【報道】 新聞記事より
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201606/0009194918.shtml
4月に障害者差別解消法が施行され、兵庫県内では初の国政選挙となる参院選を控え、神戸市が仮設スロープ設置による投票所の段差解消や、記載台への滑り止めシート導入に取り組み始めた。同法は障害者の特性に応じた「合理的配慮」の提供を行政に義務付けている。これまでも点字投票や代理投票などが行われてきたが、各自治体は障害者がより投票しやすい環境づくりを模索する。
同法は、障害者や介助者から配慮を求められた際、過重な負担とならない範囲で行政や企業に対応を促す。行政機関が提供する合理的配慮の例として、駐車スペースを施設近くにする▽段差がある場合に仮設スロープで補助する-ことなどが挙げられている。
神戸市は、職員が市内の投票所355カ所を訪れ、段差の有無やスロープを取り付けられるかどうかなどを調べた。必要な箇所に対応していく方針。
また、投票所の記載台はアルミ製で投票用紙が滑りやすいため、滑り止めシート100枚を導入。試験的に全26カ所の期日前投票所に置き、投票用紙の下に敷くことで、手の不自由な人が記入しやすくなるようにしたいという。同市選挙管理委員会は「来年の兵庫県知事選や市長選での本格導入も検討したい」と話す。
県内の他の自治体も、きめ細かい配慮ができるよう準備を急ぐ。明石市は投票事務に携わる職員らに同法への理解を深めるよう促し、西宮市は視覚障害者の投票に必要な点字器の使い方を再確認する。
障害者の自立支援などに取り組むNPO法人ウィズアス(神戸市長田区)の鞍本長利代表理事(65)は「自治体によって合理的配慮の内容に差が出ないようにし、どの投票所でも障害者が1票を投じやすい環境を整えてほしい」と訴える。(段 貴則)
■「福祉仮設整備を」障害者ら段差不安
読売新聞 2016年06月18日
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20160618-OYS1T50037.html
熊本地震から2か月が経過し、被災者の仮設住宅入居がようやく進みつつある中、障害者や足が悪い高齢者からは「段差を解消してほしい」と改善を求める声が上がっている。専門家は「福祉仮設住宅」の整備を提唱している。
熊本県益城町の仮設住宅の建設現場。今月上旬、被災した障害者の支援に取り組んでいる熊本学園大の東俊裕教授が、県職員らと訪れ、トイレなどの各種設備が障害者に配慮した仕様になっているかどうかを調べた。弁護士でもある東教授は、自らも小児まひで車いす生活を送る。
トイレの入り口は車いすが通らず、車いすを使わない場合も、介助者が付き添えるスペースがなかった。35戸のうちスロープが付いた3戸の住宅でも、浴室の入り口に2段の段差(11センチと18センチ)があった。
東教授は「障害者だけでなく、足の悪い高齢者にも使いづらいと思う。施工前に障害のある人の声も聞いてほしかった」と話す。今後、調査結果をまとめ、県に改善点について要望するという。
■高齢者・障害者らの安否確認 要支援者名簿生かせず難航
産経ニュース 2016.6.17 07:04
http://www.sankei.com/region/news/160617/rgn1606170008-n1.html
熊本地震では、介護を必要とする高齢者や障害者らの安否確認と避難に、課題を残した。多くの自治体は事前に要支援者名簿を作っていたが、管理システムがダウンしたり、情報が古かったりした。普段から名簿を外部に提供する場合は、記載された本人の同意が必要で、災害対策のハードルになっている。
■更新
政府は平成25年、災害対策基本法を改正し、支援が必要な人の名簿作成を市町村に義務付けた。東日本大震災で65歳以上の死者が全体の6割を占め、障害者の死亡率は住民全体の約2倍に達したからだ。
総務省消防庁によると、昨年4月時点で全国の市町村の52%が名簿を作成済みで、今年3月までの作成予定を含めると98%に上った。だが、熊本地震の例からは作った後の運用に課題が浮かぶ。
2度の震度7に襲われた熊本県益城町は、約2400人分の名簿データを準備していた。ところが、地震後、役場に入れず、パソコンも動かなくなり、5月上旬まで閲覧不能に陥った。結局、医療団体が避難所を回るなどして安否を確認した。町の担当者は「名簿を印刷し、紙で保存しておくべきだった」と悔やむ。
同県嘉島町は名簿の更新が滞り、亡くなったり、引っ越したりした人が載ったままだった。慌てた担当者は、地域の団体が作っていた別の名簿を使って安否確認を進めた。同県宇土市でも、安否確認先として掲載された近親者に電話すると同居しておらず、逆に安否を尋ねられたケースがあった。
■安心
行政に代わり、活躍したのが民間団体だ。社会福祉法人「熊本県視覚障がい者福祉協会」が運営する熊本県点字図書館(熊本市)は、利用者名簿や、県が開示した視覚障害者手帳を持つ人の情報を基に、13市町村計約1900人に、電話や戸別訪問をした。篠原静雄館長(54)は「必要な物資や困ったことも聞いた。細やかな支援で民間が担う役割は大きい」と指摘した。
益城町の自宅が全壊した大西光さん(72)は、緑内障を患う。避難所にいた4月16日、点字図書館の職員から携帯電話に連絡があった。「身の回りのことまで相談に乗ってくれて安心した」と振り返った。
■同意
災対法は平常時から消防や警察、民生委員、自主防災組織に名簿情報を提供すると規定する。ただ、本人の同意が得られた場合に限られ、同県阿蘇市の担当者は「同意しなかった人にも支援は必要だ。個人情報との兼ね合いが難しい」と漏らす。
自治体が条例で規定を設ければ、本人の同意なしに外部へ提供でき、支援の実効性を高めることになる。しかし、熊本市の担当者は「内容を詳しくするほど外部提供は難しい。精神疾患や持病などプライベートな情報まで、(自治体が)勝手に提供できるようにする条例は現実的ではない」と説明した。現状では戸別訪問で一人一人理解を得るしかない。
東日本大震災の際、福島県南相馬市から名簿の提供を受けた同市のNPO法人「さぽーとセンターぴあ」の郡信子施設長(55)は「個人情報を守っても、命を守れなければ意味がない」と語った。当時、名簿の情報が古く、市に障害者手帳を持つ人の情報を求めたが、開示まで2週間以上かかった。郡氏は「使える名簿が手元にあり、すぐ支援に動ける環境が必要だ」と訴えた。
7月 2, 2016