【優生思想】 強制不妊手術関連のこの間の動き
障問連事務局
■自治体アンケートでは
4/1付け東京新聞によると、強制不妊手術について全国の自治体にアンケートを行ったところ、25の都府県で「国が実態調査を行うべきだ」としています。とくに和歌山県と沖縄県では、「ただちに国が謝罪と補償を行うべきだ」としています。沖縄県の翁長知事は、「優生思想を理由に強制不妊手術を行うことは非人道的な政策」と述べています。兵庫県では、他の23都府県と同様「実態調査を進めるべきだ」としています。
■助産師向け冊子で優生思想を肯定
4/4付け東京新聞では、助産師向けの冊子で優生思想が肯定され、産科医にも強制不妊が推奨されていたことが明らかになっています。1953年に出た冊子『保健と助産』で、「悪質遺伝の子を産むことは社会に大きい迷惑をかける」「生まれぬようにするのが最も良い方法」などとしています。助産師についても、個人の幸福と同様に社会の幸福も考え、優生手術を活用するように進言されています。
■ドイツとスウェーデンにおける謝罪と補償
日本でも超党派議員が救済に向けた議員連盟を発足させた一方、4/20付け東京新聞では、ドイツとスウェーデンにおける強制不妊手術の被害に対する謝罪と補償の経過が述べられています。ドイツではナチス政権下で「遺伝病子孫防止法」(1934~1945)があり、優生手術の被害者は約36万人。1980年にはじめて補償金支給(60万円)。1988年に謝罪、年金支給が始まります。スウェーデンでは、社民系の「緑の党」政権で不妊手術に関する法律(1935~1975)が存在し、約27000人が被害に。このことが明らかにされてすぐに政府は調査委員会を1997年に発足させ、1999年に補償金(200万円)を支払う法律を制定しました。議連の尾辻会長は、被害者が高齢化するなか、補償に関して「記録や証拠の有無を言っているときではなく、補償を急ぐ必要がある」と述べています。
■個人記録現存25%
しかしながら4/22付け東京新聞では、当事者の個人名が記された資料が現存するのは28都道府県の約4000人にとどまると報じられています。これは、国で手術の記録がある統計の25%にすぎません。「強制不妊手術をめぐる状況」として、地域別/手術人数(旧厚生省統計)/個人資料がある人数がデータ化されて記されています。それによると、全国では手術人数16475人、個人資料は4083人分発見されているのに対し、兵庫県では294人の手術人数に該当する個人資料は発見されていません。
■動き
そうしたなか、4/25付け東京新聞の報道で、長野県の当時30代だった精神障害の女性に対し1982年に行われた強制不妊手術で、「強制」にもかかわらず、医療現場の誤記で、本人同意を示す「任意」と書かれていた事実が明らかになりました。また、4/26付けの東京新聞では、優生保護法の対象外であるにもかかわらず、1980年、みずからの意思で手術を受けられた脳性まひの女性が名乗りを上げられたことが報じられました。ご本人は、施設の職員から毎月のように「子供も産めないのだから、生理などあっても同じだ」と繰り返し言われることにより、「優生思想に洗脳されていた」と話されています。
■「医療機関、障害者施設等における旧優生保護法に関連した資料の保全について」
厚労省は、4/25に以下の課長通知を、各自治体に送られ、自治体から各福祉事業者にも送られています。まずは実態究明がなされ、被害者の方々に謝罪と補償を、私たちも求めていきたいと考えています。
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各都道府県、指定都市、中核市
障害保健福祉主管部(局)長殿
医療機関、障害者施設等における旧優生保護法に関連した資料の保全について(依頼)
平成8年に現在の母体保護法に改正される前の旧優生保護法に関しては、「優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟」や「与党旧優生保護法に関するワーキングチーム」において議論が行われており、今般、当省に対し、今後の検討に備えて医療機関、障害者施設等が現時点で保有する資料について、当省から速やかに保全の協力を依頼するよう要請がありました。
旧優生保護法に関する資料については、都道府県等のほか、別記施設及び機関においても保有している可能性が考えられることから、貴都道府県・指定都市・中核市におかれては、管内の別記施設及び機関に対して、下記により当該資料を適切に保全することを依頼いただくよう御協力をお願いいたします。
記
旧優生保護法下において作成等が行われ、現時点で別記施設及び機関が保有している旧優生保護法に関連した資料や記録について、保存期限を問わず当分の間廃棄せず、保存を継続すること。
■兵庫県での集会のお知らせ
市民団体「私たちの内なる優生思想を考える会」と、「関西女性障害者ネットワーク」とが共同主催で、以下の集会を予定しています。障問連も共催しています。詳しくは次号に掲載予定ですが、ぜひご参加ください。
◇ 「不幸な子どもの生まれない運動」と優生手術に対する集会 ◇
日時:6月30日(土) 13:30~16:30
場所:神戸市障害者福祉センターABC会議室(定員135名)
資料代:500円
プログラム
「不幸な子どもの生まれない運動とは」(松永真純)/「大阪青い芝の会の当時の活動と原発について」(古井正代)/「着床前診断・出生前診断」(神経筋ネットワーク)/「強制不妊手術」(利光惠子)/「経済と優生思想」(斉藤日出治)
5月 5, 2018