新聞記事から

【報道】 新聞記事より

■スプリンクラー付けたいが…障害者ホーム、法改正で窮地朝日新聞デジタル 2016年3月8日09時37分

http://www.asahi.com/articles/ASJ3243HFJ32PTIL00X.html

 

一戸建て住宅やマンションを利用した障害者のグループホームが、消防法施行令改正で窮地に陥っている。今年度からスプリンクラー設置が義務づけられたが、高額の設置費用は、非営利の運営団体にとって大きな負担だ。賃貸の場合、家主から設置を認められなければ、住めなくなる恐れもある。

社会福祉施設へのスプリンクラー設置基準は、多数の入居者が亡くなる火災が起きるたびに厳しくなった。初めて設置が義務づけられた1972年、対象施設は延べ面積6千平方メートル以上だったが、段階的に縮小され、昨年4月に面積基準が撤廃された。避難が困難な入居者が多数を占める場合、どんなに小さくてもスプリンクラーを付けなければならなくなった。

移行期間として3年の経過措置があるが、2018年4月以降も設置しない場合、自治体から指導や命令を受ける可能性がある。

グループホームで生活する人は主に障害者と認知症高齢者に分けられ、特に障害者系でスプリンクラーの未設置が顕著だ。消防庁の13年の調査によると、新たに設置が義務づけられた275平方メートル未満のグループホームのうち、スプリンクラーがないのは高齢者系が全体の26%の538カ所に対し、障害者系は90%の1453カ所に上る。

厚生労働省の13年の調査によると、障害者系約1万5千のグループホームのうち、7割が賃貸だった。障害のある人と援助者でつくる日本グループホーム学会(横浜市)の室津滋樹事務局長は「賃貸の場合、家主からスプリンクラー設置の同意を得られない場合もある。一方で、障害の重い人と訓練を重ね、指示に沿って避難できるようにするなどスプリンクラー以外の安全対策に力を入れてきた」という。

大阪府生活基盤推進課によると、一戸建て住宅や3LDKのマンションにスプリンクラーを設置する場合、400万~500万円が必要とされる。国の補助制度はあるが「補助枠が狭く取り合いになり、受けるのは難しい」という。グループホームの経営は収支がほぼ同じというケースも多く、想定外の出費は経営を圧迫しかねない。

国は02年以降、障害者が暮らす場所を施設から地域に移すことを推進してきた。障害者本人の気持ちを尊重し、障害のない人と同じように生活することが重要だからだ。グループホームで暮らす障害者は09年度の5万6千人から14年度は9万6千人に増えた。

鹿児島大法科大学院の伊藤周平教授(社会保障法)は、今回の施行令改正について「安全性は重要だが、アットホームな地域生活への移行を進める以上、十分な資金補助をするなどの手当てが欠かせない」と指摘する。

■大阪府、基準緩和を要望

NPO法人「出発(たびだち)のなかまの会」(大阪市生野区)は、大阪市内で6カ所のグループホームを運営する。いずれも4~5人の知的障害者が生活する。

障害者のいる時間帯は支援者が常駐。火災報知機や火災通報の専用電話を設置し、年2回避難訓練をする。暖房や調理器具は電気中心で、灯油は使わない。支援者には禁煙を義務づけている。同会理事の石井香里さん(40)は「スプリンクラーがなくても安全に住めるよう心がけてきた。一戸建てのグループホームの広さは一般住宅と同じ。普通の家にないものを義務づけられるのは納得できない」と話す。

6カ所で必要な経費は2千万円以上。費用を賄うため入居者から新たに徴収するわけにもいかず、2017年度までに用意するのは難しいという。

社会福祉法人なにわの里(大阪府羽曳野市)は、賃貸マンションの3LDKを6室借りて、グループホームを運営。知的障害者や自閉症の計18人が入居する。賃貸を活用したのは、グループホームを新たに建設するより費用が安いからだ。

障害者の生活拠点を地域に移す国の方針を受け、09~10年にグループホームを始めた。知的障害者や自閉症の人は環境の変化に弱いため、一つの場所へ慣れるのに時間がかかるという。理事長の前田研介さん(44)は「安全重視は当然だが、現場にとっては厳しい内容。こんなことでは重度の障害者の生活は成り立たない。地域移行を推進しながら大きな負担を強いるのは矛盾している」と指摘する。

