事務局より

編集後記

前月号も生命倫理のネタを書きましたが、今月号も引き続き。新聞記事で紹介させていただいた私の記事、実はiPS細胞についてずっと連載されている記事です。その日の1面には、東京のベンチャー企業の29才になる社長が、3本目の腕を開発中という記事がありました。その社長は健常者ですが、「2本腕だと不便だから、3本目の腕を開発中」なのだとか。障害、とくにある部位の欠損がある人たちには、義手や義足、義眼のような代替機器でその人の不便を解消する技術があります。しかし健常者で2本腕があっても生活が不便であり、3本目の腕が欲しいというのはどういうことでしょうか。こうした技術をエンハンスメントと呼び、体力や記憶力などの増強もそれにあたり、生命倫理においてホットな話題の1つになっています。確かに、何かを持ち上げたりするときには便利かもしれない? しかし、3本腕は「人間であること」じたいを否定しているのではないか? さまざまな憶測が飛び交います。1つ言えることは、SFのような世界が、もうすでに近い将来に実現するということです。そこにおける人間の欲望とは何か、そうした技術が当たり前になったとき、そもそも人間であることとはどういうことなのか、いろいろ考えさせられます。2018年もよろしくお願いいたします。

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