新聞記事から

【報道】 新聞記事より

■現場から・ひょうご 相模原殺傷事件、尼崎集会 「障害者は不幸」に反発 /兵庫

毎日新聞2016年12月7日 地方版

http://mainichi.jp/articles/20161207/ddl/k28/040/453000c

 

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人が死亡、27人が重軽傷を負った殺傷事件を考える集会が4日、尼崎市立中央公民館(尼崎市西難波町6)で開かれた。殺人容疑で逮捕された元職員は動機に絡み「障害者がいなくなればいい」と供述しているという。「元職員だけの特異な思想なのか。社会にこんな考えが広まっていないか」。参加者の言葉には事件への強い憤りと不安が入り交じった。【石川勝義】

集会は障害者とその家族、施設職員らが、事件について自由に語り合おうと企画し、約80人が参加した。

言語などに障害がある男性は、インターネットの掲示板で目にする「障害者は死ね」「生きている価値はない」「皆殺しにする」などの書き込みが気になっていた。内容から、書き込んでいるのは大半が障害者施設の職員や介護に携わっている人のようにみえた。男性は「こんな書き込みがネットにあふれている。元職員は『自分がやったことは正しい』と思っているだろう」と指摘。元職員のような考え方をする人が他にもおり、同様の事件が繰り返される心配はないかと危惧した。

重度の知的障害者や身体障害者が利用する施設の女性ヘルパーは事件後、「私たちは大丈夫だろうか」と自らに問うた。「絶対、そうはならない」と思う。だが自分の心の根底に障害者を差別する気持ちがあり、それを利用者は感じながらも受け入れている、ということはないだろうかという考えもよぎった。「罪を犯した人だけの問題ではない」と感じたという。

元職員は、衆院議長に宛てた手紙で「私の目標は重複障害者の方が家庭内での生活、および社会的活動が極めて困難な場合、保護者の同意を得て安楽死できる世界です」とつづったとされる。筋肉が衰える病気の娘を持つ母親は「このような元職員の考え方が、社会全体を覆い始めていないか」と不安をにじませた。さらに「障害や難病を持つ人は、胎児の段階から終末期まで命を軽視され、生きることが拒否されていないか」と訴えた。

また、知的障害のある男性は「仲間もたくさんできたし、僕は知的障害者に生まれてきてよかったと思っている。障害を持つ人は強い。障害者を『弱い』と思う人が差別するんじゃないか」と、それぞれの障害者が持つ個性や可能性などを考慮しない考え方を批判した。

生活支援サービスの社会福祉法人を運営する女性は、「『これは決して特異な事件ではない』ということを自身に突きつけられたような怖さを感じた」と語った。過去に介護施設に勤務した経験から、施設では食事や風呂などで個人の趣味・嗜好(しこう)が考慮されないことが多い、と指摘。「施設側が障害者を集団としてひとくくりでみてしまいがち。厳しく管理したり、ルールを決めたりする中で、障害者が人としてではなくモノのように扱われるケースがあり、そんな状況下では障害者も職員も閉塞(へいそく)する。それが事件の一因になったかもしれない」と語った。

さまざまな意見があったが、「障害者は不幸な存在」と決めつけられることへの反発や「障害者の生活を知ってほしい」と望む声が目立った。また「幼い頃から障害者と接する機会を設けたら、こうした事件を防げるのではないか」と提言する人も多かった。集会の実行委員会のメンバーで「NPO法人尼崎障害者センター」代表理事の広瀬徹さん(72)は「いろいろな立場から思いを出し合えてよかった。答えの一つとして『障害者のことを知ってもらう』という道筋が見えた気がする」と、今後に期待を込めた。

 

 

■障害ある子もない子も一緒に・インクルーシブ教育どう浸透

先進地・芦屋市 普通学級での学習確保

北海道新聞 2016年12月5日

 

