新聞記事から

【報道】 新聞記事より

■「障害者の応益負担廃止を」 違憲訴訟団が厚労大臣に要望福祉新聞WEB 2015年11月24日

http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/11240

 

障害者自立支援法違憲訴訟団(原告団と弁護団)は10日、現在、厚生労働省が進めている障害者総合支援法の見直しに関する意見書を塩崎恭久・厚労大臣宛に提出した。サービスを利用すればするほど負担が増える「応益負担」を廃止するよう求めた。

厚労省によると、障害福祉サービスの利用者の約93%は費用負担がゼロ。支払い能力に応じた応能負担の仕組みだとしている。

一方、弁護団は①利用したサービスの量と負担を結び付ける仕組み②配偶者や保護者の収入を含めて負担額を決める家族責任−が残存しているとみる。

総合支援法をめぐっては、2016年の通常国会での改正法案提出を目指し、厚労省の社会保障審議会障害者部会が審議中。同部会委員の多くが利用者負担の拡大を条件付きで容認しているため、弁護団は危機感を抱く。

意見書はこのほか65歳以上の障害者が介護保険利用による応益負担を強いられることは基本合意の意義を没却するものだとして、「介護保険優先原則」を廃止し、障害特性に配慮した選択制を導入するよう求めた。

訴訟は、障害があるため必要な支援に自己負担を求めるのは憲法違反だとして全国14地裁で障害者らが国を訴えたもの。原告団と弁護団は自立支援法廃止を含む基本合意を10年1月、長妻昭・厚労大臣(当時)との間で結び、和解した。

基本合意は▽応益負担廃止、新法の制定▽新法制定の論点(介護保険優先原則の廃止など)▽利用者負担の当面の措置▽原告団、弁護団と厚労省の定期協議−を盛り込んだ。

意見書の提出に先立ち、同日、衆議院第1議員会館で開かれた原告団、弁護団による集会には約300人が参加。竹下義樹・弁護団長は「基本合意をもとに我々が求めたことが、十分に反映されないまま制度改革が終わる危険性がある。そうはさせないと意思表示すべきだ」と訴えた。

 

 

■衆参両院、障害者差別解消法で対応要領策定へ

日本経済新聞 電子版 2015/11/23 23:38

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS22H06_T21C15A1PE8000/

 

衆参両院は2016年4月の障害者差別解消法の施行に向け、障害を持った議員や傍聴者が国会内の施設を利用しやすくするための「対応要領」を策定する。同法は障害を理由に、行政や民間の窓口などでの「不当な差別的取り扱い」を禁じる。国会には要領策定を義務付けていないが、自主的に取り組むことで行政や民間の対応を促したい考えだ。

対応要領は不適当な差別の具体例や、配慮の好事例を示したもの。政府はすでに行政や医療機関などでの対応案をまとめた。例えば意思疎通が不得意な人に対して絵の書かれたカードを活用して意思を確認したり、筆談や点字などを使うよう求める。衆参両院はホームページの使いやすさの改善や、国会内の設備の一層のバリアフリー化などを検討する。

 

 

■虐待告発職員に賠償請求 埼玉など障害者施設

東京新聞 2015年11月23日朝刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201511/CK2015112302000124.html

 

障害者の通所施設で虐待の疑いに気付き自治体に内部告発した職員が、施設側から名誉毀損(きそん)などを理由に損害賠償を求められるケースが埼玉県と鹿児島県で起きていることが、分かった。

障害者虐待防止法では、虐待の疑いを発見した職員は市町村に通報する義務がある。通報したことで解雇など不利益な扱いを受けないことも定めており、施設側の対応に法曹関係者らから「法の理念を無視する行為。職員が萎縮して、虐待が闇に葬られてしまう」と批判が出ている。

さいたま市の就労支援施設に勤めていた女性元職員(42)は十月、運営主体のNPO法人から約六百七十二万円の損害賠償請求を通知する内容証明郵便を受け取った。

女性は上司の男性職員が知的障害のある男性利用者二人の裸の写真を撮影し、無料通信アプリで送ってきたり、職場の共用パソコンに保存したりしていたため三月に市へ通報。市は施設へ監査に入った。女性が自主退職した後の六月、虐待を認定、改善勧告を出した。

