2015年度 障害者問題に関する要望書(神戸市)
貴職におかれましては、障害者の権利実現を基本とし、自立支援ならびに社会参加の促進など障害者福祉向上のため日々尽力しておられることと存じます。
さて、国においては、2013年に障害者差別解消法が成立、2014年には国連障害者権利条約の批准が実現。そして2016年度からいよいよ障害者差別解消法が施行されます。 そのような情勢を踏まえ、神戸市においても、一人ひとりの障害者が障害のない者と分け隔てられることなく共に暮らす社会を実現し、「どこで誰と生活するかを決める権利」「障害のある者もない者も共に教育を受ける権利」等、障害者の権利を保障した地域生活を実現していくための積極的な施策の拡充が求められます。 一方、2015年度報酬改定では障害福祉サービスの総枠予算は維持されたものの、居宅介護や生活介護などでは報酬が引き下げられました。そして2016年度からの総合支援法の見直しに合わせ、国では現在議論が進められています。そこではワーキンググループや団体ヒアリングを通して、「常時介護」「意志疎通」「精神障害者・高齢障害者」などの課題が話し合われ、これまで私たちが要望してきた「長時間介護」「介護保険年齢になった障害者の介護」「移動支援の通学等への利用」「入院中の介護」なども意見に上がっています。期待されるとともに、報酬改定のように財政的な理由から非常に幅の狭い部分的な改定に終わるおそれもあります。見直しが不十分であれば、神戸市独自の大胆な施策も必要ではないでしょうか。
また、神戸市においては、現在、次期障害保健福祉計画の策定が進んでいます。 「障害者差別解消法」の実効性の確保や、神戸市独自施策や権利擁護の仕組みを実施するために、いま検討が続けられている神戸市の「障害者差別解消」に係る条例を是非実現して頂くとともに、一人ひとりの障害者が障害のない者と共に暮らす社会の中で、その人らしい人生や生活が実現できるよう、貴職が下記の具体的な要望項目にある諸施策を積極的に講じられる事を要望するものです。
【 1.教育 】
近年、障害者施策においては、国連障害者権利条約に日本政府が批准し、また2016年4月から障害者差別解消法が施行されるなど、より一層、障害のある者とない者との平等の実現、地域での共生社会に向けた施策がますます必要とされています。共生社会に向けての学校教育の役割は極めて重要です。私たち「障害者問題を考える兵庫県連絡会議」(以下、障問連)は結成以来、地域の学校で障害のある児童も障害のない児童も共に学ぶ教育の実現を一貫して求め様々に取り組んできました。しかし神戸市においても特別支援学校の増設はどんどん進められ、地域の学校で学びたいと思っても、学校や教育委員会の対応、環境整備が十分ではないため、本人や保護者が辛い思いを余儀なくされる事例があります。それらを踏まえ、以下のように要望ならびに資料の提供をお願いするものです。資料につきましては事前に提供して下さい。
(1)インクルーシブ教育へ向かう理念と方向性について
①大阪市の保護者向け「就学相談」のパンフレットには、「大阪市では、障がいのある子どもの人権尊重を図り、地域で『共に学び、共に育ち、共に生きる』ことを基本とした教育・保育の推進に努めており、地域の小学校で学ぶことを基本としています」「障がいのある子どもの就学先を決める際には、本人・保護者の意向を最大限尊重しています」と示されています。神戸市教育委員会として、障害のある児童と障害のない児童が同じ場所で共に学ぶ事を基本に置いたインクルーシブ教育の方向性を明確にして、保護者、各学校に周知されるよう要望します。
②そのために、神戸市東部地域で新たに特別支援学校の新設を検討されていますが中止して下さい。地域の学校で障害のある児童が就学できるように基礎的な環境整備や教育条件を拡充して下さい。
(2)障害者差別解消に当たっての取り組み
神戸市教育委員会として障害者差別解消法の施行に向け、様々に取り組まれている事と思います。以下、質問ならびに要望します。
現在まで神戸市教育委員会として障害者差別解消法の施行に向け、どのように準備、取り組まれ、また施行までにどのように今後取組まれるのか、まず概要について報告をお願いします。
