事務局より

編集後記

早尾貴紀さんの『国ってなんだろう?』を読みました。国(国民国家)とは何か、この書の答えは「人間を国民か、非国民かによって線引きする装置」であり、かつ「非国民だとされる人間に対しては、国はどのような対応を取っても許される、そのような装置」だと言っているように思えました。それを、フランスの人権宣言から国民国家に移る経緯をたどり丹念に説明してあります。

著者は中東情勢に関しても専門で、とりわけイスラエルという国民国家が体現している暴力を、歴史過程を通して説明してくれています。イスラエルとパレスチナとの「争い」が、「二千年にわたる宗教的抗争」などというでたらめな神話も解体してくれます。ナチスや、あるいはヨーロッパ諸国の価値観と同じロジックで、迫害されたはずの「ユダヤ人」(と呼ばれる人たち)が、エルサレムの地に建設したのが、国民国家としてのイスラエルなのです。

著者はさらに、日本という国家の暴力性にも踏み込みます。明治期以降、日本も欧米の価値観を取り入れる中で、「列強に追いつけ、追い越せ」という機運が高まり、脱亜論的な思想が広がっていきます。第二次世界大戦の敗北における切れ目などなく、むしろ戦後も戦前日本の思想とは連続している、と著者は述べます。加えて、原発事故や米軍基地の問題にまで著者の思考は及びます。「日本という国民国家」の暴力性がきれいに整理されていると思います。ぜひ、ご一読を。

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