施設側は「女性はテレビ局の取材も受け、他にも虐待があったと虚偽の説明をした」と主張。「外部からの業務受託の予定が取り消され、損害を受けた」として賠償を求めているが、女性は争う構えで、裁判に発展する可能性もある。

鹿児島市の就労支援施設の男性元職員(48)は、六月に運営会社から鹿児島簡裁に提訴された。

男性は同社で働いていた昨年秋、女性利用者から「幹部職員にバインダーで頭をたたかれた」と聞いた。半信半疑だったが、他の利用者に対する虐待の目撃証言が別の関係者からもあったため、二月に市へ通報した。

施設側は虐待を否定。「事実無根の中傷で名誉を毀損された」などとして百十万円の損害賠償を求めている。

市は虐待の認定に至っていないが、担当者は「男性がうそをついているとは考えていない。虐待防止法の趣旨からすると、提訴はあるべきことではない」としている。

◆「報復」に罰則なく 法に従い通報したのになぜ

法律に従って虐待の疑いを通報したのに、なぜ賠償を求められるのか。障害者虐待防止法には、通報した施設職員に対する不利益な扱いを禁じる規定はあるが、罰則はない。通報者への賠償請求を想定していない上、訴訟を起こす権利までは制限できない。このため、現状では「報復」として通報者が訴えられるリスクは否定できない。

同法は二〇一一年に成立、一二年に施行された新しい法律。厚生労働省によると、通報者が訴えられたのは初めてではないかという。担当者は「通報義務を定めた虐待防止法そのものが訴えられたようなものだ」と憤る。

厚労省の調査では、一三年度に施設や家庭、職場で障害者虐待の通報は計七千百二十三件あったが、事実の認定に至ったのは約三割の二千二百八十件にとどまる。自治体の調査には限界があり、裏付けが難しいためだが、虐待が認定されなかったことを理由に通報者を訴える裁判が今後、さらに続く恐れもある。

虐待被害者の内訳では、知的障害が最も多く、証言能力に欠ける人が標的にされているともいえる。知的障害者の親らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」の久保厚子会長は「重度の人の場合は虐待を受けたと認識できず、軽度でも自分の気持ちを主張できないことがある。虐待が事実でなかったとしても『そう受け取られる行為があったのでは』と謙虚に受け止めてほしい」と話す。

 

 

■明石市が障害者採用の門戸広げる 知的・精神・発達・難病も対象

福祉新聞 2015年11月17日

http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/11185

 

兵庫県明石市(泉房穂市長)は2016年4月の障害者職員向け採用試験について、身体障害者に加え知的・精神障害者や発達障害者、難病患者らも対象にすることを決め、現在、広く募集中だ。試験は手話や点字などで対応し、勤務時にも必要な支援をする。自治体の障害者採用をめぐっては「自力で通勤できること」などの条件が事実上の制限になっていることも多く、それらを取り払って門戸を広げたことは全国でも珍しいという。

障害者枠の定員は2人程度。フルタイムの正規職員か、週に30~31時間で最長5年の任期付き短時間勤務職員で、本人の希望や適性に応じて事務職か技能労務職に就く。

希望者には、採用試験申し込み書のほかに、試験時にどんな配慮が必要かを問う調査票も提出してもらう。例えば▽視覚障害があるため筆記試験は点字で受験する▽上肢に障害があるためマークシートではなく数字をマルで囲む用紙を使う▽知的・精神・発達・難病による障害があるため面接試験には就労支援機関の職員などが同席する−といった希望が簡単なチェック方式で記入できるようになっている。また、採用された場合に配慮が必要なことも自由に記入できる欄がある。

試験日は来年の1月16日または17日。募集は12月10日まで。詳細は市のホームページ(http://www.city.akashi.lg.jp/)で見られる。

明石市は、14年4月から身体障害者対象の試験を始め、現在までに5人を採用している。自治体が率先して障害者の自立と社会参加を促そうという姿勢で、15年4月には手話言語・障害者コミュニケーション条例を施行。障害者差別解消条例の制定にも取り組んでいる。

 

 

■障害者の負担拡大へ 支援法見直しで厚労省が方針示す

福祉新聞 2015年11月16日

http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/11182

 

厚生労働省は9日、障害者総合支援法の見直しに関連し、障害福祉サービスの利用者負担を拡大する方針を明らかにした。同日の社会保障審議会障害者部会で「制度の持続可能性を確保する観点から検討する」とした。委員の多くは条件付きで容認する立場だ。