文科省によると「合理的配慮の充実を図る上で、基礎的環境整備の充実は欠かせない。そのため、必要な財源を確保し、国、都道府県、市町村は、インクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、基礎的環境整備の充実を図っていく必要がある」とされています。
・基礎的環境整備には施設・設備面また人的な体制等多岐にわたります。神戸市教育委員会の具体的な取り組みと今後の課題について説明して下さい。
・車椅子を使用する児童にとって、就学先の学校にエレベーターがあるかないかは重要です。エレベーターの設置は基礎的環境整備と思われますが、どのような進捗状況にあり、どのような課題があるのか説明して下さい。
(3)学校教育法/施行令改正後の神戸市の状況
①教育支援委員会の取り組み状況について。文科省の調査によると市町村教育委員会が設置する教育支援委員会の検討対象となった者は平成25年度39,208人、平成26年度42,352人と制度改正前より増加しているとされている。神戸市で教育支援委員会の該当した者が何人おり、該当となった者の就学先について資料を持って報告して下さい。
関連して、平成27年7月10日、内閣府障害者政策委員会のワーキングセッションにおいて、文科省は「平成26年5月1日現在、障害のある児童生徒のうち、学校教育施行令第22条の3に定める程度の障害のある者で、通常の学級に在籍している児童生徒数は、公立小学校で1,607人、公立中学校で761人である」と回答しています。神戸市の同人数について、資料を持って回答して下さい。
(4)特別支援教育支援員
①公立幼稚園、小中学校、高等学校において日常生活上の介助、学習支援等を行う「特別支援教育支援
員」は全国総数としては年々増加傾向にあります。神戸市の年度毎の配置人数について資料を持って回答して下さい。
②特別支援教育支援員については国から各市町に財政措置されていますが、どのような手順で支援員の配置が認められるのか、あるいは認められない場合の理由も併せご説明ください。
(5)付き添い問題
平成27年7月10日、内閣府障害者政策委員会のワーキングセッションにおいて、文科省は「障害のある児童生徒の学習や特別活動等に際して、設置者や学校が、保護者による付き添いを求めるケースもあると承知しており、現在、小・中学校における付き添いの実態把握に努めている」と回答しています。神戸市教育委員会として、どのように実態把握されているのか、説明して下さい。基本的に保護者の付き添いを求める事はあってはならないと各市町に指導して下さい。
(6)医療的ケアが必要な児童の就学について
医療的ケアが必要な児童の就学、学校での生活において看護士等の医療的な支援が必要です。医療的な支援がなければ学校に通うことも困難です。それを踏まえ、以下質問ならびに要望します。
神戸市で地域の小学校、中学校の通常学級、特別支援学級に在籍する医療的ケアを必要とする児童の人数を報告して下さい。また医療的ケアが必要な児童が地域の学校に就学しているが、看護士を雇用せず保護者の付き添わせている学校があれば教えて下さい。
医療的ケアが必要な児童の地域の学校への就学における看護士等の配置は、神戸市教育委員会として基礎的環境整備として位置づけられているのでしょうか。兵庫県内では、私たちが知りえる限り、淡路市、宝塚市では市教育委員会として看護士を雇用して各学校に配置されています。神戸市としても同様な施策を実施して下さい。また気管切開している児童が地域の学校へ就学した前例があるのかどうか、またそのような児童が就学を希望した場合の基本的な対応について、回答して下さい。
(7)高等学校における共に生きる教育の実現について
高等学校では入学選抜制度が壁となり、共に生きる教育がなかなか推進されません。その改善に向け、以下、質問ならびに要望します。
神戸市立高等学校における特別支援教育支援員の活用状況を報告して下さい。
医療的ケアが必要な児童が公立高校に就学する場合、医療的な支援を行う看護士等の配置について、神戸市教育委員会として、どのような考え方、方針を持たれているのか、回答して下さい。
別資料にある「公立高等学校入学選抜における障害のある生徒に対する配慮」、全19項目あります。神戸市教育委員会として、これまでどのような配慮をされているのか回答して下さい。また差別解消法の施行、合理的配慮の提供の観点からも、今後の配慮に関する方針、考え方を説明して下さい。
