オールラウンド交渉

【報告】 兵庫県との交渉報告~差別解消法の施行状況について~

障問連事務局

9月15日、兵庫県中央労働センターにおいて、施行されて約半年だが差別解消法の施行状況と課題について兵庫県障害福祉課との交渉が行われた。冒頭、副課長から挨拶され、以下、県からの回答を中心に報告します。

【1】条例制定について

〈県回答〉・・・本県では2年間かけて条例の必要性を検討してきたが、法律が始まった事により条例の有無に関わらず、主務大臣や知事・市長等が行政指導を行う仕組みが整った。例えば、これ以上の行政処分を求めるのであれば条例でなく法律が必要になってくることもあり、現段階では条例を必要とするだけの根拠(条例事項)がないと考えおり、従って啓発目的、理念的な条例は一過性のもので終わってしまう所が最大のネックと考えているため、条例の策定に多大な時間をかけるよりも、むしろ実効性のある施策、フォーラムだとか、本県で既に実施している合理的配慮アドバイザーの派遣等、様々な施策の充実に取り組んで行きたいと考えている。

 

【2】差別解消法の施行状況

〈県回答〉

①   「県下で差別解消法の適用になった事例」・・・主務大臣や県知事による勧告等の行政指導した件数と思いますが、行政指導には口頭によるものや任意の資料提出など幅広く含まれるため、実際に県下で何件あったのかは把握できていない。

②   「差別解消相談センター」・・・取組み状況としては4~7月の実績として相談件数99件、1日平均1.22件。内訳は電話88件、FAX1件、メール6件、来所4件。内容は差別に関する相談は非常に少なく、生活上の不満・愚痴が多い。

③   「相談センター窓口の柔軟な対応」・・・事業者と障害者の建設的対話を通じた相互理解が法の趣旨となっており、相談センターが障害のある方に代わって事業者に物申すというものではない事をご理解いただきたい。障害のある方が事業者と話をする上での助言アドバイスと位置付けている。また「重大な案件」とは事業者が対話の窓口を一切閉ざしてしまう等を想定している。また相談員は県社会福祉士会、県精神保健福祉協会、2つの協会に所属する方で、中でも経験が豊富な方、対応力の高い方を選抜していただいて派遣していただいているので、障害のある方が相談できる環境を作られていると考えている。

④   「各市町との連携」・・・必要に応じて情報交換等を行っている。また県であれ市町であれどこに相談していただいても良いと考えているので、重大な案件については市町と情報交換を行っている。

⑤   「合理的配慮アドバイザー」・・・これからの派遣予定も含め、現在は5件。

⑥   「障害者委員会」・・・全部で10人で構成。8月31日に第1回の委員会を開催した。障問連からは藤原久美子さんが委員として参画いただいて、必要な意見を頂いた所です。

⑦   「弁護士相談」・・・4~7月の相談件数は70件、ただしこれは火曜・木曜に実施している火曜だけの分。1日平均4.38件。内訳は電話68件、FAX2件。精神科病院の退院請求、公衆電話の前に案内を貼っていることもあり、精神障害の方の相談が非常に多くなっている特徴がある。

⑧   「政策プレゼンテーションコンテスト」・・・先々週募集を締め切った。選考過程の都合上、何件あったのかは言えないが、複数の応募があった。

⑨   「差別解消支援地域協議会」・・・相談センターや自立支援協議会、各部会に寄せられた事例、障害者委員会で分析した課題や事例について、特に特筆すべき事項について協議していきたい。協議会は「県障害福祉審議会」と兼ねていることもあり、この審議会は知事の附属機関になっており、障害者に関する有識者会議という観点から言うと非常に格付けが高く、それと一体のものとして開催している。従って、今後の施策にも直結させることができるという仕組みにしている。しかしながら、まだ差別に関する事例が十分に蓄積できていないこともあり、地域協議会の開催については、まだ決まっていない。

 

【3】差別解消法の課題

いろいろな意見があるところだが、以下三つにまとめられるだろう。

①   「法律上、差別に関する明確な定義が無い」、また「差別的取り扱いに関する正当、不当」、「合理的配慮の提供に関して過重かどうか」について明確な判断基準が無いことが最大の課題だと考えている。従って地域によって過重かどうかに関して考え方にバラツキが出る可能性がある。また法務局に人権擁護の仕組みがあるが、そういった所との連携、連結が全国統一的に実施する必要性があると考えている。

