAの人に比べたらすごく高い医りょうひ(三割ふたん)をはらっているので、Aの人と同じように安くならないかを話させてもらいました。でも私のなっとくするような答えはかえってきませんでした。

川西市では令和元年7月からB1の人もはらった分の三分の一がかえってくるせいどが始まりました。でも私はB2なのでこのたいしょうにはなりません。障害のていどとか関係なく平等にしてほしいなぁって思います。私みたいにB2の人も、医りょうひをB1の人みたいにもう少し安くしてくれたらすごくありがたいなぁって思うけど、私のうったえたい事が実現するようになるにはもう少し時間がかかりそうなのであかねの皆にも協力してもらって根気よくうったえたいなぁって思います。

交通割引もAの人はつきそいの人がいたら二人とも半額になるけど、私はB2なので半額にならないのでけんじょう者の人と同じ額をはらっているから、Aの人みたいに割引になればすごくうれしいです。

りょういく手帳のことだけじゃなくて、障害者年金も1級の人より少ないけど作業所の給料はみんな同じです。AとかBとか関係なくだれでも同じ額にしてもらえたらいいのになぁって思います。誰でも差別なく自由にどこでもいけるようにして欲しいなぁって思います。B2の人も交通ひが割引になったらいいのになぁって思います。医りょうひも安くなったらすごく楽になると思います。車いすの人ももっと自由にでかけられるようにしてあげて欲しいなぁって思います。けんじょう者、障害者関係なく、平等にくらせるようにして欲しいと思います。

 

※この文は、平田さんが兵庫県との交渉に向けて、障問連の仲間とスマホでリモート会議をし、現状を訴えるために書かれた原稿を加筆修正されたものです。そばにいて、日々逞しくなっていく平田さんに勇気をもらいました。平田さんが日々感じている事や理解した事を元に書かれており、大きく修正せずにのせています。平田さんの思いや願いを感じ取って頂ければ幸いです。障害者医療や交通費割引制度の現状や問題点などについては改めてお伝えしたいと思います。(岡田)

 

◆はかることのできない生きにくさ

岡田小月

昨年の11月9日、障害者問題を考える兵庫県連絡会議による対県のオールラウンド交渉において、平田さんは障害当事者として県の担当職員の方々に向け、自身の所得や医療費助成、交通運賃の割引について、現状と要望を訴えられました。医療費助成は市の制度ですし交通運賃は各交通機関によるものですが、改善に向けて県から市や各事業者への働きかけをお願いしたいと伝えられました。

グループホームに暮らし始めた当初、なかなか自分の意見を言えなくて、いつも人に合わせていたのを思い出し、この日の平田さんの堂々とした姿に驚きと頼もしさを感じました。

平田さんが親元から自立しホームで3人暮らしを始めてしばらくすると、同じ作業所で働き、同じ給料をもらっていても、それぞれが自由に使えるお金にかなり差があることに気が付きました。特に、数年前に入院治療が必要な病気に罹った時には、高額医療制度による支払限度額があるにしても、通院と入院の3割負担は厳しいものでした。

そんな中、一昨年の障問連による対県交渉で平田さんは発言の機会を得て、医療費の助成と交通機関割引を受けられないため経済的に困っていることを県担当者に向けて発言されました。それがきっかけになったかどうかはわかりませんが、昨年の7月より川西市では療育手帳B1の人は医療費自己負担分の3分の1が還付される制度ができました。平田さんはB2のため、また対象から外れてしまいましたが、同じ作業所のB1の人が支払った医療費の3分の1が実際に還付され、訴えることにより身近な仲間の状況が改善される可能性を知り喜ばれていました。

そして、もっと障問連の活動に積極的にかかわり、訴え続けていきたいという気持ちになられました。けれども一人一人の状況に年金制度や医療費制度、交通運賃割引などが関わりあっているため、平田さんにとって自分自身の現状ですら理解するのは難しいものでした。繰り返し、繰り返し、紙に書いて現状を確認しあいました。

昨年は、交渉当日までに障問連の仲間とスマホを使ってのリモート会議を数回行い、まずは現状を伝え、当日何を訴えるのかを話し合いました。そして交渉内容の原稿をA4用紙一枚分、平田さん一人で仕上げました。(中  略)・・・机の上で考えると2級の人は1級の人より障害が軽度だから収入を多く得られるという考え方なのかもしれません。正直、日々、あかねのみんなと過ごしていると、療育手帳の判定や、年金等級の基準には、それぞれの生きにくさの度合いは全く反映されていないと感じます。実際、平田さんは過去に一般就労を数年間経験されています。当時はかなりつらい目にあいながらも、何とか続けていましたが、人員削減のため解雇されたということです。知的障害のある人が一般就労をし、収入を得るには、まだまだ人々の理解や社会の受け皿は整っていないのが現状です。その理解を少しでも広げていくのが私たちの役割でもあるのですが、長い道のりだと感じています。

以上、現状をお伝えしましたが、平田さんは決して、不平不満を言っているわけではありません。いざという時には生活保護を受給するという手段もあるのでしょうが、今は収入の範囲で本当にうまく工夫して生活されています。それでも、自分のためだけではなく、他にも困っている仲間のためにも、訴え続けていきたいと話されています。この間に出会った障問連の仲間の皆さんは平田さんの現状を親身に根気よく理解しようとしてくれて、会議中も何度も理解ができているのかを確認しながらすすめてくれました。その力強く、熱いつながりがあれば長い道のりを進んでいけると思わせてくれるものです。

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