【 2.保育について 】
① 学童保育の必要性は、全般的に高まっていますが、とりわけ障害児童の場合、小学校高学年以降も学童保育のニーズが高く柔軟な対応が求められます。今回「子ども・子育て関連法」の改正により、今年度4月から学童保育の対象が小学校6年生まで拡大されました。既制定の学童保育基準においても、障害児童を対象とするように示されていますが、現状の受け入れ状態を事前に示していただくとともに、関連法改正にともなう高学年障害児童の受け入れについて今後の見通しを年次段階に沿って明らかにしてください。
② 学童保育児童の送迎について、移動における安全性を確保されるべきと考えます。登下校は親と学校の共同責任といいつつ、親のボランティア探し頼みというのは、見つからない時、親の負担が大きく、学童保育の利用を断念されるケースも少なくありません。親が安心して子育てや労働を行えるよう、学童の送迎に対する相談や対処はどこが行うのか、明らかにして周知する必要があります。それらの責任所在はどこにあるとお考えになられるのか、こども家庭局における見解をお尋ねします。
③ 障害児童受け入れ助成金の増額が必要です。安全対策で人員を必要とするケースに関して重度加算を設けるなど、人員が必要なケースに充分対応されているか、調査を行うなど積極的な検討を行ってください。
【 3.街づくり・交通・移動について】
① いわゆる「バリアフリー法」において、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人以上の鉄軌道駅においては、平成32年度までに原則として全てについて、段差の解消、視覚障害者の転落を防止するための設備の整備等の移動等円滑化を実施することとなっています。また、1日当たりの平均的な利用者数が3,000人未満の鉄軌道駅においても、地域の実情に鑑み、利用者数のみならず、高齢者、障害者等の利用の実態を踏まえ、可能な限り実施することとされています。神戸市内の昨年度からの進捗状況について資料をもって事前回答してください。さらに、この件に関し、平成28年春に開業予定のJRまや駅の具体的な設備整備に関してご提示ください。
② 昨年末よりJR六甲道駅で昇降式ホーム柵が試験的に設置されましたが、その安全性などについて神戸市としてどのような見解を持っているか回答してください。また神戸市市営地下鉄三宮駅にも設置予定と聞いていますが、六甲道駅での検証結果について、とくに当事者である障害者の声をどのように反映させているかとともにその進捗状況を報告してください。合わせて市内におけるホームドア・ホーム柵整備の今後の予定を回答してください。
③ 神戸市バスの運転手の研修に、バスユーザーである障害当事者を講師に招いたより実践的な研修をおこなってください。昨年回答に「9月30日に障害者を講師に招いての実習を行った」とありましたが、各営業所単位での当事者研修のその後の取り組みについて明らかにしてください。
④ 昨年度の回答集会において、福祉乗車パスICカード化に伴い紛失した際の対応・手続きに関していったん整理されました。その中で、「今のところは知的障害者のみ特例としてパスを紛失した場合、即時仮発行としている」という現状回答がありました。それに対して、全障害でそのような対応をすべきではないかと改めて要望をしたところ、「『障害者の移動支援としてどうすべきか』を移動支援分科会等で議論していきたい」と回答をいただきました。その後、神戸市障害者施策推進協議会・移動分科会をはじめ、どのような検討が行われているかご回答ください。
⑤ マスコミ発表でありましたように、神戸市は三宮駅周辺を中心とした「再整備基本構想」を掲げられています。とくにLRT導入など、基本構想全般にわたって障害当事者の意見を聴いていただけるように望みます。
【 4.労働について 】
① 神戸市の職員採用においては「身体障害者を対象とした神戸市職員(大学卒区分、短大・高校卒区分)採用選考案内」がありますが、この点について下記のように要望ならびに質問します。
