国/県の制度

【様々な動向】 障害者差別解消法の見直し/来年度の報酬改定について等

障問連事務局

新型コロナウィルスの第三波も年末年始においても終息は見えず、雇用調整助成金緩和の期限延長等もある中、障害者支援に関わる各種支援策も延長等はありますが、厚労省や行政からの通知は大きく目立ったものはなく、何よりクラスターが出ないための感染予防対策の徹底が示されています。感染拡大の中、県交渉でも話題になったこのような状況下で障害者が感染した場合の入院先の確保などについて不安は尽きず、何とか乗り切っていくしかないのが現状です。そのようなコロナ禍の中、様々な制度や施策の動向について、以下報告します。

 

◆障害者差別解消法の見直しについて

12/21『福祉新聞』によると・・・「12/14の内閣府障害者政策委員会で、差別解消法の改正案を2021年の通常国会で提出することを検討中であることをと明らかにした。改正事項は5つ。民間事業者ヘの義務化、自治体相談窓口の拡充等」とし、但し内閣府は決定ではないと報じられていた。詳しい報告が「JIL政策委員会ニュースレター」で、「つくば自立生活センターほにゃら」の生井祐介さんが「第53回内閣府障害者政策委員会の報告」として掲載されており、以下、抜粋して転載させていただきます。

【JILニュースレターより】

第53回内閣府障害者政策委員会が、約半年ぶりに12月14日に開催されました。今回、私達の関心のある議題は、障害者差別解消法の改正に盛り込む事項(案)についてです。他には、第4次障害者基本計画の実施状況報告として、文部科学省、厚生労働省、国土交通省から報告がありました。

まず、障害者差別解消法の改正に盛り込む事項については、今年6月までの障害者政策委員会の議論の中で、事業者による合理的配慮は、更に関係各方面の意見を踏まえつつ、その義務化を検討するとされました。そこで、関係団体(事業者団体(34団体)、障害者団体(19 団体))にヒヤリングを行い、下記の意見が出されました。

○事業者団体の多くが義務化に一定の理解を示す一方、一部の事業者団体(鉄道事業者、中小事業者団体等)は、現時点では義務化は時期尚早である、引き続き努力義務とすべきとの意見であった。

○事業者団体が、義務化によるトラブルの増加を強く懸念しており、義務化する場合には、合理的配慮の考え方をより明確化すること、周知啓発を進めること、事業者からの相談に応ずる体制を整備することが必要であるとの意見であった。

○ 障害者団体からは、総じて、事業者の合理的配慮の提供を義務化すべきとの強い意見が示されたほか、相談・紛争解決体制を整備すべき、差別の定義を明確にすべき、周知啓発を進めるべき等の意見があった。

次に、今までの障害者政策委員会の意見や上記の団体ヒヤリングの意見を踏まえて、内閣府で改正法案として国会へ提出を検討している事項は、下記になります。提出の時期は、来年度の通常国会を検討しているそうです。

1 事業者による合理的配慮の提供を義務化

2 基本方針に定める事項を追加(障害者差別に関する支援措置〔相談体制等〕の拡充を想定)

3 障害者差別に関する相談体制の整備として人材の育成及び確保などを明確化

4 地域における障害者差別に関する事例等の収集、整理等を明確化

5 国及び地方公共団体の連携協力に係る責務を追加

DPI日本会議の佐藤聡委員からは、周知期間3年はできるだけ短くして欲しいことや基本方針の改定で間接差別や関連差別などの差別の定義も盛り込んで欲しいとの意見がありました。

 

◆2021年度(令和3年度)報酬改定の基本的方向性が示される

12月11日「障害福祉サービス報酬改定検討チーム」で基本方針が固まったと『福祉新聞』で報道。同紙と障大連の細井清和さんの「情報提供」から抜粋引用して、以下、紹介させていただきます。

〇改定率・・・+0.56%。(介護保険は+0.7%) 86億円の増の見込み。

〇基本方針

報酬見直し

・グループホームの各種加算を重度者や夜間に対応できるよう見直す

※「夜間支援等体制加算(Ⅰ)」の再編はどうなるのか?(個別ヘルパー利用は、3年間、延長の方向が確定しています)

・相談支援は収支差率が低い事が問題視され厚労省も応じる方向

放課後等デイサービス計画相談なども、報酬の仕組みが大きく変わることが予定されています。放課後等デイサービスは、収支差率(平均5.0%)が高い(10.7%)と指摘されていますので、何らかの抑制が行われると思われます。「(計画)相談支援」については、収支差率の低さ(0.5%)が問題とされていますが、基本報酬の引き上げがどうなるのか注目していく必要があります。