2015年3月のサービス利用者約74万人のうち、費用を負担しているのは市町村民税課税世帯の約5万人。残りの約69万人(全体の93%)は無料で利用している。

同法に基づくサービスの費用は、15年度は約1兆849億円の見込み。前身の障害者自立支援法が施行された06年度に比べて2・2倍に増えた。

財務省は費用の増大を抑えるため、利用者負担の拡大を求めている。厚労省はそれに従う姿勢を見せている。負担する人を増やすこと、既に負担している人の負担額を増やすことのいずれも考えられる。

これに対し、委員の多くは「今のままでは国民の理解が得られない」として負担の拡大に一定の理解を示しつつ、条件を付けた。

具体的には、所得に応じた累進的な仕組みにすること、就労系サービスには拡大しないこと、世帯単位ではなく個人単位の所得をもとに負担額を決めること、負担増で浮いた財源をサービスの充実に充てることなどだ。

このほか同日の部会で厚労省は、放課後デイサービスなど障害児の通所支援の質の向上と支援内容の適正化を図る方針を示した。

 

 


■運賃割引制度:精神障がい者にも適応を 家族会が署名活動

琉球新報 2015年11月02日 10時45分

http://ryukyushimpo.jp/news/entry-164675.html

 

障がい者の社会参加などを目的に身体・精神障がい者に適用されているJR、私鉄、飛行機、高速道路料金などの交通運賃割引制度。多くで制度から精神障がい者が除外されているのは憲法や国連障害者権利条約に反するとして、全国の家族会が精神障がい者にも交通運賃割引の適用を求めている。全国で100万筆の署名を集め来年の通常国会に請願書を提出する予定。県内はバス全社、モノレール、タクシー、フェリーで運賃割引があり、全国と比較すると「先進県」と言えるが、飛行機、高速道路料金は割引がなく、県精神保健福祉会連合会(沖福連)も全国と歩調を合わせ署名運動をしている。

国土交通省によると精神障がい者にも交通運賃の割引を適用しているのは全国で鉄軌道60社(34.7%)、バス716社(33.8%)、旅客船62社(15.1%)にとどまる(2014年4月1日現在)。

全国精神保健福祉会連合会が立ち上げた「JRなど交通運賃割引全国運動推進プロジェクトチーム」の堀場洋二事務局長は「沖縄のように全社が割引をしている県もあれば、全くないところもある。地域差がかなりある」と話す。

◇外出控える

同連合会が当事者や家族を対象にした調査によると、精神障がい者の主な収入源は障害年金や作業所の工賃で、1カ月の平均収入は6万287円。日常生活で交通費が「大きな負担になっている」と答えた人は45%に上り、9割が精神障がい者にも交通運賃割引を実施してほしいと答えた。「交通費を考え外出を控えている」「作業所に通うのに交通費がかかって困っている」などの切実な声も寄せられた。

県内は精神科病院のない離島から本島の病院に通院する際の航空運賃や県外に行ったときのJRなどの交通費の負担が大きい。

障害者基本法では3障がいの一元的な扱いを定めている。国連障害者権利条約は、障がい者が負担しやすい費用で移動できる措置を求めており、現状のように障害種別で割引制度に差をつけることは条約や国内法の精神に反する。

◇根強い差別と偏見

戦後日本の障がい者福祉は、身体、知的の順に制度が整えられてきた。一方、精神障がいは長年、福祉ではなく医療の範囲とされてきた。本人や家族が周囲に障がいを知られたくないこともあり、当事者運動が遅れた。社会の偏見も根強く、声を上げにくい現状がある。これらのことが、交通運賃割引制度から精神障がいがこぼれ落ちることにつながっている。

国交省は障がいの種別で差があるのは好ましくないとして、鉄道事業者の団体などに精神障がい者にも割引制度を適用するよう協力を求めている。しかし、割引によって減収となることや、無人駅では本人確認ができないなどの理由で制度の広がりは鈍い。

沖福連の高橋年男事務局長は「沖縄で約10年前に当事者の声を受け、全社で割引が適用されたのは、差別に敏感な土壌があったから。人間の尊厳を守る社会になれば、当事者も声を上げやすい」と話した。(玉城江梨子)

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