1.今後とも「身体障害のある人」のみに限定されるのでしょうか。改正障害者雇用促進法においては、障害を理由とした募集、採用の拒否は差別であり禁止されています。地方公務員法上の規定第13条により障害者雇用促進法は適用除外されていますが、それは、地方公務員法第13条「平等取り扱いの原則」があるためであり、障害種別を理由とした採用・募集の機会を与えないことは、それに反するのではありませんか。また今後の精神障害者の雇用義務化の観点からも併せて回答して下さい。
2.「身体障害者を対象とした神戸市職員採用選考案内」の「選考を受けることができる資格」に、「介護者なしに就業することが可能な人」とあります。非常に曖昧な表現です。「介護者なし」とは「一切の障害に基づく支援は必要としない者」であるなら、視覚障害者や聴覚障害者も対象外とされるのですか。具体的にどのような基準で「介護者なしに就業可能」と判断されるのか説明して下さい。また、現業部門における身体障害者の職員採用が行われなくなってきています。今後の方針を明らかにして下さい。
3.一方、上記については適用除外されるものの、「介護者なしに就業可能」という資格条件は、改正障害者雇用促進法が求める趣旨に真っ向から反します。「障害者欠格条項をなくす会」の全国調査においても、47都道府県20政令指定都市42中核市の207試験において、11%の自治体が「介護者なしで職務遂行できる」を受験資格からはずしています。「介護者なしに就業可能」は公務員試験の当然の条件ではありません。このような現状を鑑みて、障害者雇用を積極的に推進するべき市当局として、平成28年度募集から撤回されるよう要望します。
② 神戸市職員として雇用された後に精神疾患、事故等、様々な要因により障害を持つに至った場合、職場復帰に際して、どのような配慮、サポートが現在行われているのか説明して下さい。またそのような配慮は、改正障害者雇用促進法の「合理的配慮の提供」が地方公務員にも義務付けられるため、どのように変更されるのかも合わせて回答して下さい。
【 5.自立生活支援に関して 】
(1)介助に関連して
①障害福祉サービス支給量審査基準(以降ガイドラインと呼ぶ)/支給決定
○重度訪問介護の支給量
障害の重い人が地域で生活し続けるためには「見守り」も含めた長時間利用を可能とする重度訪問介護が重要な施策です。重度訪問介護は本来、家事・身体介護・見守りを一体的に行うサービスであるにも関わらず、支給決定の際に見守りを含めないという、介護保険と同様の支給決定を行う区の担当窓口があります。また、「見守りが長すぎる」と時間数を抑制する窓口もあり、神戸市の「見守りの定義」に対する見解を説明していただくと共に、重度訪問介護の本来の見守りのあり方を周知徹底することを求めます。
○深夜帯の支給のあり方
A.障害者の「どこで誰と暮らすかを決める」権利を保障するためには、「地域での一人暮らし」をきちんと選択肢として保障しなければなりません。重度障害者の地域での一人暮らしを考えるにあたっては、深夜帯の支給について現実的な基準が必要です。しかし支給決定をする窓口では、「命の危険のある人以外は『深夜のベタ付き』を認められない」等と説明され、多くの障害者の一人暮らしを阻んでいます。深夜の「ベタ付き」が認められないことで重度障害者の「健康を損なう」危険に対する認識をあきらかにしてください。また深夜の介護ニーズを、「命の危険」という最低限の基準ではなく、どれぐらい健康を損なう危険があるのかも考慮に入れ、ベタ付きもひとつの選択肢と考えるべきではないでしょうか。神戸市の見解をお聞かせください。
B.深夜帯の支給決定にはその他にも以下のような問題があります
・健康を損なう危険があるにも関わらず、「命の危険」はないという理由で「深夜は巡回」というプランを組まれます。支給決定の勘案事項に「⑨ 当該申請に係る障害福祉サービスの提供体制の整備の状況」とありますが市内に障害者への深夜巡回の対応業者がいくつあるのかを資料をもって事前に回答してください。
・おむつはしたくない、深夜巡回は使いたくないという本人の意向を勘案しないプラン作り・支給決定に対しての神戸市の見解を明らかにしてください。
・何を根拠に深夜帯の滞在の幅を決めるのか、神戸市の見解をお聞かせください。
・このままでは障害者が地域で安心して生活出来ません。自立した生活が出来るように重度訪問介護の深夜時間帯について検討会を立ち上げるよう要望します。
○訪問看護との併給関係
