事務局より

編集後記

脳腫瘍で余命半年の宣告を受けたアメリカのブリタニー・メイナードさんが「自らの意思」によって自死を選択することを世界中に発信し、大きな話題となりました。いちどは翻意をされたものの、残念ながらみずから命を絶たれました。いまとなっては、安らかに眠ってくださいとしか言えません。

この件で、俄然「安楽死はダメだが、尊厳死は許容できる」との論調がマスコミでは目立っています。その違いを訴えたうえで、「リビング・ウィルによる尊厳ある死」というものを積極的に喧伝しているのが、日本尊厳死協会(「リビングウィル・トラスト・ジャパン」に改名予定)です。

たしかに、安楽死と尊厳死に違いがあるとしても、尊厳死の場合には特に、周囲が本人の死を美化し、死を悼むという感情を「本人は尊厳をもって死んだ」と納得させるような方向へとねじ曲げているようにも思います。それは「天皇やお国のために死んだ」という靖国神社の「英霊」の顕彰とも似通った面があると思います。死を選択せずとも、生きる道も残されていたかもしれません。そんな道を尊厳死は断ってしまうのではないでしょうか。

生活保護も、制度利用者を切り捨てる方向が加速しています。そのようななかで、こうした尊厳死を美化するような世論があると、ますます制度利用者は肩身の狭い思いをせざるを得ません。「納税者が生かしてやっている」という意識が、生保利用者の尊厳を傷つけるのです。

14日には、衆院選の投票も行われます。そうした世相を背景に、選挙権を有する人には、真にマイノリティが生きやすくなるような投票をする責任があると、私は考えています。

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