障害のある子もない子も一緒に学ぶ「インクルーシブ教育」。2014年に日本が批准した国連障害者権利条約が求める理念だ。障害のある児童生徒の就学先は「本人・保護者の意見を最大限尊重する」ことが原則だが、理解が進んだとは言えない現実がある。1980年代からインクルーシブ教育を実践する先進地・兵庫県芦屋市の取り組みや、道内事情を探った。

11月上旬、芦屋市立精道小5年の家庭科の調理実習。能瀬智成君(11)がおわんの中のみそを溶こうとすると、クラスの仲間が手を差し出しおわんを支えた。

愛称とも君。生後2カ月で脳内出血を起こして右脳を摘出し、左手が動かない。普段は車いすを使うが、校内では装具を付けて歩く視野も半分しかない。しかしとも君が段差などに差し掛かると、友達が「危ない」とすぐに声をかける。

重い障害のある児童の場合、特別支援学校や普通学校内に設けられた特別支援学級などに通い、障害のない子供たちと別教室で学ぶケースが一般的。だが、とも君は同小に1年の時から通い、同級生に支えられながら同じ教室で過ごす。

□仲間たちの支え

今夏の運動会で、とも君は応援団に参加。仲間がとも君にもできる応援方法を考えた。リレーにも出場し、仲間が1周走るところをとも君は20メートルだけ走り、バトンを渡した。母の仁美さん(42)は「『とも君どうやったらできるかなぁ』って仲間が支えてくれるので、とも君も『僕できる!』と自己肯定感を得られている」と話す。

障害児の就学先の決定過程で、芦屋市は独自の仕組みを整えている。

通常、小中学校に入学する子供は事前に就学時健康診断を受ける。障害があると判断された場合、市町村教委は本人や保護者と相談の上、学校を決め、就学通知書を送る。2013年の学校教育法改正で、就学先を決める際は本人や保護者の意見を最大限尊重して合意形成することが定められた。ただ、本人が普通学校を希望しても教委側から「受け入れ態勢の整った特別支援学校のほうがいい」と説得されるなどして諦める例も後を絶たない。

□人権教育が普及

一方、芦屋市は最初から普通学校を指定した就学通知書と就学時健康診断の案内を同時に保護者へ送る。診断内容に関係なく、普通学校に入れる仕組みだ。入学後、障害のある児童生徒は、形式的には学校内の特別支援学級に籍を置くケースもあるが、授業は原則として普通学級で受ける。特別支援学校などを希望しない限り、普通学級での学習の機会が維持されるという。

芦屋市には市立の小学校8校と中学校3校のほか、県立の特別支援学校1校があるが、市教委によると、障害のある小中学生計227人のうち、207人が小中学校に通う。ほとんどが、とも君のように普通学級で学んでいる。

同市では1980年代から、精道小で普通学級に障害児を迎える取り組みがスタート。「差別される痛みは差別を受けてきた人たちから学べ」という人権教育の観点から、「健常者と一緒に学びたい」という障害児の声に向き合ったという。その後、同小の取り組みが市内全体に広がった。

芦屋市で30年余り、障害児教育を担当した守本明範さん(65)は「(特別支援学級や特別支援学校など)『多様な学び』の場はいらないが『多様な支援』は必要」と指摘。精道小には自閉症、弱視、知的障害、肢体不自由の児童が普通学級で学ぶが、障害児支援担当の教員が1人当たり数人を受け持つなど、教員による支援体制も整える。

インクルーシブ教育は障害のない子も変える。とも君担当の教員佐藤裕志さん(35)は「自分以外のところにアンテナが広がって、優しい子が知らずと増えていきます」と話す。

 

 

■都議会 障害者差別解消の条例成立を目指す 代表質問で小池知事答弁 /東京

毎日新聞2016年12月8日 地方版

http://mainichi.jp/articles/20161208/ddl/k13/010/133000c

 

小池百合子知事は7日の都議会代表質問で、障害者差別の解消に向け新たな条例案を制定する考えを明らかにした。2018年度の成立を目指す。長橋桂一議員(公明)の質問に対する答弁。