訪問看護との同一時間の併給について、昨年度「アセスメントを行って、必要であるなら併給も含めて個別に対応したい」という回答をいただきましたが、各区支給決定窓口ならびに相談支援事業者に周知徹底するように求めます。
○ガイドラインの改定
昨年度の回答に、「国が総合支援法のあり方を3年後に見直しすると言っている。その時の国の意向を見ながら改正をしたい」とありました。現在、国は検討を進めています。神戸市はそれを受けてどのような検討を行っているか、進捗状況を明らかにしてください。
②相談支援について
サービス等利用計画作成が義務付けられ、神戸市でも計画に基づく支給決定が始まっていますが、現在の運用状況を回答されるとともに、「サービス利用計画」を作成する相談支援事業者に対して、支給基準のガイドラインを上限とした計画作成を行わないよう指導してください。とりわけ、計画作成にあたり、セルフプラン・代替プラン・相談支援がどのように機能すべきであるとお考えになっているのか、お伺いします。相談支援事業者が増えてきていますが、真に当事者の必要に沿った計画が作成されているか不安です。加えて、神戸市として相談支援事業者をどう増やし質を担保していくのか、今後の相談支援に関しての見解をお聞かせください。
③障害支援区分について
聞き取り調査において、厚生労働省が出した障害支援区分の認定マニュアルが改定され、「できたりできなかったりする場合」は「できない状況」に基づき判断する、となっています。いまだに「できるできないの割合で」判断している調査員が多いのが現実です。早急に周知徹底してください。
④重度訪問介護/対象拡大
平成26年4月から「重度訪問介護の対象拡大」が実施されました。それにより、神戸市で知的障害者・精神障害者が重度訪問介護の利用に至ったケースについて、情報提供をお願いします(資料提供)。また、グループホームだけでなく、障害の重い知的障害者、精神障害者の地域での自立した生活の促進のためにも、重度訪問介護の対象拡大について、柔軟な運用を要望します。
⑤同行援護
○視覚障害者に対する同行援護の本来的意義に関して
視覚障害者はただ安全に移動できて目的地に着けばいいというだけでなく、目的地に着いてから何をするのか、適切な情報保障がなければ目的は達成されません。そのような「移動+情報保障」という障害特性による支援の必要があるからこそ移動支援から同行援護に変わりました。視覚障害者のより一層の社会参加の促進のためにも、ガイドラインが上限ではなく本来の制度の趣旨に則った柔軟な運用が各区でされるよう指導して下さい。
○通院時のいわゆる「中抜き」問題に関して
同行援護および通院等介助を利用して通院を行う場合、院内介助について「基本的には院内のスタッフにより対応されるべきものであるが、場合により算定対象となる」と厚生労働省通達にあります。大病院外来などでは、院内スタッフによる介助をうけることが難しい場合が多くあります。通院先の状況をふまえて丁寧なアセスメントや支給決定を行うと共に、必要な情報保障・衣服などの着脱・待機等、援助の内容が多岐にわたることをふまえ、一律の病院内での中抜きはしないように各区に指導してください。
⑥入院時コミュニケーション支援事業
○実績と知的障害者への拡大について
入院時コミュニケーション支援事業の今年度の利用者数及び時間数の実績をお答えください。また今年度から、対象者が重度の知的障害及び障害児へ拡大されましたことを評価させていただきます。拡大した対象者に該当する知的障害者は市内に何人いるかもご回答ください。
○体調不良によるコミュニケーション困難等の事例への対応について
どんなに重度で家族支援が不可能な当事者も、支援区分決定時に「コミュニケーション可」と認定されれば、この施策の対象とはならないとされてきました。入院に至る体調不良の状況により、コミュニケーションが無理になる場合等もあるので、支援区分調査時の聞き取りを慎重に行うとともに、入院することになった障害者から申し出があった場合は、その都度の聞き取りをしっかり行い対象者を柔軟に適用できるように、要綱等の改善を行ってください。
⑦移動支援
○支給時間数の柔軟な運用/時間数を超えた障害者実数の把握
