国/県の制度 教育

【報告/国の制度動向】 さまざまな障害者に係る法律が改正されています

障問連事務局

■総合支援法の残された課題

別項のように「障害者総合支援法改正案」は今国会会期末で可決承認の見込みです。附帯決議に盛り込まれましたが、根本的な問題が残されています。

「障害者自立支援法違憲訴訟団」の弁護団長の竹下弁護士は、4月21日訴訟団の集会で、「基本合意が無視されるなら民主主義も法規範もありえない」と発言されています。

「基本合意」(2010年1月7日)とは、自立支援法違憲訴訟において政府が自立支援法は間違っていたと全面謝罪し、和解に際して政府が原告団・弁護団と取り交わしたもの。その中には「介護保険優先原則の廃止」も含まれていたが、今回の総合支援法改正の中には盛り込まれていない。現在も厚生労働省のホームページに基本合意は掲載されています。以下、抜粋して紹介します。

○「利用者負担について」は、「収入認定は、配偶者を含む家族の収入を除外し、障害児者本人だけで認定すること」とされているが、実施されていません。そして・・・

介護保険優先原則(障害者自立支援法第7条)を廃止し、障害の特性を配慮した選択制等の導入をはかること」とされています。

これも実施されていません。障問連加盟団体からも次々と介護保険に係る切実な相談、当事者の不安な声が寄せられており急務の課題です。

また基本合意の中には、介護保障に係る支給決定の在り方についても、「どんなに重い障害を持っていても障害者が安心して暮らせる支給量を保障し、個々の支援の必要性に即した決定がなされるように、支給決定の過程に障害者が参画する協議の場を設置するなど、その意向が十分に反映される制度とすること。 そのために国庫負担基準制度、障害程度区分制度の廃止を含めた抜本的な検討を行うこと」とも明記されていますが、何ら実施されていません。

基本合意は民主党政権時代に取り交わされたものですが、政権が変わろうとも維持されなければならない当たり前の約束です。2018年度には報酬改定が実施され、同時に今回の総合支援法の見直しの多くが2018年度から実施されます。それに向けた議論も社保審等で始まりますが、国に対しても地域での取り組みの中でも、この基本合意の履行を、求めて行かなければならないでしょう。

 

■成年後見促進法が成立

4月6日、参議院本会議で「成年後見制度利用促進法」が成立しました。しかし成年後見制度をめぐっては、最高裁調べで約56憶円にも上る後見人による財産の横領が報告され、被後見人の意思を無視した居所指定など不適切な運用が指摘されています。また成年後見制度は、本人に意思能力がないという前提で本人に代行して後見人等が決定しますが、それ自体、「国連障害者権利委員会」が「障害者権利条約に反する」との見解をすでに示しています。国会審議でも、現行の枠組みのままでは被後見人の意思を汲まない不適切な運用が進むとの懸念もあり、「附帯決議」により「障害者権利条約第12条〈法の前に等しく認められる権利〉の趣旨に沿って被後見人の自己決定権を最大限尊重すること」「後見人による不正を防ぐための措置を講じること」を政府に求めています。

同法の内容は、需要を把握して後見人の担い手を育成するなど制度の利用を促すが、同時に・・

①   被後見人の権利制限の在り方

②   後見人の事務範囲

③   後見人を監督する家庭裁判所の人員体制の整備

などを検討し、法施行後3年以内に法制上の措置を講じる事を政府に求めています。また、推進する体制として、首相をトップとする「成年後見制度利用促進会議」を内閣府に設け、基本計画を閣議決定していくもの。

しかし、突然親族が後見人を名乗り、仲間とグル―プホームで暮らしていた知的障害者を突然、他市の施設に入所させるなど、本人の意思を全く無視した不適切な運用があり、『福祉新聞4/11』によると、本人の意思をきちんと尊重するように十分改善された上で、利用を促進するべきであり、順序が逆だと指摘されています。

その一方で、障問連加盟団体から、親族による財産権の明らかな侵害や不適切な居所指定に対して、支援者の訴えだけでは行政は積極的な介入はできず、粘り強く生活実態を伝え、行政による後見申請を行っているという障害者の権利を守る取り組みも報告され、現実問題として成年後見制度の必要性も感じますが、何よりご本人の意思決定支援が、理念だけでなく実践として取り組まれなければならないでしょう。

 

■社会福祉法人の「改革」 ~社会福祉法改正

社会福祉法人には課税されていないが、中には「(いわゆる)余裕財産」を多く蓄えている悪質な事例が大きく報道されたことを契機に、社会福祉法人の改革が強調され、3月23日に改正法案が参議院本会議で可決されました。2017年4月の本格施行に向け、厚労省は政省令の検討を始めている。

全法人必置となった評議員数の経過措置の対象となる法人の規模、会計監査人の設置義務が課される法人の規模、そして大きい課題として「社会福祉充実計画」策定の義務付け。「余裕財産」のある法人は計画の中に地域公益事業を盛り込む場合には「地域協議会」で住民や関係者の意見を聞かなければならないとされているが、課題は余裕財産の計算方法で何が控除できるのかが今後、検討会を設けて検討されます。障問連加盟団体にも社会福祉法人の団体があります。多くは小規模で運営に苦労していますが、更なる負担になりかねません。しかし、厚労省は政省令を待たずに事務連絡で周知し、法人は来年6月30日までに「社会福祉充実計画」を提出しなければならないとされています。

 

■発達障害者支援法 10年ぶりに改正へ

2005年の法制定以来、10年ぶりに「発達障害者支援法」の改正案が可決される見込み。趣旨としては、発達障害者が「切れ目のない支援」を受けられるよう、国と自治体に教育現場でのきめ細かい対応や職場定着の配慮などを求めています。

改正法案では、「支援対象」として「発達障害があり慣行や制度といった社会的障壁によって日常生活が制限される人」、新設された「基本理念」では「支援は社会的障壁を取り除く方向で行わなければならない」とされている。また小中高校が指導目標や配慮事項を示す「個別の指導計画」を進める事を国や自治体に義務付け、就労の定着支援に関して、国や都道府県に努力義務、ハローワーク等の取組の拡充を求め、また事業主にも新たに適性に雇用管理することが努力義務とされます。

« »