小池知事は「誰もが生き生き生活できる、活躍できる都市であるダイバーシティーを目指している」としたうえで「条例の制定を目指す」と明言。障害者や家族の相談に応じる仕組みや、差別的な事案が発生した企業などに助言や指導、勧告などができる仕組みを盛り込むことを考えているという。(以下略)【柳澤一男】

 

 

■京都の飲食店、聴覚障害者の入店拒否 「不適切だった」と謝罪

京都新聞 2016/12/06 08:09

http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20161208000020

 

京都市内の飲食店を訪れた聴覚障害者が昨年8月、障害を理由に入店を拒否され、支援者が京都府の相談窓口に届け出ていたことが7日、分かった。昨年4月施行の「府障害のある人もない人も共に安心していきいきと暮らしやすい社会づくり条例」は障害を理由とする不利益な扱いを禁じ、可能な限り対応する「合理的配慮」の提供を事業者に求めている。条例施行後、府内で障害者への入店拒否が発覚するのは初めて。

府によると、府外在住の聴覚障害者が飲食店を訪れた際、従業員に手話で入店したい旨を説明した。従業員は身ぶりで入店を断り、筆談による対応も行わなかった。支援者が府に相談。その後、店側は「従業員の対応が不適切だった。再発防止を徹底する」と、府の相談員を通じて本人側に謝罪したという。

条例は障害者差別解消法(2015年成立、今年4月施行)に沿った内容。府は昨年4月、障害者への不利益な扱いに関する相談窓口を設けた。府が7日、府議会一般質問の答弁で報告した昨年4月以降の相談件数は今年9月末現在、計118件。相談内容は、バリアフリーなど「建物や公共交通」が最多の34件、今回の入店拒否を含む「商品・サービス」が16件と続いた。

府は入店拒否について「深刻な事案」とし、障害者支援課は「個別の相談事例は今後公表する。事業者などへの啓発に努めたい」としている。


■入所の障害者1万人減目標 厚労省、地域生活に移行

日本経済新聞 2016/11/12 0:12

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO09464470R11C16A1000000/

 

 

厚生労働省は11日、入所施設で集団生活をする障害者約13万人のうち、9%以上に当たる1万人強が2017年度から4年間で施設を退所し、自宅やグループホームなど地域での暮らしに移れるようにするとの目標を定めた。同日開かれた社会保障審議会の部会に示した。

障害者の入所施設では今年7月、相模原市で19人が殺害される事件が発生。障害者団体からは地域移行を進めれば障害者への理解が深まり、同種の事件の再発防止にもつながるとの指摘がある。

障害福祉では、各自治体が3年ごとに実施計画をつくっており、今回の目標は次回の計画策定に向けた厚労省の基本指針に盛り込む。

厚労省はこれまでも地域生活への移行を進めており、前回の目標では14~17年度に入所者12%が退所できるようにすると定めていたが、達成は厳しい状況。入所者の高齢化と重度化が進んでいることが主な原因で、グループホームの整備などで9%以上の達成を目指す。

このほか、障害のある子供をサポートする児童発達支援センターを20年度末までに全市町村に1カ所以上設置するとした。〔共同〕

 

 

■相次ぐ視覚障害者事故防げ!ホームドア、大阪、京都、三ノ宮など新設へ…「点状ブロック」整備3年前倒し JR西日本

産経West 2016.11.17 08:00

http://www.sankei.com/west/news/161116/wst1611160091-n1.html

 

相次ぐ視覚障害者の駅ホームからの転落事故を受け、JR西日本は16日、視覚障害者がホームの内外を判別するための「内方線付き点状ブロック」について、現在の整備計画を3年前倒しし、平成29年度までに設置すると発表した。1日あたりの乗降者数1万人以上の約190駅が対象となる。