移動支援の基礎時間を、障害者50時間・障害児32時間に拡充していただいたことを評価させていただきます。その上で改めて現在のような一律の時間数支給ではなく、一人一人の生活ニーズに基づいた時間数の決定をできるようにすることを要望します。社会生活上不可欠な外出については、50時間を超えて支給決定ができることを各区に周知するとともに、現在50時間を超えて支給決定を行っている障害者の人数を明らかにしてください。
○通所・通学における送迎のあり方について
依然として通所・通学における送迎ニーズは高く、主たる介護者の病気時などに短期間のガイド利用は認められていますが、それでは対応しきれないのが実状です。通所・通学における介護保障をどう行っていくのか、神戸市の見解をお尋ねします。またグループ型ガイド、車両利用型ガイドなどについてどうお考えかもおきかせください。
○人材不足や事業所不足への対応と見解
移動支援の人材不足・事業所不足について深刻な状況は続いています。移動支援事業についての利用者証の発行人数・利用者人数・派遣時間数・事業所数を示して、神戸市の見解を明らかにしてください。
⑧介護保険との適用関係
平成27年2月に「障害者総合支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度等の適用関係」に関する実態調査結果が報告され、それに基づき厚生労働省から各都道府県等に対して2月18日「事務連絡」として、「・・・市町村においては、当該介護給付費等を支給する場合の基準を設けている場合であっても、当該基準によって一律に判断するのではなく、介護保険サービスの支給量・内容では十分なサービスが受けられない場合には、介護給付費等を支給するなど、適切な運用に努められたい」、また、「障害福祉サービス利用者が要介護認定等を受けた結果、居宅介護サービス費等区分支給限度基準額の範囲内では、利用可能なサービス量が減少することも考えられる。しかし、介護保険利用前に必要とされていたサービス量が、介護保険利用開始前後で大きく変化することは一般的には考えにくいことから、個々の実態に即した適切な運用をお願いしたい。」と通知されました。神戸市の上記適用関係についての実施状況について報告して下さい。(資料提供)
(2)施設入所者の地域移行について
①施設入所者の削減目標の計画での設定/真に入所が必要な人
「施設から地域へ」という理念は、障害者福祉において世界的な潮流であると存じます。施設入所者を減らしていき、地域において自立した生活を営む障害者を増やしていくためにも、具体的な数値の設定が必要かと存じます。ところが、神戸市第4期障がい福祉計画においては、「障がい者支援施設の待機者があり、今後も、重度化により入所を必要とする人がいます」等の表現により、あたかも入所を前提とした計画であるようにも受け取ることができます。これは。総合支援法の理念にも反するものです。あいまいな表現ではなく、神戸市としてきちんと、施設をなくし、障害者が地域で自立していくことを目標とされることを謳ってください。そのうえで、具体的な入所者の削減目標を提示してください。また、「真に入所が必要な障がい者が速やかに入所できるようにします」と書かれていますが、「真に入所が必要な」障害者とは、どのような障害者のことを指すのか、具体的に示してください。
②地域定着事業・地域移行事業について
障問連加盟団体でも、入院施設から地域で自立するために、神戸市内のリハビリテーション病院から不動産屋を回る等、地域生活づくりのため自費で外出介護者を確保された方がおられます。そのような実情を踏まえ、神戸市における地域定着事業、地域移行事業の実績について、具体的な数字をもって示してください。
③施設入所障害者の移動支援利用について
障害者の地域移行を促進していくためにも、施設入所者の移動支援は必要だと考えます。外に出て行き経験をつまないと地域生活のイメージができません。しかし現在施設障害者の移動制度がないため、地域移行のチャンスが阻まれています。施設入所者にもガイドヘルパー制度を適用してください。
(3)グループホームについて
① グループホーム数及び地域偏在、公営住宅での開設について
神戸市におけるグループホームの数は、計画通りに推移しているのか、進捗状況をあきらかにしてください。特にグループホームは北区・西区に偏在し、東部地域で極端に少ない「地域偏在」が認められます。東部地域で、グループホームの確保にどのような施策を講じてどの程度進展しているのか、区ごとの目標数値と進捗状況の数値をあげて説明して下さい。また、公営住宅を活用したホームの設置はどのような状況にあるのか昨年度からの進捗状況と、今後の計画について回答してください。
