所得保障/年金

【報告】 公平な障害年金の認定を! 障害年金の地域格差問題 ~ 障害年金(知的・精神)の不支給事例、兵庫県が全国でトップ!!?? ~

■障害年金の地域格差問題とは?

日本年金機構の情報流失問題が昨今、大きな話題になっている。しかし障害者にとって最低限(それでも必要な所得保障には満たない)必要な障害年金に関して、大きな地域格差(最大6倍)があり、しかも兵庫県はトップクラス。2012年度のデータによれば、精神・知的障害者に限った不支給割合が56%と全国的にも群を抜いて多いと報道されている。

5月11日神戸新聞の報道によれば、厚労省として遅くとも2011年に問題を認識しながらも後回しにしていた事実がある。

2011年11月に日本年金機構が全国各地の認定医を集めた会議を開催、その議事録には「同じ障害の状態であるにもかかわらず、地域によって等級判定が違う事がある」と厚労省の担当官が発言、さらに「障害基礎年金と障害厚生年金で異なる判断をしているのはまずい」との認識も示していた。担当者は「認定の均一化が最重要課題」としながらも、厚労省は審査基準の改正は行ったものの、実態調査は行わず日本年金機構の事務運営の見直しは進まず放置されてきた。

 

■兵庫県の審査に独自調査の用紙

5月12日神戸新聞によれば、「兵庫は厳しい審査で知られ、家族の収入などを不支給の判断材料にしている可能性がある」「日本年金機構内部からも『不適切』と疑問視する声が上がっており、機構本部は兵庫をはじめ全国の事務センターの事務運営の実態を調べる方針」とされている。

独自の調査用紙は東京都と兵庫県。両都県ともに対象は精神・知的障害者で、通常の申請書を受け付けた後、追加調査が必要な人に個別に送付し、「食事や掃除等の日常生活がどの程度できるか」また「勤務先や仕事の内容」等の記入も求めている。さらに兵庫県の用紙には、「日常生活申立書」の名称で、同居人の「氏名」「職業」「就労や生活の詳細」の欄まで設けられている。日本年金機構本部としても東京都の独自調査用紙に問題は無いとしているが、兵庫県の調査用紙に対しては問題視し、特に同居人の情報については、「審査には関係ないはず」と他県のセンター職員が指摘しているほどである。

 

■厚労省が「専門家検討会」を立ち上げる

このような障害年金の不支給、地域格差問題に対して、ようやく厚労省も、「精神・知的障害に係る障害年金の認定の地域差に関する専門家検討会」を立ち上げ、本年2月から検討会が開催されている。その結果を踏まえ、精神・知的障害の認定において地域差による不公平が生じないよう「精神・知的障害の等級判定のガイドラインとなる客観的な指標」そして「精神・知的障害の就労状況の評価のあり方」、その他について検討される。としております。 構成員は、精神・知的障害に関する専門家9名で構成、また必要に応じて関係者等からヒアリングを実施するとされ、4月24日には、「全国精神保健福祉会連合会」「全国手をつなぐ育成会連合会」「日本自閉症協会」「日本発達障害ネットワーク」、4団体の代表者等が意見表明された。兵庫県の関係者が2人発言されている。以下、資料から一部抜粋して紹介する。

全国精神保健福祉会連合会

精神疾患の診断書には、機能障害とともに日常生活能力の判定が書かれています。しかし主治医には、なかなか日常生活の様子が分かりにくい面があります。又、日常生活能力と就労能力は同一ではありません。障害認定基準にも「労働に従事していることをもって直ちに日常生活が向上したものととらえず・・・」とあるようにあくまで日常生活における活動能力で判断すべきです。例えば、一般就労していても帰宅時には疲れ果て夕食もとらず、入浴もしない場合等、同居の家族の支援があってこそ、ようやく就労できているわけです。その点、単身で生活するとしたら可能かどうかで判断するとの視点は評価します。そのためにも、より明確で家族や当事者、一般の人にもわかるような明確な基準が求められるものと思います。就労したら年金がもらえなくなるという不安がストレスとなって病状悪化にもつながります。

 

全国手をつなぐ育成会連合会

今回の格差問題で大きな課題は、年金取得後も数年後に再判定を契機に減給するというケースがいくつも見受けられた事です。20 歳前の知的障害・発達障害の確定診断は、急激に改善される見込みはありません。当然ながら就労先での支援や家族の支えによって環境による改善が図られるとしても障害ゆえの生活のしづらさは本質的には変わりません。障害基礎年金はそこに焦点を当てて生計を確保する位置づけのはずです。知的障害のある人たちにとって再判定の必要性についても論議を求めます。

 

全国精神保健福祉会連合会からは「初診日の問題」、また「人格障害や神経症は対象にはならない」とされているが、「病名で判断するのではなく生活のしづらさで判断すべき」との意見が表明されている。

また育成会としては今ヒアリングに向けた全国調査を会員に対して実施され、様々な事例が報告されている。兵庫県の会長も参加し意見が述べられている。「窓口の判断で申請書さえもらえない」(兵庫)、「B-2の手帳では年金は難しいかも知れません、国の方針ですと断られた」(千葉県)、「2級年金受給者で年齢20代、30代の知的障害者が、本人と家族の努力によって就労し月額5万円~6万円の給与を貰うようになったら、基礎年金の支給が停止されることが起こっています」(滋賀県・山口県)

 

■今後に向けて

私たちの周囲にも年金不支給になり困っている人がいる。みんな仕方がないと諦めている人が多い。しかしその理由に上記のような、とりわけ兵庫県では特筆して不支給が多く、それが誤った運用によるものであるなら許せるものではありません。6月4日、障問連事務局として日本年金機構及び同兵庫事務センターに電話で質問したところ、「報道は事実である」と確認した。今後、障問連として県内団体と連携しながら取り組んでいきたい。

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