内方線付きの点状ブロックは線状の突起があり、足やつえで触れれば、どちらがホームの内側か分かるようになっており、事故減への効果があるとされる。

JR西管内の1197駅のうち、内方線付き点状ブロックが整備されているのは約4割の474駅。JR西は、1日あたりの乗降者数が1万人以上の駅から優先的に整備を進めており、平成32年度までに優先設置を終える計画だった。

ただ、8月には、東京の地下鉄駅で、盲導犬を連れた視覚障害者の男性がホームから転落して電車にはねられ死亡する事故が発生。10月には、大阪府柏原市の近鉄河内国分駅でも視覚障害者の男性が転落死する事故があった。

このため、JR西では優先整備対象約190駅のうち未設置の約100駅で設置を急ぎ、転落防止策を強化するという。

一方、JR西は、関東と比べて設置が遅れているホームドアについても、整備を加速させる。来年春には大阪駅と京橋駅で新たにホームドアを設置するほか、乗降客の多い京都駅や三ノ宮、転落事故の多い西明石駅でも準備を進める。

また、現在、京橋駅と新今宮駅に設置し、三ノ宮駅でも12月に稼働する転落防止用のカメラについても、新たに西明石、天王寺、鶴橋の3駅で導入することも明らかにした。

JR西の来島達夫社長は「昨今の事故状況を踏まえハード面に加え、声かけなどのソフト面にも力を入れたい」と話している。

 

 

■障害者と共に生きる社会を 自立支援施設職員講演

神戸新聞NEXT 2016/11/27 06:30

http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201611/0009701780.shtml

 

神奈川県相模原市の障害者施設殺傷事件から4カ月となった26日、障害者の自立支援施設「えんぴつの家」(神戸市中央区)の事務局長山田剛司さん(49)が、同区のあすてっぷKOBEで「相模原事件を考える 障害者は世間の嫌われもの?」と題して講演した。

民間団体「憲法の改悪に反対する元教職員ひょうごネットワーク」の主催。約30人が参加した。

山田さんは、相模原の事件と、障害のある胎児の中絶の背景に、障害者への差別感情という共通点があると指摘。出生前や出生後の検診、特別支援学校などを例に挙げ、「障害者差別は選別と隔離、抹殺に収れんされる。世界が分けられている状況が差別。個人主義、能力主義的な価値観が、障害者と別々に生きる社会をつくっている」と語った。

「別々に生きる社会から共に生きる社会」がキーワードといい、「障害者を健常者の世界に引っ張ってくるのではなく、交ざり合う必要がある。障害者と付き合わないと始まらない」と強調。そうした社会の実現に向け、法制度のほか、能力主義などの価値観を改める必要があると指摘した。(紺野大樹)

 

 

■障害者差別解消条例と手話言語条例制定へ 宝塚市

神戸新聞NEXT 2016/11/15 05:30

http://www.kobe-np.co.jp/news/hanshin/201611/0009666872.shtml

 

兵庫県の宝塚市は障害者差別解消に関する条例と、手話言語条例の制定を目指し、15日開会の市議会定例会に条例案を提出する。

障害者差別解消の条例案では差別を禁止し、市や市民、事業者の責務を明らかにした。有識者らでつくる調整委員会を設置。入店拒否など差別と思われる事案で、助言やあっせんをする。

あっせんに従わない場合は、市が必要な措置を勧告。正当な理由がなく勧告に従わなければ、事業者名などを公表する。対象は、個人を除き、行政機関や市内で事業を行う企業や団体。

今年4月に障害者差別解消法が施行されたことを受け、制定を決めた。同様の条例は県内で明石市に続き2例目。来年1月に一部を施行し、7月に完全施行を目指す。

また、手話言語条例案は、手話を「言語」と位置付け、理解促進や普及を図る。市の責務や、市民や事業者の役割を定めた。また、市が推進する施策として研修や情報発信、意思疎通支援などを記している。

宝塚ろうあ協会の申し入れを受け、条例制定を決めた。市によると、県内では神戸や明石、淡路市などで同様の条例を制定しており、阪神間では初。12月中の施行を予定している。(土井秀人)

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