スプリンクラーの設置には、水道管を各部屋に通すための屋内工事が必要だ。大阪府は「コスト面はもちろん、賃貸住宅では家主の承諾を得られないなど、付けたくても付けられない状況がある」と、法改正に疑問を呈する。昨年12月には府内全43市町村とともに、消防庁に設置基準緩和を求める要望文を提出した。府生活基盤推進課は「障害者の安全を確保するための施策で、住み慣れた場所を追われるようなことになるのは本末転倒ではないか」と訴えている。(鈴木洋和)

 

 

■視覚障害 「授業ダメなど不当」岡山短期大准教授が提訴

毎日新聞 2016年3月23日 11時45分

http://mainichi.jp/articles/20160323/k00/00e/040/225000c

 

岡山短期大(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(51)=幼児環境教育=が23日、視覚障害を理由に授業や卒業研究の担当から外され、研究室からの退去を命じられたのは不当として、短大を運営する学校法人を相手取り、地位確認と事務職への職務変更の撤回などを求める訴えを岡山地裁倉敷支部に起こした。

訴状によると、短期大側は、山口准教授がゼミの授業中に飲食していた学生に気づかなかったことや、無断で教室を出る学生を見つけられなかったことなどを理由に2月5日、来年度から授業と卒業研究の担当を外れ、学科事務に移るよう命じた。同22日には、個室だった研究室の明け渡しを求めた。

山口准教授は、網膜の異常から次第に視野が狭くなる難病「網膜色素変性症」を患う。1999年に同大に採用され、文字は読めたため授業や研究を続けてきた。しかし約10年前から視力が低下し、現在は明暗が分かる程度で手書きの文字の判読は困難になった。

短大側は2014年、視覚補助を行う職員の確保ができないことを理由に退職を勧めた。山口准教授は私費で補佐員1人を雇う許可を得て授業をし「指導の質に支障はなかった」と主張。「差別が横行する教育現場は学生に示しが付かない。勇気を出して声を上げる決意をした」と話す。

弁護団の水谷賢弁護士は、共生社会の実現を目指す障害者差別解消法が4月に施行されることに触れ、「施行後、初の司法判断を仰ぐ裁判となる。法に逆行し、十分な配慮があれば改善可能なのに自主退職に追い込もうとする差別は許されない」と訴えている。

法人の理事長で、岡山短大の原田博史学長は取材に、「大学としてはこれまで思案を重ね、(山口准教授を)支えてきた。視覚障害を理由に差別はしておらず、提訴は驚いている。我々は教育の質を担保すると約束している学生の立場に立っている」と説明した。【瀬谷健介】

岡山短大の山口准教授は23日、全国視覚障害教師の会の重田雅敏代表や日本盲人会連合会長の竹下義樹弁護士らと、厚生労働省で障害者雇用の現状を訴える記者会見を開いた。

山口准教授は「目が見えないのは教員の能力が欠けるという大学の態度は差別そのもの。教育現場で共存共栄とはかけ離れた事態が進んでいる」と訴えた。4月1日に障害を持つ人への差別的な取り扱いなどを禁じた「障害者差別解消法」が施行される。竹下会長は「今回の件は差別解消の法施行を打ち壊すようなもので許せない。これを解決できなければ法制定は意味のないことになる」と短大側の行為を批判した。メンバーは、塩崎恭久厚労相あてに不当処分の救済を求める要請書を提出した。

改正障害者雇用促進法も4月1日に施行され、雇用分野での障害者に対する差別の禁止と、障害者が働くうえで支障になることを改善する措置(合理的配慮の提供)が雇用者に義務づけられる。【東海林智】

 

 

■成年後見の促進法成立へ 専門家以外の人材育成を

朝日新聞デジタル 2016年3月23日15時11分

http://www.asahi.com/articles/ASJ3Q5KKTJ3QUTFL014.html

 

判断能力が不十分な人の財産管理を担う成年後見制度の利用促進を図る議員立法が今月中に成立し、施行される見通しとなった。23日午前の衆院内閣委員会で、自民、公明、民主など各党の賛成多数で可決された。衆院本会議での可決を経て、参院でも近く可決、成立する。認知症高齢者の増加を見据え、専門家以外の後見人の育成を促す。

可決したのは、新法の成年後見制度の利用促進法案と、後見人の権限を拡大する民法改正案など。新法には、研修を受けた市民後見人の育成と活用を図ることで「人材を十分に確保する」と明記。政府に必要な法整備や財政上の手当てを速やかに講じるよう義務づけ、自治体には地域の特性に応じた施策づくりと実施を求める。弁護士など法律の専門家だけでなく、人材の裾野を広げる狙いだ。

