介護保障

【報告】 介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット 8周年シンポジウム

凪 裕之(障問連事務局次長)

11月23日にオンラインでのシンポジウムが開催された。

基調報告は当会の共同代表の藤岡弁護士で、8年間の活動の成果や課題、今後の展望について話された。憲法や障害者権利条約、基本法や総合支援法にどう位置づけられるのか、結成前の裁判判例の歴史などの説明があった。法的には生存権や平等権だけでなく、居住や精神的な自由権が大きいことを強調、介護訴訟では時間数を減らされたり上限を設けることは違法であったり、家族介護の壁を突破してきた成果も報告された。全国ネットは申請一発主義をとり、裁判からでなく重度訪問介護の申請の段階から弁護士が入り、介護日誌や介護状況をビジュアル的に伝える取り組みを続けてきているが、活動に取り組む弁護士が少ない現状が課題だとした。

各地の事例報告は5事案。

○当事者本人や弁護士から報告があった。ALSなどの人が本人と弁護士が役割分担をした事例

○弁護士が助言だけで本人が行政としっかりやり取りをしてうまくいった事例

○家族介護を強いて医師意見書だけでなく看護師の協力が得られて支給量が増えた事例

○入院中の実態から少しずつ病院の考え方が変わってきて退院後にようやく支給量が大きく増えた事例

・・・以上が報告された。しかし、そのような協力がないと、行政は家族がいるじゃないか、重度訪問を使わず入院中の介護は病院がして退院後はデイサービスに行って当たり前という考えが強いのが課題として残る。また、東京の江戸川区では5人の障害者が集団方式で交渉を行い、ほぼ24時間介護が認められた事例も報告された。

パネルディスカッションは4人がパネリスト。

◆『こんな夜更けにバナナかよ』の著者の渡辺一史さんは映画にもなった同作品、北海道で自立生活をしていた主人公の鹿野さんのことを中心に話された。鹿野さんは、今のように障害福祉サービスはなく、ボランティアを探し、集め、育てることをされてきた。命懸けで地域に出、夜中にバナナを食べたいとか、体に悪いと言われてもダバコは吸うと言う鹿野さんは介護ボランティアと様々な対立や衝突の中で、お互い素直に話し合い信頼関係が出来上がっていき、鹿野さんに救われた人もいると渡辺さんは言う。渡辺さんは、鹿野さんを通して「わがまま」な主人公を描いたが、介護者を自分で探す時代から制度がある現在との違いはあるが、障害者が障害福祉サービスにかかるお金は無駄でない、むしろ大切だと権利主張し続けることが必要だと語った。

◆『逝かない身体――ALS的日常を生きる』の著者でALS/MNDサポートセンターさくら会の川口有美子さんは、ALSなど障害者の介護保障の交渉やサポートをしていく中で、様々な課題が出された。その中で、医療との連携も介護保障を軸に医療を考えるべき、コロナ禍で入院すると孤立してしまう危険があること、小さい頃から共に学ぶことの大切さなどが挙げられた。

◆参議院議員の舩後靖彦さんは、寝たきりで死にたいと思った時期もあったが、人工呼吸器をつけて生きる実感ができたこと、施設で精神的ネグレクトを受けた経験などを話され、国会議員として京都の嘱託殺人事件の問題に声をあげたり、障害者に関する法制度をしっかり作っていきたいと発言された。

◆同じく参議院議員の木村英子さんは、施設や養護学校の生い立ちや介護者を集めて自立生活を始めたご経験、制度の変遷で生活が制限されてきた問題を挙げ、例えば介護保険で月に1回しか入浴できないことや就労面で重度訪問介護が使えないなどの問題に対し介護保障を実現させていきたいと語った。

 

今回のシンポジウムで紹介された様々な著作を読んでいなかったのが私の反省。それらで深め、私も引き続き弁護士や支援者と一緒に自身の支給量が増えるよう闘い、介護保障を考える会の活動を通して、当事者はどうすべきか、より深めていきたいと改めて思った。

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