精神障害者

【精神障害】 精神保健福祉法の「改正」が見送られました

野崎泰伸(障問連事務局)

 

参議院で可決されていた精神保健福祉法の「改正」案ですが、国会の会期が延期されなかったため、衆議院での審議ができず、法案の成立は見送られました。以下、その新聞記事です。

 

■精神保健福祉法 継続審議へ 衆院審議入りできず

毎日新聞2017年6月15日 20時30分(最終更新 6月15日 20時30分)

http://mainichi.jp/articles/20170616/k00/00m/010/081000c

相模原市の障害者施設殺傷事件を受け、措置入院患者の支援を強化する精神保健福祉法改正案は15日、継続審議となる見通しとなった。16日の衆院本会議で決議される見込み。当初、事件の再発防止策としての側面が強調されたため、野党から「障害者の差別偏見につながる」との批判が噴出。先議の参院で審議が大幅に延び、衆院では審議入りできなかった。

改正案は、措置入院した患者が退院後も継続的に医療などの支援を受け、社会復帰できるよう、関係自治体や医療機関などで「精神障害者支援地域協議会」を設置し連携する仕組みを設ける。措置入院を決めた都道府県や政令市は、入院中から退院後支援計画を作成し、退院後は居住先の保健所設置自治体が計画に基づき相談指導を実施する。

このほか、強制入院の要否などを判断する精神保健指定医の資格が不正取得されていた問題を受け、資格の取得や更新の審査を厳格化することも盛り込んでいた。【山田泰蔵】

 

『週刊金曜日』6月2日号では、「まるで共謀罪のような監視強化」であるとし、「要注意の人物とされたら、行政をはじめとする関係機関がかかわり続ける。警察にも個人情報が流れ、動向を把握される。ささいなことで身柄を拘束されないか、いつも気にしながら生活する――」と述べられています。支援を名目にした監視強化に容易につながっていくというこの法「改正」の意図が的確に表現されています。

同号では、次のようにも書かれています。

「個別ケース検討会議に警察は原則入らないと政府は言いつつ、「自殺のおそれ、繰り返し応急の救護を要する状態」などは加われると答えた。警察も参加する地域ごとの「代表者会議」は措置入院の運用一般を話し合う場で、個別事例は扱わないとしながらも、「確固たる信念を持って犯罪を企画する者」「入院後に薬物使用が見られた場合」は、関係機関が個別に警察と連携すると説明した」。

なぜ、「福祉」の法律の「改正」に、このような警察との連携強化が言われるのでしょうか。また、「例外とされたことでも、実際の運用で例外と原則が逆転していきがちなのは、強制入院や隔離・拘束の多さを見れば明らかだ」とも述べられ、本人の病状の安定を目指すことよりも、地域の治安を守ることのほうが優先されてしまうことは明らかなのではないでしょうか。そしてそれは、「精神障害者なら危ないことを行いかねない」というような予断と偏見に根差していることは言うまでもありません。「監視ではなく支援だと政府が強調するなら、措置入院患者全員に弁護士を付けてはどうか」とも述べられています。

国会を延期しなかったのは、森友・加計問題で追及されるのが嫌だっただけで、「改正」案自体は継続審議が持ち越されただけです。早晩、廃案に追い込まなければならないと思います。

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