新聞記事から

【報道】 新聞記事より

■重度障害者 「介護時間数保障を」 神戸市に署名3547人分 /兵庫毎日新聞2017年10月15日 地方版

https://mainichi.jp/articles/20171015/ddl/k28/100/315000c

 

神戸市障害者支援課の三浦久美子課長(左)に署名を提出する「障がい者の声を届ける会」のメンバー=神戸市中央区で、桜井由紀治撮影

障害者と支援者らでつくる「障がい者の声を届ける会」は13日、介護時間数の保障などを求めて3547人分の署名を神戸市に提出した。車椅子の重度障害者6人らが市役所を訪れ「健常者と同じように当たり前の生活を送りたい」と訴えた。

市営住宅やシェアハウスで自立生活を営む障害者は、重度の障害がある人に生活全般の介護を提供する公的サービス制度「重度訪問介護」を利用してヘルパーの支援を受けているが、希望する介護時間数と市が決定した支給時間数に大きな隔たりがある。全面介護が必要な人でも、深夜帯の数時間が支給されず介護が受けられないケースが目立つ。

長田区のシェアハウス「リ・スマイル」で1人暮らしをする、脳性まひの大塚由紀子さん(39)は、障害支援区分が最も重い6。倒れても自力で体勢を戻せない。気管切開もしており、声を出して助けを呼べない大塚さんは24時間介護を求めているが、市が決定した支給時間数では深夜帯3時間半がヘルパー不在になってしまう。同会は「命に関わる問題だ。実際に介護現場を見て判断してほしい」と訴えている。【桜井由紀治】

 

 

■私を見て 分け隔てしないで 障害ある女性 共生のために1票

東京新聞 2017年10月14日 夕刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017101402000277.html

 

介助者に支えてもらいながらバスを降りる川合千那未さん=東京都杉並区で

今月上旬、東京都杉並区の阿佐ケ谷駅前。路線バスを待つ十人ほどの列に、電動車いすの女性の姿があった。脳性まひで手足などが不自由な川合千那未(ちなみ)さん(27)だ。

「どちらまで?」。バスの運転手が行き先を尋ねた相手は、川合さんではなく、付き添いの介助者だった。川合さんは「私が乗るんです、私に聞いて」と叫んだが、運転手はちらっと見ただけ。再び介助者に話しかけた。

バスに乗り込む時、停留所の屋根の支柱が邪魔になりそうだったので、「バスを少し動かして」と頼んだら、無視された。案の定、車いすが鈍い音を立てて柱にぶつかった。

「私に意見を聞こうとしない。見た目で判断能力がないと思われる」とため息をついた。

川合さんは、ほぼ二十四時間の介助を受けながら区内の賃貸マンションで一人暮らしをしている。三年前まで埼玉県寄居町の実家住まいだった。十八歳の時、父親が他界したのを機に自分の将来を考えた。「施設ではなく地域で暮らしたい」。支援団体の助けを借り、三年がかりで準備した。

自立は簡単ではなかった。まず、住む場所が見つからない。不動産業者に車いすのことを伝えると、「床が傷付く」などと難色を示された。

一人では寝返りも打てず着替えもできない。日中と夜間の二交代で介助者を依頼するが、なかなか見つからない日もあり、綱渡りの毎日だ。人手不足感の強い介護業界の中でも、高齢者相手より障害者相手の方が単価が安く、より人が集まりにくいと聞いた。

学生にアルバイトを頼もうと大学でビラを配り、障害者と接したことのない人の多さに驚いた。「障害者は、子どもの頃から一般の教室から消えてしまう。若い人たちは『自分と違う』と、かかわる気持ちにならないのでは」と思う。

障害者差別解消法が昨年四月に施行されたが、多くの人にとって人ごとのままだった。三カ月後には、相模原市の知的障害者施設での大量殺傷事件が起きた。「いつかこういうことがあるのでは、と感じていた。人と人のつながりが希薄な中、異質な者はいじめや排除の標的になりやすい」

障害者政策は進んでいるはずだし、衆院選では多くの政党や候補者が社会の改革を訴える。しかし、ますます社会から隔てられる雰囲気を感じる。「私たちの立場に立って、と要求するのはハードルが高いと思う。まずは関心を持って。ちゃんと見て」

川合さんは、人と人を分断しない社会を目指す候補者を見極めて、一票を投じるつもりだという。

川合さんが乗った路線バスの運行会社は、本紙の取材に「乗りやすいよう、バスの位置を調整することは乗務員へ周知しているが、徹底されていなかった。障害者本人でなく、介助者に聞いてしまうケースは多いかもしれない。会社として認識し、研修などを通じて改善したい」と話した。(柏崎智子)

<障害者差別解消法> 昨年4月に施行。国や地方自治体、民間事業者に対し、障害を理由にサービスの提供を拒否・制限することを禁じ、合理的な配慮の実施を求めている。内閣府は不当な差別の例として、学校の受験や入学を拒否することや、不動産物件を紹介しないこと、本人を無視し介助者へ話し掛けることなどを例示している。

 

 

■DV 障害女性のDV相談激増 健常者女性の8倍ペース

毎日新聞2017年10月11日 16時20分(最終更新 10月12日 11時12分)

https://mainichi.jp/articles/20171011/k00/00e/040/293000c

 

全国の配偶者暴力(DV)相談支援センターに寄せられる相談のうち、障害のある女性からの相談が、健常者の女性の8倍のペースで増加していることが分かった。「世話をしてもらっているのだから」と、家庭内で圧倒的に弱い立場に置かれやすい傾向があるという。

内閣府男女共同参画局の調査結果をDPI(障害者インターナショナル)女性障害者ネットワークが分析した。2016年度の健常者女性の相談は13年度と比べ4.8%増え9万7787件、一方、障害がある女性からの相談は37.4%増え6929件だった。

毎日新聞が各地のDV相談窓口に取材したところ、長期にわたるDVでうつ病を発症したケースや、知的障害者が交際相手や配偶者から金銭的、性的に搾取される内容が目立った。被害者や加害者に発達障害が疑われ、コミュニケーションがうまくいかないことから暴力に発展するケースも増えている。支援につながるまでに時間がかかることも多く、警察ざたになったり病院にかかったりして初めて相談する人も多いという。

また、相談後、DVから逃れるために車椅子の女性が保護を求めても保護施設がバリアフリーでないため断られたり、セキュリティーが整っていない福祉施設に入れられたりするケースもある。西日本の相談窓口の担当者は「DVを受けている人は判断力が落ち、自分で相談できない人も多い。周りの人が話を聞き、相談窓口を紹介して支援につなげてほしい。当事者は小さなことでも遠慮なく相談して」と訴える。

障害者の人権問題に詳しい加納恵子・関西大教授(社会福祉学)は「ようやく声を上げる人が出てきたが、まだまだ潜在化しているはず。福祉現場が女性支援の視点やノウハウを持ち、DV相談窓口は聴覚障害者も使えるようにメール相談を設け、周知の徹底も図るべきだ」と指摘する。「男女それぞれに抱える生きづらさにも目を向けた障害者施策を議論する必要がある」と訴える。【上東麻子】

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