市・町の制度 生きる場/作業所

神戸市議会民主党議員団へのグループホームについてのレクチャー資料

 

一昨年から問題になっているグループホームの寄宿舎扱いについて、1月18日(金)に15人の神戸市議会民主党議員団の方に対し説明会を開きました。その際、障問連事務局の石橋、田中から配布した資料を以下に掲載します。

建築基準法における障害者グループホームの取り扱い問題について

(1/18  民主党神戸市会議員団向けレクチャー資料)

■  何が問題になっているのか

「神戸市では障害者グループホームがきわめて作りにくい状況になってしまっている」

このままでは、障害者が住みなれた地域で生活を続ける事ができなくなる恐れがあります。

 

■グループホームとは

知的障害者、精神障害者、身体障害者が「世話人等」の支援を受けながら、地域のアパート、マンション、一戸建て等で、複数で共同生活する居住の場です。(1居住あたりの定員2~10人で事業所の定員は4人から)

※兵庫県障害者グループホーム・ケアホーム開設の手引きより

障害者自立支援法による障害福祉サービスであり、入居者の障害程度によって、軽度の方が入居するものは「共同生活援助(グループホーム)」、介護支援が必要な方が入居するものは「共同生活介護(ケアホーム)」といちづけられている。以下、グループホーム・ケアホームを総称してグループホームと呼びます。

グループホームは、障害者が住みなれた地域で自立して生活をおくるための、数少ない貴重な選択肢となっています。

 

■障害者グループホームは小規模なものが多い

グループホームは、平成元年の国制度開始から、「障害のある人たちが地域の中で普通の暮らしを営むことを実現する」ということを目ざして運営されてきました。また、そこで生活している入居者の人たちにとっては、グループホームはまさしく「家」なのです。制度開始時の厚生省作成のハンドブックには、「グループホームとして使用する住宅は、原則として一般住宅敷地内に位置し、その外観は一般の住宅と異なる事のないよう配慮されていなければなりません。また、住宅に、特別の目立つ看板や表札等をつけることはのぞましくありません。」とわざわざ、述べています。全国的にも、グループホームのほぼ7割は4~5名定員の小規模なものになっています。神戸市のグループホームも2011年現在で78件中67件が定員5名以内のの小規模ホームです。小規模ゆえに意味があり、なおかつ一般の住居を利用する事で、つくりやすい。当事者や家族が、地域での生活をイメージする上で、グループホームが大きく期待される理由はそこにあります。

 

■神戸市の障害者計画では

「神戸市障がい者保健福祉計画2015」では、「障がいがあってもなくても、安心して豊かに暮らせるこうべ」を目標とし、地域移行のための住まいの確保の一番に、「グループホーム等の整備」をあげて取り組むと謳っています。どの障害者計画にも、グループホームの整備を中心施策としてうちだしていますが、数値目標は下方修正を続けているのが実状です。

【グループホーム数値目標の下方修正の推移】

・         第2期神戸市障害福祉計画では(平成21年3月作成)

平成23年度までに利用者数600人をみこむ

・         神戸市障がい者保健福祉計画2015では(平成23年3月作成)

平成22年度実績?404人を平成27年度までに650人をみこむ

・         第3期神戸市障害福祉計画では(平成24年3月作成)

平成26年度までに530人をみこむ

 

1年に50人分のグループホームを設立し、なんとか650人に近づけるとのことですが、このままでは達成はきわめてむずかしい状況です。

ニーズは高まる一方なのに、これだけ実績があがらないのはなぜなのでしょう。

 

■物件さがしの大変さ

グループホーム設立にむけては、物件探しが大きな課題になります。住み慣れた地域に適当な広さがある物件、理解のある大家さんとの出会い、資金の問題、グループホームの事業報酬はまだまだ施設の報酬には遠く及びません。地域が反対する場合もあり、丁寧な説明で理解してもらうことが必要です。そうやって、ようやく物件の契約にたどりつき、事業化への第一歩となります。グループホーム設立をめざす団体は、なんとか地域生活の希望を明日につなげようと、必死の思いで利用者と一緒に準備を重ねます。まだまだ不十分では、ありますが、その当事者たちの思いを行政が後押しすることで、ゆっくりではありますが、確実に地域のグループホームは増えてきました。

