【報道】 新聞記事より
■強制入院「不当、補償を」 国連が日本政府に意見書日本経済新聞 2018/6/3 16:23
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31312690T00C18A6CR8000/
弁護士らでつくる「医療扶助・人権ネットワーク」(東京・新宿)は3日までに、国連恣意的拘禁作業部会が、統合失調症の男性を精神科病院に強制入院させたのは不当とする意見書を採択したことを明らかにした。意見書は、男性への措置は法的根拠を欠き、障害への差別だと指摘。日本政府に対して男性への補償や情報開示を求めた。
同ネットワークによると、精神医療での拘束を巡り、国連が日本国内の事例で意見書を出すのは初めて。4月19日付で採択された。意見書に法的拘束力はないが、尊重する義務がある。
意見書によると、男性は50代で昨年7月、東京都内の飲食店でコーラ1本を盗もうとしたとして窃盗未遂容疑で警察に逮捕された。その後、精神保健福祉法に基づき都内の精神科病院に措置入院となり、さらに家族らの同意が必要な「医療保護入院」となった。入院は約6カ月続いた。
男性から相談を受けたが同ネットワークが昨年10月、顕著な問題のある強制入院事例として国連に申し立てた。同ネットワークは1日、意見書に基づく対応を実施するよう厚労省に申し入れた。
同ネットワークの内田明事務局長は「万引きの動機に精神障害は関係ない。本来は刑事手続きで処分される事案なのに措置入院を適用するのは差別的で、現場での運用改善を求めたい」と話している。
■日産婦 新型出生前診断の施設増へ 検討開始
毎日新聞2018年6月23日 20時52分(最終更新 6月24日 02時49分)
https://mainichi.jp/articles/20180624/k00/00m/040/086000c
妊婦の血液から胎児の染色体異常の可能性を調べる新型出生前診断(NIPT)について、日本産科婦人科学会(日産婦)は23日、検査できる医療機関を増やすため、施設要件緩和などの検討を始めると正式に発表した。新設した委員会で来月にも議論を始め、年度内に結論を出す方針。国内導入から5年が過ぎ、「命の選別につながる」との懸念もある中、検査の拡大範囲を決める初の本格的な検討となる。
委員会は久具(くぐ)宏司・東京都立墨東病院部長を委員長に、日本医師会、日本医学会、日本小児科学会、日本人類遺伝学会、患者団体や生命倫理学者など16人で構成。現行の指針で定める▽産婦人科医と小児科医がともに常勤▽どちらかが遺伝の専門家である臨床遺伝専門医の資格を有する▽遺伝の専門外来を設置--など大きな規模が必要となっていた施設要件の見直しを議論する。記者会見した苛原稔(いらはら・みのる)・倫理委員長は「NIPTの新たな枠組みを慎重に検討したい」と語った。
指針は、検査対象の疾患についてダウン症、13トリソミー、18トリソミーの3疾患に限定している。技術的には他の疾患も検査できるが、苛原委員長は「検査対象の疾患を広げることは議論しない」と明言した。
一方、検査対象の妊婦の年齢制限を見直すかどうかについては、「委員会が決めることで、今は議論することも決まっていない」と述べるにとどめた。指針では対象を「高齢妊娠の者」と定め、「35歳以上から染色体異常の頻度が高まる」との医学的理由に基づき、事実上35歳以上に制限している。
NIPTは妊娠10週前後から検査でき、流産や感染症の危険性もなく、精度も高い。確定診断には羊水検査が必要。2013年に臨床研究として施設を限定して導入され、今年3月に医学会の認定を受け登録すれば一般の医療機関も診療行為として実施できるよう指針が変更された。現在認定を受けた医療機関は90施設。開始から昨年9月までの4年半で5万件を超す検査が実施され、疾患が確定すると9割以上が中絶している。【千葉紀和】
【ことば】新型出生前診断(NIPT)
妊婦の血液中の微量な胎児のDNAを分析し、染色体数の異常が原因の病気の可能性を調べる。確定診断には羊水検査が必要だが、羊水検査などより早い妊娠10週前後から検査でき、流産や感染症の危険性もなく精度も高い。現行の日本産科婦人科学会の指針では、高齢妊娠や過去に染色体異常の子を妊娠したことがある妊婦らしか受診できない。保険診療の対象外で、費用は約20万円。
■出版 精神障害者 暴力の体験語った本
毎日新聞2018年6月24日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20180624/ddm/013/040/017000c
家族に暴力をふるった精神障害者が体験を語った「当事者が語る精神障がいとリカバリー続・精神障がい者の家族への暴力というSOS」(明石書店)が出版された。
蔭山正子・大阪大大学院医学系研究科准教授と、当事者らのグループ「YPS横浜ピアスタッフ協会」のメンバーが月に1度集まり、赤裸々に語り合った。
厚生労働省によると、統合失調症やうつ病など精神疾患がある患者数は、約320万人(2011年)。蔭山さんは「精神疾患は、4~5人に1人は生涯に罹患(りかん)するありふれた病気。どのような病気で、どのような大変さがあるか知られていないので、当事者に語ってもらうことにした」という。