前回改定された就労系サービスの成果主義を見直し

・前回の改定で労働時間や工賃により報酬額を設定したが多様な視点から評価するよう見直す

就労継続支援B型での「利用者の生産活動等への参加等を支援したことをもって一律に評価する体系」が具体的にどうなるのか、就労系での施設外就労加算の組み換えの影響はどうなるか。

障害児関連で多数改定

・医療的ケア児を判定する新しい基準の導入

・放課後デイや児童発達支援の基本報酬の体系を見直す

・福祉型障害児施設で暮らす18歳以上の「過齢児」のGH等への移行促進のため加算

・施設の人員配置基準を半世紀ぶりに引き上げる。

精神障害者関連

・「医療と福祉の連携」「地域移行」「居住支援」を報酬で後押し

・所定の要件を満たす障害者を職員として配置した一部の事業所に「ピアサポート加算」を導入

新型コロナの影響を踏まえ感染症対策や災害発生時の業務継続の計画策定を事業者に義務付け

制度の持続可能性を保つための見直し

・施設等での虐待や身体拘束の適正化の義務付け(虐待防止委員会の設置義務化)

・人材の職場定着のため家庭内介護や育児との両立を支える

〇その他

・特定処遇改善加算・・・またしても再編される方向性。(AグループとBグループの平均賃金改善額の格差が、2:1からAが「多い」というレベルに改変されます)

・参考資料では、訪問系サービスの「処遇改善加算比率」を改定する方向性が出ています。引き下げられたならば、影響は非常に大きいと考えられます。

(注)大幅に引き下げられる可能性があります。その場合、職員の処遇や事業の運営について、どう対応するのか、真剣に考える必要があります

(例)重度訪問介護 現在19.1% →「9%」???

 

 

◆「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議 報告(素案)」

上記案のパブコメが12/14締め切りで募集されていました。この「素案」では「特別支援教育をめぐる状況変化」について「少子化による児童数減少の中、支援学校(学級)在籍数、通級利用数の増加は、特別支援教育への理解や認識の高まりによる」とし「学校のさらなる努力と創意工夫により『多様な学びの場』の柔軟な連続性と内容充実」の方向性を示し、従来施策の延長がほとんどで目新しいものはありません。しかし各種報道されていた「特別支援学校の教室不足」についても下記のように言及されています。

・2019年5月1日 現在、全国の特別支援学校で 3,162 教室が不足。

・教室不足を解消するため令和2年度から6年度までを「集中取組期間」とし国庫補助の算定割合の引き上げにより増築や新設を行う。

・・・以上を踏まえ「特別支援学校整備指針等」を今後示すことが重要とされています。

全国的にも兵庫県でも増加し続ける特別支援学校が、これからも増加し続けていくことが十分考えられます。この素案でも兵庫県の特別支援教育推進計画でも、「同じ場でどうすれば共に学べるのか」、そのために必要な配慮や支援、人的な体制等についてはほとんど言及されていません。権利条約や合理的配慮が言葉だけ引用され、ますます分離教育へと逆行していくことを危惧します。

 

◆「無人駅」問題について

前々号でも取り上げた鉄道の「無人駅」問題。12月21日には国土交通省で「第2回駅の無人化に伴う安全・円滑な駅利用に関する障害当事者団体・鉄道事業者国土交通省の意見交換会」が開催され、『JIL政策委員会ニュースレター』によると・・・「現在、全国的に鉄道駅の無人化が進んでおり(全国の駅の約48%)、車いす使用者や視覚障害者、聴覚障害者、高齢者等をはじめとするあらゆる移動困難者が駅を利用できない、長時間待たされる、乗車を断られる等の問題に直面しています。これらの問題を解消するため、この意見交換会では様々な障害種別の当事者団体と各鉄道事業者22社が参加して意見交換会を行っています」とのことです。今回、無人駅を何らかの支援が必要な障害者が利用する場合には「事前連絡」が必要となりますが、22社とも「(事前連絡の)期限は設けていない」と回答したそうですが、実態は異なっており、DPI日本会議などにより緊急に実態を寄せて欲しいと呼びかけられています。

また同「意見交換会」では、全国で「水間鉄道・伊予鉄道・熊本電気鉄道」の3社の取り組みが報告され、無人駅でも乗務員が乗降介助を行っており、事前連絡は必要なく、乗降介助の所要時間はいずれも1分程度という報告がされたとのことです。しかし「運転手が席を離れる危険性」「定時運行できない」など反対意見が多く出されたそうです。兵庫県にも多くの無人駅があります。この動向を今後とも注視していきたいと思います。

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