②   差別解消法はあくまで行政指導、お願いレベルに留まっているので、きっちりと稼働させるのであれば、行政処分まで踏み込むような解決の仕組みも必要になるかもしれない。

③   司法上の効力が無いため、障害のある方の救済/保護の観点から言うと、差別解消法は極めて限定的な力しか持っていない。

以上これらを踏まえると、もちろん差別解消法は障害のある方の人権擁護という観点では非常に画期的な法律ではあるが、法律の持っている力を率直に評価し法改正をしっかり求めていくのが本来あるべきものではないかと思っているところです。

以上が要望書の回答ですが、1つ追加すると、4月以降、差別に関わる相談が顕著に増えている。しかしながら、全てがそうではないが、残念ながらご自分の要望が通らなければ差別だとか合理的配慮を提供してもらえないとか、我がままを通すような道具(武器)として差別解消法を使おうとする人が残念ながらいらっしゃる所がある。企業もそういった事に直面している例もあり、そうなると本来の目的である共生社会の実現とはむしろ逆の動きも正直出てきていて、そこは正しく法律の趣旨を運用していくべきではないかと感じている。

 

【4】交渉中の質問に対する回答/説明

○「合理的配慮」と「環境整備」

法律に照らして正確に言うと、合理的配慮の正しい解釈は不特定多数の障害者に対応するものでなく、特定の障害者がその場で必要だとの求めに対して、過重な負担にならない範囲で提供するもの。それに対してバリアフリー化や手話通訳者を常に配置する等は不特定多数の障害者を対象とするので、それは合理的配慮でなく、その前提となる「環境の整備」。環境整備で言うと、行政機関も事業者も共に努力義務になっている。それを大前提として説明します。環境整備のバリアフリーについては兵庫県で推進するユニバーサル社会の実現に向けて早く実現させたいが、事業者による投資負担も伴い一律にすぐに対応できるのは難しいところもあり、そういう時のために合理的配慮がある。建物の構造が変えられなくても現状の中で、取りえる可能な対応をする。それで社会的障壁が完全に取り除かれたわけではありませんが、その上で環境の整備を図って行ってほしいと思っている。

○国への要望

2年前、昨年度もずっと要望は上げている。今年の7月に県としての要望は上げているし、県内に政令指定都市を抱えている16都道府県の障害福祉主管課長会議を兵庫県主催で行い、その会議の要望書として、その旨を書き、兵庫県障害福祉局長が内閣府に行き直接要望しました。

○県職員への研修

・・・行政職員の対応窓口としては、福祉の専門職ではないので、どこまで対応できているかという所はあるが、差別解消法ができ県職員対応要領を作っている。それを職員向けに研修をして、特に今年の夏には本庁と10か所の県民局、それを全て回り、職員対象に差別解消法、職員対応要領の説明に回った。全て末端の職員に浸透するまでには時間を要するが、対応はしっかりと進めている事はご理解いただきたい。

○虐待防止法と比べ差別解消法の仕組みの違いについて等

虐待防止法の仕組みと差別解消法の仕組みが違うのは、法律をきっちり作り込んでいるのかどうかが最大の要因。虐待防止法は厚労省、行政の職員がしっかり作り上げて、内閣として提出した法律ですが、差別解消法は元々議員立法として議員が作り、最終出す段階で内閣府に押し込んで、内閣が提案する法案にしようと上っ面だけ整えた。差別解消法の曖昧な内容で、よく内閣法制局の審査も通って成立にこぎつけたなというのが我々の評価。全てを法律の生にするわけではありませんが、一方で公務員は法律に則っての対応しかできないという大きな枠をはめられているので、その事もご理解願いたい。

差別解消相談センターとしても遠方でも現地に行けなくても、電話で状況の確認をしていますし、相談センターで全て解決できるとは考えていないので、必要ならより専門的な窓口、消費生活相談センターの窓口につないだり、そういったより適切な機関を紹介するのも重要な役割だと考えています。

事例も、各都道府県も内閣府も差別の事例が無いという事で一生懸命集めている段階です。1年~2年で、できるとは思いませんが、差別の事例が集まってきたら、一定の相場感ができあがって判断基準も出てくるのではないかと考えています。

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