教育

【支援のお願い】 障害を理由とした定員内不合格に抗議の声を寄せてください

栗山和久(障問連事務局)

 

平成30年度兵庫県公立高等学校の定時制高校の入学者選抜の結果が公表されました。

・第一次試験・・・受検者901人、合格者883人。不合格者18人のうち、定員超過校における不合格者17人を除き、定員内での不合格者は1人。

・第二次試験(再募集)・・・受検者216人、合格者215人。定員内での不合格者は1人。

定員内であれば、全員合格しているにも関わらず、障害のある権田祐也君、たった1人だけが、一次試験、二次試験のいずれも不合格にさせられました。

私たちは、障害を理由に門戸を閉ざし排除することは明らかに障害者差別であり、その判断を下した楠高校有元校長、ならびに定員内での不合格を容認した神戸市教育委員会に対して強く抗議するとともに、なぜ不合格にしたのか、楠高校長ならびに神戸市教委は、その理由を明らかにし、私たちに対し、何より本人や家族に納得いくよう、話し合いの場を持って回答する事を、今後強く求めていきたいと思います。

 

楠高校では現在も多くの障害のある生徒が学び、これまでにもほとんど点数を取ることが困難な知的障害生徒も積極的に受け入れ続けてきました。権田君は一次、二次試験とも、低いけれども点数を取っています。楠高校の元教員によると、これだけ点数を取っていて不合格は考えられないと言われています。

では、なぜ不合格なのか、そこには昨年秋に突然発表された、楠高校の定員・学級減(1学年3クラスから2クラス)、そして当初の神戸市教委の既定方針である近隣定時制高校との将来的な統廃合の意図が背後にあるのだと考えますが、市教委はそのような意図は決して語らず、「合否については校長判断」としか語りません。しかし、その校長が二次試験の発表の後、本人とお母さんに対して、以下のような発言を行っています。

 

「学校にはそれぞれ方針があり、楠高校の方針に不適合と判断された」

「もし入学しても出席日数や進級できるかどうか。留年は2回までしかできないし。卒業させてあげられるか…など考えた時に祐也くんは不適合と判断された。」

「不適合の基準は言えません」

「個人的には、お母さんや祐也くんの気持ちはよくわかっているが、学校は私一人ではなく、他の先生方もいての学校で、私一人だけの意見では決められない」

全く納得ができないお母さんが「どうやったら合格できるんですか?」の質問に対して、校長は・・・「例えば、祐也くんがこの1年で劇的に成長するとか・・・」と発言。瞬間的にお母さんは、この校長は最初から入学させる気などなかったのだと感じ、それ以上、話すことを止めざるを得ませんでした。この校長発言は、障害を克服しないと入学できませんと同義であり、明らかに障害者に対する差別であり、許すことはできません。障問連として受験の直前まで、医療的ケアが必要なため看護師配置や全面的な介助が必要なため介助員の要求を行いましたが、市教委は一貫して消極的な姿勢であり、障害者差別解消法から見ても大きな問題があります。ぜひ、多くの方からの抗議文をお願いします。送付先は下記まで。

 

障問連 E-mail:info@shoumonren-hyogo.jp

 

障害を理由に高校入学を奪うな

野橋順子(障問連事務局次長)

去る3月28日、淡路から楠高校を受験した重度の障害者の権田くんの二次の合格発表があったが、不合格にされた。

私は二次発表の時に、権田くんを応援したくて、楠高校の合格発表に付き添った。合格発表の前の日の夜、点数が取れているのに一次試験に落とされたこと。定員内での不合格であったことから、明らかに障害を理由に落とされたことしか考えられなくて、私は腹が立って寝れなかった。

私も障害があり、小・中・高 と普通校に行き、かなり苦労した。教育委員会から、「おたくのお子さんは障害があるから、養護学校に行った方が幸せですよ。なんでそんなわざわざ苦労する普通校に行かされるんですか」と、かなり嫌がらせを受けたと母に聞いている。なんとか普通校に入れても、危ないという理由で授業中や修学旅行に母に付き添いを強要されたり、辛かった。学校の試験も受験の時も、配慮がなく、手が不自由で書ける問題も時間が足りなくて悔しい思いをし、「自分に障害が無ければ、こんなに辛い思いをしなくて良かった」と、自分の障害を恨んだ。ものすごく悔しい思いをした。その辛かった学校時代のことがフラッシュバックして、権田くんのこととかぶり本当に腹が立っていた。

二次試験は、権田くんとお母さんが一緒に合格発表を見に来ていて、不合格で二人とも泣いていた。私も一緒に泣いた。なぜ重度な障害者だから落とされないといけないのか。障害者は学校に来るなと言うことか。障害者差別だという怒りがこみ上げて、今も昔も変わっていないことを痛感した。障害者差別解消法ができた今でも、社会は全然変わっていない。周りの子供たちが合格発表で、笑顔で帰っていく中で、権田くんの番号だけがなかった・・・。知的障害や身体障害があると思われる生徒は合格し、手続きを済ませ、笑顔で帰っていった。なぜ権田くんだけが落とされないといけないのだろうか!学校側はあくまでも障害が理由ではないと言い張っているが、障害が理由でないならば、何が理由と言うのだろうか。定員内不合格で、なおかつ点数が取れていて、不合格にする理由がないはずだ。明らかにこれは、権田くんが、重度の障害者で、医療的ケアが必要で介護の手がたくさんいるからだ。

合格発表の時、初めて権田くんに会った。彼は手動車いすに乗っていて、母親が車椅子を押していて、手には緊張があり、両手が上に上がったままだった。発語はできなくて、目をキョロキョロしながら何かを訴えていた。その瞳には涙が溢れていた。そんな重度障害の彼が、小中高と普通学校に行きたいと思い受験したのだ。小学校中学校と普通学校に通い、彼は良かったと言っていた。周りの子供たちと接する中で、辛いこともあったけど楽しいこともたくさんあったと言う。私もそうだった。いろいろもまれる中で、人は成長していく。養護学校に行っていたらそうはならない。高校に行きたいと言う彼の思いが打ち破られた。しかも障害が理由で。これは許されない出来事だ。彼の行き先や将来を奪った学校や教育委員会の責任は大きいと思う。

障害があるなしにかかわらず、介護が必要であるないにかかわらず、学校に行くことができるのが普通なのであると思う。それが本当の意味での共に学ぶ教育だ。でもそれを重度の障害者だと言うことで、排除したのである。これは本当に抗議するべきでことだと思っている。差別に他ならない。私たち障害者は、学校に行く権利は無いのだろうか。介護が必要ならば考えて配置したら良いだけだと思う。それを医療的ケアに従事する看護師を雇うと予算がかかるとか、学校側に介護を頼むと、教員に負担がかかるとか言って結局は重度障害者を排除している。こんな世の中なら、重度の障害者は自分が悪いんだと思い学校に行くことを諦めてしまう。こんな事はほんとにおかしいと思う。障害があってもなくても普通に学校に通いたい人は通うことができて、自分の障害を悲観して欲しくはないと思う。昔の自分が自分の障害を悲観してしまった時があったからより深くそれを思う。

この問題が広く取り上げられ、どんなに重度な障害者でも、希望すれば普通の学校に入れるようになることを切に願う!

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