 

■神戸市で物件却下があいつぐ

平成23年に入ってから、グループホーム設立の指定申請のため神戸市に事前協議にいくと、「物件の建築基準法上の用途が、『住宅』の住居は入居者の安全性確保の観点からグループホームとしての使用を認める事はできない」という理由で却下されるという事例があいつぎました。利用したければ、建築基準法上の『寄宿舎』の条件を満たす改造工事を行わなければ、許可しないとのこと。なんの事前告知もなく突然の対応の変化でした。しかも、同時期に、先に事業指定権者である兵庫県に相談に行った事業所は指定され、先に神戸市に相談にいった事業所は却下されるという混乱ぶり。神戸市に問い合わせると、平成24年からは指定権者も神戸市になるので、この不徹底は改善して、寄宿舎条件を満たさなければ、全面的に却下で統一するという回答。しかも寄宿舎条件はかなり、厳しくほとんどの物件は不適格、または高額の改修費用が必要になります。原因は、平成22年に発生した札幌市の認知症高齢者グループホーム火災で利用者が犠牲になったことを受けて、類似施設の安全性確保が問題になったこととのことでした。「利用者の命を守るため」の一点張りで、あまりのお役所対応に、多くの団体が、せっかくの物件契約をあきらめ、職員雇用までしていた事業開始を断念しました。それ以降、神戸市において、グループホームを開設するのは、賃貸の一戸建てはほぼ不可能、自費でビルをたてる、土地を購入するなどしか方法がないと、関係者は途方に暮れている状態です。

 

■  国の動向

国の動向としては、もともと一般住宅を賃貸することを前提に始まったグループホームの形態をどう建築基準法で位置づけるか、答えがでていない状況です。国土交通省が、平成22年に障がい者制度改革推進会議で、質問をうけ、「建築基準法上の用途は建築主事等が個々に判断することになるが、食堂、便所、浴室等が1箇所または数箇所に集中して設けられているグループホーム、ケアホームについては、原則として寄宿舎として取り扱われている。」と回答したことをうけ、各自治体が個別に対応しているのが実態のようです。各自治体の対応にはかなりの格差が生じており、厳密に寄宿舎条件を設定した自治体では問題がおこっています。また、建築主事の全国団体である、建築行政会議でも議論は重ねられていますが、寄宿舎条件より緩和した新しい条件まではでなかったとのこと。

 

■  兵庫県内の動向

しかし、やっとみつけた物件を行政がこれだけ却下し続けるような話は、兵庫県内でもきいたことはなく、このままでグループホームが広がって行く見込みもたたないはずです。兵庫県に問い合わせをしたところ、「国の動向はおさえているが、グループホームの趣旨や実態を考慮して、きわめて個別性の高い案件と理解している。との回答。具体的には、個別対応をして、なんとか開設にこぎつけているのではないかとのこと。詳しく調査してもらった結果、ここまで厳格に対応しているのは神戸市だけであるということだった。

具体的には、100平米を越えない物件については、建築基準法上の使用目的変更の申請義務がないこと、個別に防火や安全面のやりとりを丁寧に行い、開設につなげているという状況なのではないだろうか。

 

■  神戸市はもっと柔軟な個別対応を!

神戸市の問い合わせに対して、各自治体は、建築基準法上、特別な対応はしていないと回答をしたという。神戸市のききとりと、兵庫県のききとり結果のこの差は何をあらわしているのだろうか。国がはっきりいわないので、神戸市として踏み込んだ判断をできないといいきり、厳格に地域の物件を却下して行く神戸市、このままでは、障害者の地域生活の希望がたたれてしまう。大きな団体が建てた大規模なグループホームで目標数値のみが達成されていくことが、「障害があってもなくても安心してくらせる神戸」なのだろうか。あたりまえに暮らして行くためには、地域でくらすことが前提です。一般住宅をなぜ、使うのか、それはその建物が地域にあるからです。

もっとふみこんだ認識と工夫が必要なのではないでしょうか。この問題を多くの方に共有していただき、一緒に考えていただきたいです。

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