蔭山さんは保健師で、精神疾患がある子どもの親から「子どもの暴力に悩んでいる」という相談を数多く受けた。埼玉県の家族会に所属する768世帯を対象にアンケートしたところ、統合失調症の患者が家族に身体的暴力をふるった割合は61%なのに、見ず知らずの人への暴力行為は1%だった。多くは家族と同居しており、治療や人生プランがうまくいかない苦悩やSOSが、暴力となって家族に向くことが浮き彫りになった。本では、暴力の背景を「家族関係」「医療での傷つき」「地域社会での生きづらさ」の視点から取り上げ、解決に向けた提言も盛り込んだ。
蔭山さんは「本に書かれている彼らの心の内は、保健所にいた私も知らないことばかり。誰の周りにもいる、精神疾患を患う人を理解するため、読んでもらいたい」と話した。【坂根真理】
■エレベーター停止、都市の暮らし直撃 障害者ら孤立も
日本経済新聞 2018/6/22 17:57
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32117650S8A620C1AC8000/
大阪府北部で震度6弱を観測した地震では、多くのエレベーターが停止し、マンション住民の暮らしを直撃した。復旧作業は病院や公共施設が最優先。一般のマンションは数日かかるケースがあり、階段での移動が難しい障害者が孤立する場面もあった。エレベーターは都市部で増加の一途をたどっており、専門家は「非常時の対策が追いついていない」と指摘する。
「エレベーターはまだ動きませんか?」。車いすを使い生活する大阪府吹田市の池田篤さん(35)は18日、3階建てマンションの2階自室で被災。停止したエレベーターの状況をマンションの管理人に尋ねたが再開のめどは分からず、部屋に缶詰め状態になった。
ひとり暮らしで、食料の買い置きはない。非常時のためホームヘルパーを依頼することもできず、ほぼ何も食べずに丸1日過ごしたという。エレベーターは翌19日午前に復旧したが「停止している時間はとても長く感じた」という。
大阪市城東区では重い障害がある男性(56)が3階に住む6階建てマンションのエレベーターが停止。男性の介護サービスを担うNPO法人の職員が駆けつけたが、人手が足りず階段では施設へ運べない。エレベーターの保守業者に問い合わせても「順次対応している」との返答で、結局19日昼まで交代でマンションに通い介護した。
担当者は「エレベーターの復旧にこれほど時間がかかるのは想定外。避難も難しく、強い余震があった場合はどうなっていたか……」と漏らす。
復旧が21日朝にずれ込んだ大阪府茨木市の8階建てのマンション7階に住む主婦は「途中の階で休憩しながら上り下りした」と疲れた様子で話した。
マンションや団地が多い都市部で起きた今回の地震。保守大手の三菱電機ビルテクノサービスと日立ビルシステムの2社が管理するエレベーターだけをみても、地震の揺れで関西圏の約3万7千基が自動停止した。多くの場合、再開には保守員が安全性を確認する必要がある。大半が復旧するまでに日立が2日、三菱が3日を要した。
人命救助や支援が必要な人の避難を急ぐため、日本エレベーター協会は大規模地震が発生した場合は復旧作業の優先順位を設けている。エレベーターに閉じ込められた人の救出を最優先し、次いで病院、市役所など公共施設、高さ60メートル以上の高層住宅の順に対応。一般のマンションは最後になる。
同協会によると、全国にエレベーターは約73万5千基(2016年度)あり、5年で約1割増えた。東京都の試算によると、発生が懸念される首都直下地震では、震度6弱の揺れで全体の15%のエレベーターが故障する可能性がある。復旧はさらに長期化する恐れがある。
島根大の田中直人客員教授(建築計画学)は「高層の建物とともにエレベーターが増え続けるなか、災害時に起きる混乱も深刻化している。復旧作業に当たる保守業者の体制を強化したり、孤立を防ぐために住民が支え合う仕組みを作ったりするなど、対応策を早急に考えるべきだ」と指摘した。
■DPI日本会議 障害者団体が全国集会 相模原殺傷受け 横浜 /神奈川
毎日新聞2018年6月2日 地方版
https://mainichi.jp/articles/20180602/ddl/k14/040/227000c
障害をもつ人の団体の連合組織「障害者インターナショナル(DPI)日本会議」(本部・東京、97団体)の全国集会が1日、横浜市中区の市技能文化会館で始まった。2016年7月の相模原市の障害者施設殺傷事件を受け、神奈川で開かれた。
DPI日本会議は、障害の種類を超えて団体が集まる組織。1986年に障害者自身が暮らしやすい生活を目指して発足した。今回は「ともに生きる~だれも取り残されない社会へ~」をテーマに、全国から約400人の障害者らが集まり、障害者基本法改正などについて議論する。
初日は特別講演として、NPO法人「県障害者自立生活支援センター」(厚木市)の鈴木治郎理事長が登壇。殺傷事件後、襲われた津久井やまゆり園は施設の建て替えを巡り議論となった。鈴木さんは障害者が地域で暮らすことについて「最初から無理ではなく、個人の選択の意思を尊重し、行政も私たちも受け止めなくてはいけない」と話した。
2日も開催され、午前10時から障害者基本法改正に関するシンポジウムを開く。午後1時半からは、重度の知的障害者が自立生活を送るドキュメンタリー映画の試写会や、旧優生保護法のもとで強制不妊手術を受けた女性とその家族らが思いを語る分科会もある。【国本愛】
7月 6, 2018