首相をトップにした利用促進会議を内閣府に新設し、目標や国民への周知策を含む基本計画をつくり、実行することも定めた。

民法などの改正案では、利用者あての請求書などの郵便物を直接受け取って開封できるように後見人の権限を強め、財産管理をしやすくする。利用者の死亡後、相続人に引き継ぐまで財産保存や債務弁済をしたり、家庭裁判所の許可を得て火葬や埋葬の契約をしたりできるようにもする。

一方、後見人による横領などの不正は増加傾向にある。手術や治療など医療面で「同意」できる範囲が明確でなく、後見人が悩む場面も増えているとされる。こうした課題は利用促進会議で検討し、法施行から3年以内をめどに必要な法整備をする方針。これに対し、共産党は「根本的な解決を抜きにして制度利用を促進すれば、さらに不正被害が広がる」などとしてこの日の採決で反対した。

65歳以上の認知症の人は2012年時点で462万人。25年には5人に1人となる約700万人に増えると推計されている。(蔭西晴子、畑山敦子)

〈成年後見制度〉 認知症や知的障害などの人の財産管理の代行や見守りをするため、2000年度に介護保険制度と同時に始まった。14年末時点の利用者は約18万5千人。本人や家族などが申し立て、家庭裁判所が弁護士や親族らを選出する。研修を受けた一般市民もなれる。最高裁によると、14年に選任された後見人のうち親族が約35%。ほかの第三者では司法書士や弁護士といった専門職が多かった。報酬に決まりはないが、家裁ごとに基本報酬「月2万円」、後見人を監督する人に「月1万~2万円」といった目安を示している。市民が担う場合、無償や目安より低額の場合が多い。

 

 

■筋ジス男性、京都市を提訴 「障害者の自立問う」

京都新聞 2016年3月16日22時20分

http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20160316000204

 

筋肉が萎縮し、筋力が低下する筋ジストロフィーのため電動車いすで生活する米国人男性が16日、電動車いすのリフト機能などの費用を支給しなかった京都市の決定取り消しなどを求めて、京都地裁に提訴した。

提訴したのは京都精華大4年ライス―チョウ・ジョナ・シェンさん(22)=京都市上京区=。原告の代理人弁護士によると、電動車いす費の支給で、障害の個別性に応じた追加機能も公費負担するよう求めた訴訟は全国初とみられる。「障害者の自立と社会参加を問う裁判だ」としている。

訴状によると、ライス―チョウさんは症状の進行による体の変形で、使っていた電動車いすが合わなくなったため、2014年11月、座った姿勢のまま高さを調整する「リフト機能」やネックサポート機能を新たに含んだ電動車いすの作成費を京都市に申請。市は15年3月に電動車いす費は認めたが、追加機能の費用約15万円は不支給とした。

ライス―チョウさんは車いすに座った状態で高さ105センチ。高さの調整機能は、現金自動預払機の操作や、人混みでの視界確保による危険軽減など社会生活に不可欠と主張。大学でマンガを学びプロを目指しており、さまざまな視点が画力を磨くにも必要という。「30センチ上昇できるリフト機能があれば世界が変わる。行政の必要以上に厳しい審査基準で、自分の可能性や、やりたいことを諦めざるを得ない障害者は多いはず」と訴えている。

厚生労働省は車いすなどの追加機能(特例補装具)について、障害者総合支援法に基づき、「身体状況に加え、職業や教育、生活環境も考慮する」と通知している。

市障害保健福祉推進室は「訴状が届いておらず、詳細は分からないが、市としては適正に支給事務を行っていると考えている」としている。

 

 

■県議会 精神障害者の運賃割引意見書を可決 /鹿児島

毎日新聞2016年3月24日 地方版

http://mainichi.jp/articles/20160324/ddl/k46/010/314000c

 

精神障害者保健福祉手帳保持者が除外されている交通機関の運賃割引について、県議会は23日の3月定例会本会議で、全交通事業者で割引が実施されるよう国に求める意見書を全会一致で可決した。

意見書は、障害者割引について「県内のほとんどのタクシー事業者やJR九州バスを除く全ての路線バス事業者で運賃割引制度が導入されている」とした上で、精神障害者について「鉄道などでの運賃割引制度の導入は進んでいない」と指摘。社会参加を促進するため、全交通事業者で運賃割引が実施されるよう、国に必要な措置を求めている。

県議会はこの日、奄美大島に侵入したミカンコミバエの早期根絶に向けた取り組み支援強化を求める意見書なども可決。子どもの貧困対策としての一人親家庭支援事業などを盛り込んだ総額約8224億円の2016年度一般会計予算案など計33議案も可決・同意した。【杣谷健太】

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