② 「建築基準問題」について
条例改正・国の制度改正(国土交通省)をうけて状況はどう変化したのか、その実績と見解を示してください。グループホーム設立における条件は緩和されたのでしょうか。市の補助金枠の利用状況とともにご提示ください。
③ ホーム入居者のガイドヘルプ利用について
生活上必要不可欠な外出については50時間を越えて申請可能と、昨年はご回答いただきましたが、申請者数や利用者数等の実績をご回答ください。ホーム事業者・相談支援・利用者、家庭等への周知を行ってください。
④ ホーム入居者のホームヘルプ利用について
包括事業の指定をうけているグループホーム入居者のホームヘルプの個人的な利用経過措置が延長されました。重度訪問介護利用を希望する場合のルールをワーキングチームを立ち上げて検討するとのことですが、その後の検討状況についてご提示ください。室内及び屋外を一体的に利用できるよう選択肢を残す等、「ホームヘルプだから室内だけ」といった理解ではなく、実状等に合わせて制度を柔軟に利用できるようにお願いします。
⑤ ホームの段階的入居に関する実家でのホームヘルプ利用について
グループホーム体験利用制度が始まったことを契機に、実家でヘルパーを使いながら段階的にグループホームを目指している人の、実家でのヘルプ利用が中止になっています。体験宿泊は「一時的な利用として、1回あたり連続30日以内かつ年50日以内に限る」とあります(神戸市、平成26年12月)。宿泊日数も少なく、月2泊の体験をこえると、入居するかどうか決断しなければなりません。ホームへ段階的に入居する人の実家でのヘルプ利用を認めることで、当事者が将来の生活を見通しつつゆっくりですが、スムーズに生活移行を行うことができます。実家でのヘルプ利用とグループホームの併給など、柔軟な対応をお願いします。
【 6.生活介護、就労系等日中活動について 】
① 近年指摘し続けてきたことですが、生活介護事業所は北区・西区に偏在し、東部地域で極端に少ない事態は改善されていません。東灘区・中央区に生活介護事業所が開設されましたが、状況がどう推移しているのか、ご報告いただくとともに、神戸市の計画をご提示のうえ、その通りに進んでいるのか、区ごとの数値をもって示してください。またこうした大規模法人施設の建設は、施設から地域へという時代の趨勢に適わないばかりでなく、地域のニーズに即応した受け入れ態勢を準備するという課題には適していません。時宜に適った社会資源準備にかんしてより適性がある小規模な事業所設立を推進する環境を整備するよう強く求めます。
② 生活介護事業に関する利用定員超過減算について、厳しい状況の中、重度な障害者の居場所確保のため受け入れを重ねてきた事業所が、利用者数が増えれば、補助金が減額になるなどの不合理が神戸市内で生じています。このことに関する神戸市の見解をお聞かせください。こうした状態を不合理であると考えるならば、当座の緩和策を講じ、国へ制度を改善するように要求してください。
【 7.その他 】
(1)地域生活支援拠点について
「第4期神戸市障がい福祉計画」でもその概要については示されていますが、具体的な目標設定や数値の提示がありませんので、進捗状況等を含めてお示しください。また、「地域生活支援拠点を障害者支援施設に付加する場合は、施設の小規模化を進め、地域に開かれたものとすることが必要となります」と認めておられるにもかかわらず、「入所者のニーズや生活環境、人員体制などを考えると施設の小規模化は難しい状況です」とあります。たとえ現状が難しくても、可能な限り施設の小規模化や地域に開かれたものにしていくことは、行政の責務とあると考えます。この点に関し、神戸市の見解をお聞かせください。
(2)差別解消条例について
地域におけるあたりまえの生活と共に生きる社会の実現のためには、実効性のある仕組みづくりが肝要です。来年4月からの差別解消法の実施にむけて、神戸市における差別解消条例について、早期の実現を強く要望します。現在の検討状況を説明して下さい。
以上
11月 5, 2015